両眼を強く閉眼するよう指示したところ、左側の兎眼が認められた。同じ脳神経の障害で生じる症状はどれか。
画像の選択肢を選ぶと答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第58回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
問題文の「両目を強く閉じるよう指示したところ、左目に兎眼が見られました」という所見は、左眼の閉瞼不全、すなわち顔面神経(第VII脳神経)麻痺を示唆しています。顔面神経は顔面の表情筋を支配しており、その障害は閉瞼困難(兎眼)、口角の下垂、鼻唇溝の消失などを引き起こします。選択肢3の「歯をむき出しにしたときの様子」は、左右の口角の引き攣れに非対称性があり、特に左側の口角が十分に引き上げられていない様子が描かれており、これは顔面神経麻痺の症状と一致します。したがって、同じ顔面神経の機能障害によって発生する可能性のある症状として適切です。
選択肢ごとの解説
- 1. 選択肢1の「右方視したときの様子」は、眼球運動を評価しています。右方視は主に右眼の外転筋(外転神経支配)と左眼の内転筋(動眼神経支配)によって行われます。これは顔面神経の機能とは直接関連がなく、顔面神経麻痺の症状ではありません。正しくは:この図だけでは異常と判断できませんが、もし右眼の外転制限があれば外転神経麻痺、左眼の内転制限があれば動眼神経麻痺を示唆します。選びやすい理由:眼の症状(兎眼)から、同じ「眼」に関する選択肢であるため、安易に選んでしまう可能性があります。しかし、兎眼は眼瞼(まぶた)の機能障害であり、眼球運動とは異なります。混同注意:動眼神経麻痺、滑車神経麻痺、外転神経麻痺といった眼球運動に関わる脳神経麻痺。
- 2. 選択肢2の「普通に開眼したときの様子」は、左右の眼に明らかな異常がなく、眼瞼下垂や眼位の異常も見られません。これは顔面神経麻痺の症状を直接示しているものではありません。兎眼は閉瞼時の不全を指すため、開眼時には見られません。正しくは:この図は正常な開眼状態を示しており、顔面神経麻痺による異常所見はありません。選びやすい理由:眼に関する選択肢であり、兎眼も眼の症状であるため、関連があるように見えます。しかし、兎眼は閉眼時の所見であり、開眼時の所見ではありません。混同注意:眼瞼下垂(動眼神経麻痺や重症筋無力症など)、眼球突出(バセドウ病など)。
- 3. 正解。選択肢3の「歯をむき出しにしたときの様子」は、顔面表情筋、特に口輪筋や頬筋の機能によって行われます。図では左側の口角が十分に引き上げられておらず、左右の口の動きに非対称性が見られます。これは顔面神経麻痺による顔面表情筋の麻痺を示しており、問題文の「左目に兎眼」と同じく左側の顔面神経機能障害によって生じる症状として適切です。選びやすい理由:これは正答であるため、特になし。混同注意:特になし。顔面神経麻痺の典型的な症状の一つです。
- 4. 選択肢4は、「ア」と発声したときの口蓋垂と軟口蓋の様子を描いています。図では口蓋垂が右に偏位しており、左側の軟口蓋の挙上が不十分であることが示唆されます。これは舌咽神経(第IX脳神経)や迷走神経(第X脳神経)の麻痺によって生じる症状であり、嚥下障害や構音障害の原因となります。顔面神経の機能とは異なります。正しくは:左側の口蓋垂挙上不全や偏位は、迷走神経(第X脳神経)の機能障害を示唆します。選びやすい理由:顔面の神経に関する症状であるという点で関連があるように見えますが、支配神経が異なるため誤りです。混同注意:舌咽神経麻痺、迷走神経麻痺。
- 5. 選択肢5の「舌をまっすぐ出したときの様子」は、舌の運動を評価しています。図では舌が左側に偏位しており、これは舌下神経(第XII脳神経)の麻痺によって生じる症状です。舌下神経は舌の固有筋を支配しており、その障害によって舌の偏位や萎縮が見られます。顔面神経の機能とは異なります。正しくは:舌の偏位は舌下神経(第XII脳神経)の機能障害を示唆します。選びやすい理由:口に関連する症状であり、顔面神経麻痺でも口角下垂などの口の症状が見られるため、混同しやすいかもしれません。混同注意:舌下神経麻痺。
国試ポイント
脳神経の解剖と機能、特に顔面神経麻痺の症状とその診察方法を理解しているかが問われる。顔面神経麻痺では、顔面表情筋の麻痺により、閉瞼不全(兎眼)、口角下垂、鼻唇溝の消失、唾液や食物のこぼれ、味覚障害(舌前2/3)、涙液・唾液分泌異常などの症状が生じる。
混同注意
顔面神経麻痺と他の脳神経麻痺、特に外眼筋の麻痺による眼球運動障害(動眼神経、滑車神経、外転神経麻痺)と混同しないように注意が必要です。眼球運動障害は複視や眼位の異常を引き起こしますが、閉瞼不全(兎眼)は顔面神経麻痺に特有の症状です。また、中枢性顔面神経麻痺と末梢性顔面神経麻痺では、額のしわ寄せの有無で鑑別できる点も重要です(末梢性では額のしわ寄せもできない)。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出題された場合、まず問題文中の症状がどの脳神経の障害を示しているかを特定します。今回の場合は「左目に兎眼」から顔面神経(第VII脳神経)麻痺と判断します。次に、各選択肢の図がどの脳神経の機能を評価しているか、またはどの脳神経麻痺の症状を示しているかを判断し、顔面神経麻痺の症状と一致するものを選択します。特に、顔面表情筋の左右差に注目して判断します。
関連知識
顔面神経は混合神経であり、運動機能(表情筋支配)、感覚機能(舌前2/3の味覚)、副交感神経機能(涙腺、顎下腺、舌下腺支配)を持ちます。そのため、顔面神経麻痺では運動麻痺だけでなく、味覚障害やドライアイ、口腔乾燥などの症状を伴うことがあります。Bell麻痺(特発性顔面神経麻痺)は最も多い原因ですが、外傷、腫瘍、感染症(Ramsay Hunt症候群など)、脳血管障害など様々な原因で生じます。