75歳の男性。糖尿病により右下腿切断。義足歩行練習時に右膝の膝折れを起こしそうな不安定感を訴えた。考えられる原因はどれか。2つ選べ。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第57回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1・4番
解説
選択肢1が正しいのは、義足の初期屈曲角度が大きすぎると、立脚初期に膝折れのような不安定感が生じるためです。これは、膝関節がより屈曲位で荷重を受け止めることになり、大腿四頭筋への負担が増大し、十分に伸展位を保持できない場合に起こります。選択肢4が正しいのは、右膝関節を伸ばす筋力(大腿四頭筋力)が低下していると、義足の立脚相における安定性を保つことが困難になり、特に初期荷重応答期から中期立脚期にかけて膝折れが生じやすくなるためです。糖尿病による神経障害や活動量低下が筋力低下の原因となりえます。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。義足の初期屈曲角度が大きすぎると、立脚初期に膝が過剰に屈曲し、不安定感や膝折れ感が生じやすくなります。選びやすい理由:義足のアライメントは歩行の安定性に直接影響するため、具体的な原因として考えやすいです。混同注意:義足の初期屈曲角度不足との混同。
- 2. 義足の初期内転角度が足りていない場合、通常は遊脚相で義足が外転しやすくなったり、立脚相で骨盤が下制しやすくなる(トレンデレンブルグ徴候)など、側方安定性の問題につながることが多いですが、膝折れのような前後方向の不安定さとは直接結びつきにくいです。正しくは:初期内転角度が足りないと、歩行中の義足の側方安定性が低下し、骨盤の揺れが大きくなります。選びやすい理由:義足のアライメント調整項目の一つであるため、原因として考えやすいです。混同注意:義足の前後方向のアライメント(屈曲・伸展)の問題。
- 3. 右股関節の屈曲可動域に制限がある場合、立脚相後期から遊脚相にかけて股関節の十分な伸展が得られず、遊脚期に義足が床に引っかかったり、体幹の過剰な代償動作が必要になることが多いですが、膝折れのような立脚初期の不安定感とは直接関係しにくいです。むしろ股関節の伸展制限は、膝折れとは逆の伸展不安定性につながる可能性もあります。正しくは:右股関節の屈曲可動域制限は、遊脚期に義足が床にひっかかる原因や、体幹の代償運動を引き起こすことがあります。選びやすい理由:関節可動域制限は歩行に影響を与えるため、原因として考えやすいです。混同注意:股関節伸展可動域制限の問題。
- 4. 正解。右膝関節を伸ばす筋力(大腿四頭筋力)が低下していると、義足の立脚相において膝の伸展位を保持できず、膝折れのような不安定感が生じやすくなります。特に高齢者や糖尿病患者では筋力低下が起こりやすいです。選びやすい理由:筋力低下は歩行の安定性に直接影響するため、原因として考えやすいです。混同注意:股関節伸展筋力低下との混同。
- 5. ソケットが足部に対して後ろに位置しすぎていると、膝の安定性が増加し、むしろ膝が伸びすぎて(過伸展)しまう傾向にあります。膝折れのような屈曲方向の不安定さとは逆の症状につながりやすいです。正しくは:ソケットが足部に対して後ろに位置しすぎていると、膝が過伸展しやすく、遊脚相のクリアランスが不足することがあります。選びやすい理由:義足のアライメント調整項目の一つであり、ソケットと足部の位置関係が重要であるため、原因として考えやすいです。混同注意:ソケットが足部に対して前に位置しすぎている場合(この場合は膝折れが生じやすい)。
国試ポイント
義足歩行の安定性に関わるアライメント調整と筋力低下の影響を理解することが重要です。特に、膝折れの原因となる義足の初期屈曲角度や大腿四頭筋の筋力との関連を覚える必要があります。
混同注意
義足の不安定さと、他の整形外科的な膝関節の不安定さ(靭帯損傷など)と混同しやすいですが、義足使用者の場合は義足のアライメントや使用者の筋力・身体機能との関連で考える必要があります。
次に同じ論点が出たら
同様の義足歩行における不安定感を訴える問題が出た場合は、まず義足のアライメント(特に初期屈曲角度、ソケットと足部の位置関係)と、使用者の残存肢の筋力(特に股関節伸展筋、膝関節伸展筋)および関節可動域を確認して判断します。
関連知識
義足のソケット適合不良(ルーズフィット)、足部の背屈制限、大腿切断者の股関節伸展筋力低下、義足の足部の硬さなども義足歩行の不安定性や膝折れの原因となりえます。義足のアライメント調整は、前後傾、内外転、回旋、足部とソケットの位置関係など多岐にわたります。