66歳の男性。左下腿切断。30年前からの2型糖尿病で左下肢の閉塞性動脈硬化症のため切断し、下腿義足を製作した。この下腿義足ソケットの種類はどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第58回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
TSB式ソケットは「総接触型」であり、断端全体で均等に荷重を分散させます。これにより、特定の部位への圧集中を避け、血行障害や皮膚脆弱性を伴う糖尿病患者の断端における褥瘡や皮膚トラブルのリスクを軽減できます。PTB式ソケットは膝蓋腱部を中心に荷重するため、糖尿病患者の断端には不向きとされています。
選択肢ごとの解説
- 1. KBM式ソケットは、膝蓋腱支持に加えて大腿骨顆部を包み込むことで安定性を高めるもので、PTB式の一種とされます。特に断端が短い場合などに考慮されることがありますが、下腿義足ソケットの主要な分類として一般的にPTB式やTSB式が挙げられ、この状況で第一選択肢となることは稀です。正しくは:下腿義足ソケットの主流はPTB式やTSB式であり、KBM式はPTB式の派生型として短断端などで用いられることはあるものの、このケースでの最適解ではありません。選びやすい理由:PTB式に似た膝蓋腱支持の概念を持つため、知識が曖昧だと選択肢としてあり得ると思ってしまうかもしれません。混同注意:PTB式ソケットと混同しやすいです。KBMは膝蓋腱支持に加えて大腿骨顆部への支持も特徴としますが、適応範囲が異なります。
- 2. PTB式ソケットは、膝蓋腱部や脛骨顆、腓骨頭下など特定の部位に荷重を集中させることで義足を支持します。糖尿病患者の断端は血行不良や皮膚の脆弱性があるため、特定部位に高圧がかかるPTB式では、褥瘡や皮膚トラブルのリスクが高まる可能性があります。また、断端遠位に荷重しないため、浮腫や血行不良が悪化するリスクもあります。正しくは:糖尿病患者の断端は血行不良や皮膚脆弱性があるため、特定の部位に高圧がかかるPTB式は避けられる傾向にあります。この場合は総接触型のTSB式がより推奨されます。選びやすい理由:PTB式は下腿義足ソケットの最も一般的な形式の一つとして知られているため、深く考えずに選びやすい選択肢です。混同注意:TSB式ソケットと混同しやすいです。両者とも下腿義足ソケットの主要な種類ですが、荷重分布の考え方と糖尿病断端への適応が異なります。
- 3. 正解。TSB式ソケットは「総接触型」であり、断端全体で均等に荷重を分散させます。これにより、特定の部位への圧集中を避け、血行障害や皮膚脆弱性を伴う糖尿病患者の断端における褥瘡や皮膚トラブルのリスクを軽減できます。断端の保護と快適性の向上に寄与するため、この症例に最も適しています。
- 4. 吸着式ソケットは、ソケット内を陰圧に保ち、断端を密着させることで義足を安定させます。主に大腿義足で用いられることが多く、下腿義足では断端の形状や筋肉の動きの関係で吸着を維持することが難しい場合があります。また、装着の際に断端の皮膚に負担をかける可能性もあり、糖尿病患者の脆弱な皮膚には適さない場合が多いです。正しくは:下腿義足で吸着式が用いられることは非常に稀であり、特に糖尿病患者の脆弱な断端には不向きです。選びやすい理由:義足の安定性を高める方法として吸着の概念を知っていると、選択肢として考慮してしまうかもしれません。混同注意:吸着式は断端がソケット内にしっかりフィットして安定するという点で、TSB式の総接触型と概念的に混同しやすいですが、固定原理(陰圧 vs 圧力分散)は異なります。
- 5. 在来式ソケットは、PTB式やTSB式が開発される以前に用いられていたソケットの総称で、多くは断端の遠位端に荷重せず、皮膚や骨に負担がかかりやすい構造でした。現在の義肢製作技術では、患者さんの快適性や断端保護の観点から、より進化したソケットが主流となっており、在来式は特別な理由がない限りは選択されません。正しくは:在来式ソケットは旧式のソケットであり、現在の標準的な選択肢ではありません。特に糖尿病患者の断端保護には不向きです。選びやすい理由:「昔からある」という漠然としたイメージで、選択肢として残る可能性があるかもしれません。混同注意:KBM式やPTB式が開発される前のソケット全般を指すため、特定の形式を指すものではありません。
国試ポイント
下腿義足のソケットの種類と、それぞれの特徴、特に特定の疾患(糖尿病、閉塞性動脈硬化症など)や断端の状態(短断端、脆弱な皮膚など)に応じたソケットの選択の妥当性が問われます。PTB式とTSB式の違いと、糖尿病患者への適応が重要論点です。
混同注意
PTB式とTSB式は、どちらも下腿義足の主要なソケット形式であるため混同しやすいですが、荷重分散の考え方(PTBは特定部位集中、TSBは総接触)と、それによる適応疾患(糖尿病患者にはTSBが推奨)が異なります。KBM式はPTB式の派生として、特定の条件下(短断端など)で考慮されることがあるため、PTB式と混同しやすいです。
次に同じ論点が出たら
患者の基礎疾患(糖尿病、血管障害の有無)、断端の状態(皮膚の脆弱性、浮腫、疼痛部位、断端の長さ)、活動レベル、装着目的を総合的に評価し、最も適切で安全なソケット形式を選択できるか。特に「皮膚脆弱性」や「血行不良」といったキーワードがあれば、総接触型のTSB式を優先的に検討する。
関連知識
義足の構成要素(ソケット、継手、足部など)、各構成要素の機能と種類。断端の評価と管理(形状、皮膚の状態、感覚、筋力、ROMなど)。切断レベルごとの義足の特性。糖尿病患者の断端の特徴と合併症(神経障害、血管障害、感染症)。荷重分散の原則。