解離性障害の治療として正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第55回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
解離性障害の患者は、自身の症状や経験に混乱し、不安を感じやすいです。そのため、病気の状態、なぜそれが起こるのか、どのような治療を行うのか、治療の目的や段階、予測される経過について、患者が理解できる言葉で具体的に説明することは非常に重要です。これにより、患者は自分の状態を客観的に認識し、治療に対する理解を深め、治療者との信頼関係(治療同盟)を築きやすくなります。安心感を提供し、治療への主体的な参加を促す上で、明確な情報提供は不可欠なステップです。
選択肢ごとの解説
- 1. 破壊的行動は患者自身や他者に危害を及ぼす可能性があるため、許容すべきではありません。安全を確保し、行動の背景にある感情を理解しようと努めながら、適切な介入が必要です。正しくは:破壊的な行為は、患者本人や周囲の安全を確保するためにも、適切な方法で制止し、その背景にある感情や原因を探求する必要があります。選びやすい理由:患者の感情を受け入れることと混同し、安易に許容することが治療的に見えるかもしれませんが、危険な行為は例外です。混同注意:患者の感情や思考の全てを受け入れる「受容」と、危険な行動を容認すること。
- 2. 解離性障害の患者では、空想が現実逃避や解離症状の悪化につながることがあります。空想の内容を完全に否定するのではなく、現実との区別をつけられるように促すことが重要です。正しくは:患者の過度な空想については、内容を傾聴しつつ、それが現実から遊離しすぎている場合には、穏やかに現実との関連性について話し合い、現実検討能力の向上を促す必要があります。選びやすい理由:患者を刺激することを避けるため、深入りしない方が良いと考えるかもしれません。混同注意:妄想性障害など他の精神疾患での対応と混同する可能性。解離性障害の空想は現実感の欠如を伴うことがあり、放置すると現実適応を妨げます。
- 3. 有害な刺激、特に心的外傷に関連する刺激(トリガー)は、解離症状を誘発したり悪化させたりするため、可能な限り取り除くか、患者が適切に対処できるよう支援することが不可欠です。正しくは:患者の解離症状を誘発する可能性のある有害な刺激は、積極的に特定し、可能な限り排除するか、患者がそれらに対処するための安全な環境とスキルを提供する必要があります。選びやすい理由:回避行動を助長しないという考えから、あえて刺激にさらすことが治療的と誤解するかもしれません。混同注意:暴露療法や外傷直面化療法と混同する可能性。しかし、解離性障害の患者に対する早期の、無理な外傷直面化は症状を悪化させる危険性があります。有害な刺激は、まず取り除くべきです。
- 4. 解離性障害の患者にとって、準備ができていない段階での急速な心的外傷への直面化は、再外傷化や解離症状の悪化、自傷行為のリスクを高める可能性があります。安全な関係を構築し、感情調整スキルを身につけるなど、段階的なアプローチが必要です。正しくは:心的外傷体験への直面化は、治療の適切な段階で、患者が十分な準備(安全の確立、感情調整スキルの習得など)を整えてから、慎重に進めるべきです。選びやすい理由:トラウマ治療の最終目標である直面化を早期に行うべきと考えるかもしれませんが、解離性障害の特性を考慮すると危険です。混同注意:PTSDにおける認知処理療法や持続暴露療法と混同する可能性。しかし、解離性障害ではまず安全の確立と安定化が優先されます。
- 5. 正解。解離性障害の患者は、自身の状態や治療に対して混乱や不安を抱えやすいです。病態や治療の目的、具体的な進め方、予測される経過などを明確に説明することで、患者は安心感を得て治療への主体的な参加を促すことができます。これにより、治療同盟の強化にもつながります。選びやすい理由:どの選択肢も重要に見えますが、患者が自分の状態を理解し、治療に主体的に関わるためには、情報提供が不可欠です。混同注意:病識がない患者への対応と混同するかもしれませんが、解離性障害では病識がある場合でも混乱や不安が大きいため、丁寧な説明が特に重要です。
国試ポイント
解離性障害患者への治療的アプローチにおける基本的な原則と、特に治療初期段階での対応が問われています。安全の確保、信頼関係の構築、適切な情報提供が重要視される点を理解しているかがポイントです。急性期の心理的危機介入や、段階的なトラウマ治療の考え方を踏まえた上で、避けるべき介入と必要な介入を区別する能力が求められます。
混同注意
PTSDなどの他のトラウマ関連障害や、精神病性障害(統合失調症など)における治療原則との違い。特にトラウマの直面化については、解離性障害では非常に慎重なアプローチが必要であり、早期の無理な直面化は再外傷化のリスクがあるため注意が必要です。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出題された場合、患者の安全確保、信頼関係の構築、精神教育(情報提供)が治療の初期段階で最も優先されること、そしてトラウマの直面化は十分な準備が整ってから慎重に行うべきであるという原則を軸に判断すること。
関連知識
解離性障害の病態生理(特に外傷と解離の関連性)、治療における段階的アプローチ(安定化・安全の確保、トラウマ処理、統合・リハビリテーション)、治療同盟の重要性、精神教育の役割、各治療段階での具体的な介入方法(例:感情調整スキルの習得支援)。