53歳の女性。自転車走行中に転倒受傷し、鎖骨骨幹部骨折に対して観血的整復固定術が施行された。術後のエックス線写真(別冊No. 2)を別に示す。術後翌日の患側の理学療法で正しいのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第58回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
鎖骨骨折の観血的整復固定術後翌日という急性期では、内固定部の安定性を最優先し、患部への過度な負荷を避けることが重要です。一方で、廃用症候群の予防や全身管理も考慮する必要があります。手指の運動は、患部(鎖骨)に直接的なストレスを与えることなく、末梢の循環改善や浮腫予防、巧緻性維持に寄与するため、術後早期から安全に実施可能な理学療法として適切です。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。鎖骨骨折術後翌日という急性期では、患部への直接的な負荷は避けつつ、手指の巧緻性や循環を維持するための運動は安全に実施できます。これにより浮腫の予防や機能低下の抑制が期待できます。選びやすい理由:一見すると患部とは直接関係ないように見えるが、急性期の全身管理や末梢機能維持の観点からは重要。混同注意:患部周囲の関節運動(肩関節など)と混同し、手指は不要と考えるかもしれない。
- 2. 術後早期の超音波療法は、骨癒合促進の目的で用いられることもありますが、急性期の炎症状態や内固定の有無、術創の状態を考慮すると、術後翌日というごく早期に患部へ直接適用するのはリスクが高く、一般的には慎重な判断が必要です。出血増悪や疼痛増強の可能性も考慮されます。正しくは:急性期の炎症が落ち着き、骨癒合の促進が必要と判断された場合に、適切な出力と期間で実施を検討する。選びやすい理由:骨折治療に超音波療法が用いられることがあるため、正しいと考えてしまう。混同注意:骨折治療全般における超音波療法と、術後翌日という急性期における適用時期・禁忌事項の区別。
- 3. 鎖骨骨折術後翌日という早期に、患側肩関節の等張性挙上運動を行うと、内固定部に大きなストレスがかかり、疼痛の増悪や再転位、固定不良のリスクが高まります。骨癒合が不十分な段階での積極的な運動は避けるべきです。正しくは:骨癒合の進行具合を確認し、医師の指示のもと、段階的に低負荷から可動域訓練や筋力訓練を開始する。選びやすい理由:肩関節の早期可動域確保が重要という考えから、早期から運動を開始したくなる。混同注意:肩関節周囲炎など他の肩関節疾患におけるリハビリテーションプロトコルと、骨折術後のプロトコルとの区別。
- 4. 術後翌日であっても、全身の安静を過度に保ち、全ての理学療法をベッド上で行うことは、廃用症候群(筋力低下、関節拘縮、循環不全など)のリスクを高めます。患部に影響のない範囲で、座位や立位での運動、非患部の運動などは積極的に行うべきです。正しくは:患部に影響を与えない範囲で、積極的に離床を促し、座位や立位での非患部運動、呼吸運動などを実施する。選びやすい理由:術後早期は安静が基本という考えから、全身安静を選んでしまう。混同注意:患部の安静と、全身の安静を同一視してしまうこと。
- 5. 術後翌日に他動での肩関節可動域練習を行うと、内固定部に外力が加わり、疼痛の増悪や固定部の損傷、再転位のリスクが高まります。自動運動と同様に、骨癒合が不十分な段階での積極的な他動運動は避けるべきです。正しくは:骨癒合の進行と医師の指示に基づき、段階的に制限内で他動運動を開始し、徐々に自動運動へと移行させる。選びやすい理由:患者自身での運動(自動運動)より他動運動の方が安全という誤解、または肩関節の拘縮予防の重要性から早期に介入したくなる。混同注意:他の術後(例:関節置換術)での他動運動プロトコルと、骨折術後プロトコルとの区別。
国試ポイント
鎖骨骨折術後の急性期(術後早期)における理学療法の原則と、具体的な介入内容の妥当性を問う問題です。骨折術後における安静と早期離床・機能維持のバランスを理解しているか、また禁忌事項を把握しているかがポイントとなります。
混同注意
骨折術後の回復段階に応じた理学療法の違い(急性期、回復期、維持期)、他の部位の骨折や他の疾患の術後リハビリテーションとの混同、運動療法以外の物理療法や全身管理との区別。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出題された場合、術後日数を正確に読み取り、その時期における骨癒合の状態と、内固定の安定性、炎症の程度を考慮した上で、各選択肢の介入が「患部への影響」「全身への影響」「安全性の確保」の観点から適切かを判断する。
関連知識
鎖骨骨折の解剖学と生理学、観血的整復固定術後の合併症、骨癒合のメカニズム、廃用症候群の予防、術後早期の運動療法の禁忌と適応、各身体部位の運動療法の実際。