68歳の女性。NYHA心機能分類classⅢの僧帽弁閉鎖不全症に対して経皮的僧帽弁形成術を受け、術後経過良好で退院することになった。退院時の運動機能評価として適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第58回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
6分間歩行テストは、心不全患者や心臓手術後の患者の運動耐容能や全身持久力を評価するために広く用いられる指標です。簡便に実施でき、日常生活での歩行能力を反映するため、退院時の運動機能評価として非常に適切です。選択肢1と3は急性心不全の病態分類、選択肢2は古い運動負荷試験、選択肢4は全身持久力ではなく筋力の一部を評価するものであり、本症例の退院時運動機能評価としては不適切です。
選択肢ごとの解説
- 1. クリニカルシナリオ分類は、急性心不全患者の病態を重症度と治療戦略に基づいて分類するものであり、退院時の運動機能や日常生活の活動能力を直接評価する目的には適していません。正しくは:退院時の運動能力や予後を評価する際には、運動負荷試験や身体活動度を測る指標が用いられます。選びやすい理由:心不全患者の病態分類であるため、心疾患患者に適用される分類として一見関連があるように思えるかもしれませんが、運動機能の直接評価ではありません。混同注意:NYHA分類やキリップ分類など、他の心疾患の重症度分類と混同しやすいですが、これらは運動機能そのものを直接評価するものではありません。
- 2. マスターシングルテストは、階段昇降を繰り返すタイプの心電図運動負荷試験ですが、負荷量が小さく、現在ではより詳細な情報が得られる他の運動負荷試験(例:トレッドミル、自転車エルゴメータ)に比べて一般的に用いられることは少ないです。退院時の運動機能評価としてより包括的で実用的なものを選ぶべきです。正しくは:運動耐容能を評価する際には、より客観的で定量的な指標が得られるシャトルウォーキングテストやCPX(心肺運動負荷試験)などが適切です。選びやすい理由:運動負荷試験の一種であるため、運動機能評価として選択肢に入ってくる可能性はありますが、現代の評価法としては限定的です。混同注意:トレッドミル運動負荷試験や自転車エルゴメータなどの他の運動負荷試験と混同しやすいですが、これらの方がより詳細な情報が得られます。
- 3. Nohria-Stevenson分類は、急性心不全患者のうっ血と低灌流の有無に基づいて病態を分類するものであり、クリニカルシナリオ分類と同様に、退院時の運動機能評価には直接適していません。正しくは:退院時の運動能力や身体活動度を評価する指標として、6分間歩行テストやSPPBなどが適しています。選びやすい理由:クリニカルシナリオ分類と同様に、心不全患者の病態分類であるため、心疾患患者に適用される分類として関連があるように思えるかもしれませんが、運動機能の直接評価ではありません。混同注意:NYHA分類やキリップ分類、フォレスター分類など、他の心不全の重症度や病態分類と混同しやすいですが、これらも運動機能の直接評価ではありません。
- 4. ハンドグリップテストで測定する握力は、全身筋力の一指標にはなりますが、心疾患患者の全身的な運動耐容能や日常生活での活動能力を総合的に評価するには不十分です。正しくは:握力はサルコペニアのスクリーニングなどにも用いられますが、心疾患患者の運動機能評価としては、全身持久力を評価できる項目を含めるべきです。選びやすい理由:簡便に実施できる筋力評価として、一般的な身体機能評価に含まれるため、選択肢として魅力的かもしれませんが、全身持久力とは評価目的が異なります。混同注意:全身持久力評価(例:6分間歩行テスト)と、特定の筋力評価(例:ハンドグリップテスト)の目的の違いと混同しやすいです。
- 5. 正解。6分間歩行テストは、心疾患患者の運動耐容能や全身持久力を簡便かつ実用的に評価できるテストです。NYHA心機能分類クラスIIIの患者さんの術後の退院時評価として、日常生活での活動能力に近い指標を提供するため、非常に適切とされています。
国試ポイント
心疾患患者の運動機能評価として、どのようなテストがどのような目的で用いられるかを理解しているかが問われています。特に、NYHA心機能分類クラスIIIのような中等度から重度の心不全患者の運動耐容能評価には、6分間歩行テストが代表的であることを知っている必要があります。
混同注意
心機能分類(NYHA分類、Killip分類、Forester分類、Nohria-Stevenson分類、クリニカルシナリオ分類など)と、運動耐容能を直接評価するテスト(6分間歩行テスト、シャトルウォーキングテスト、心肺運動負荷試験など)の違い。また、特定の筋力評価(ハンドグリップテスト)と全身持久力評価の区別。
次に同じ論点が出たら
まず、問われているのが「退院時の運動機能評価」であることから、患者の日常生活活動能力や全身持久力を反映する、簡便かつ実用的なテストを探す。次に、各選択肢がどのような評価法であるかを思い出し、その目的と適用範囲を比較する。特に心疾患患者に対する一般的な評価法を優先的に検討する。
関連知識
NYHA心機能分類の各クラスの定義。心臓リハビリテーションにおける運動機能評価の選択基準。心肺運動負荷試験(CPX)の意義と適用。サルコペニアやフレイルの評価と握力の関係。