2歳の女児。痙直型四肢麻痺。臥位では頭部コントロール良好で、背臥位から腹臥位への寝返りが可能である。背臥位と腹臥位での様子を図に示す。この時期に優先して行う理学療法で最も適切なのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第52回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
患者は2歳の痙直型四肢麻痺の女児で、頭部コントロールは良好で寝返りも可能ですが、図からは体幹の安定性がまだ不十分であることがうかがえます。座位での体幹の立ち直り反応は、その後の座位・四つ這い・立位・歩行といった運動発達の基礎となるため、この時期に優先して行う理学療法として最も適切です(公式正答5)。
選択肢ごとの解説
- 1. この時期の子供にとって、自立した歩行に至る前の段階では、下肢の筋力強化よりも体幹の安定性や姿勢制御の獲得が優先されます。特に痙直型麻痺では、固まった姿勢からの随意運動を引き出すために、より基礎的な運動発達を促す必要があります。正しくは:この段階では、より基礎的な運動発達を促す介入が優先されるべきです。例えば、体幹の安定化や四肢の協調運動などです。選びやすい理由:麻痺があるため、筋力が足りないと感じやすいですが、全体的な運動発達段階を考慮する必要があります。混同注意:筋力強化そのものと、発達段階に応じた適切な運動療法の優先順位。
- 2. 寝返りが可能で、体幹の立ち直り反応が不十分な段階で、直ちに補助付き歩行練習を行うのは時期尚早です。歩行には安定した体幹機能とバランス能力が不可欠であり、それらが十分に発達してから導入すべきです。正しくは:歩行練習は、体幹の安定性や座る姿勢、四つ這いなどの先行する運動発達が十分に確立された後に行うべきです。選びやすい理由:歩行獲得は最終的な目標の一つであるため、早期から取り入れたいと考えがちです。混同注意:長期的な目標と、現在の発達段階における短期的な介入目標。
- 3. 椅子からの立ち上がりには、座位での安定した姿勢制御能力、体幹の立ち直り反応、下肢の支持性、バランス能力など、多くの要素が統合的に必要です。体幹の立ち直り反応が未熟なこの段階では、まだ適切ではありません。正しくは:より基礎的な姿勢制御能力や体幹の安定性が獲得されてから、立ち上がり練習に進むべきです。選びやすい理由:座位が取れるならば、次は立ち上がりだと考えがちですが、その間に必要な発達段階を見落としがちです。混同注意:単純な姿勢の移行と、その姿勢を制御するために必要な基礎能力の段階。
- 4. 陽性支持反応は、乳幼児期にみられる原始反射の一つで、下肢に荷重がかかると伸展位で支えようとする反応です。しかし、痙直型麻痺の場合、この反射が過剰に出現し、下肢の伸展パターンを強めてしまう可能性があります。立位での促通を優先する前に、まずは体幹の安定化と随意的な運動制御の改善を目指すべきです。正しくは:立位での陽性支持反応の促通よりも、座位での体幹の安定性や立ち直り反応の獲得、あるいは適切な関節可動域の維持や痙縮の管理が優先されます。選びやすい理由:立位を目標とする場合に、その前段階として支持反応を促したくなるかもしれませんが、麻痺のタイプを考慮すると注意が必要です。混同注意:正常発達における反射の促通と、病態(痙直型麻痺)における反射の影響。
- 5. 正解。設問の状況から、女児は寝返りは可能ですが、座位での安定した姿勢保持について言及がありません。仰臥位と腹臥位の図からは、体幹の立ち直り反応が不十分であることが示唆されます。座位での体幹の立ち直り反応を促通することは、体幹の安定性、バランス能力、そしてその後の四つ這いや独歩といった高次の運動発達の基礎となります。特に痙直型麻痺の場合、体幹の安定性が四肢の随意運動を引き出す上で非常に重要です。
国試ポイント
小児の発達段階に応じた理学療法の優先順位、特に脳性麻痺児の運動発達とその介入の考え方を問う問題です。体幹の安定化が上位機能の基礎となることを理解しているかがポイントになります。画像情報から患者の現在の発達段階を正確に読み取る能力も求められます。
混同注意
脳性麻痺児の発達段階における運動発達の順序と、どの段階でどの介入が最も効果的かという知識。原始反射の促通が、痙直型麻痺において必ずしも望ましいとは限らない点も混乱しやすい。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出た場合、まず患者の年齢、病態(脳性麻痺の種類と症状)、現在の運動機能レベル(何ができて何ができないか)を正確に把握する。次に、小児の運動発達の正常段階を念頭に置き、その児が現在どの段階にいるのか、そして次に獲得すべき機能は何かを判断する。その上で、最も基礎的かつ重要な機能の獲得を促す介入を選択することが重要です。
関連知識
小児の運動発達の段階(寝返り→座位→四つ這い→立位→歩行)、脳性麻痺の病型と症状、およびそれに応じた理学療法の原則。特に、体幹の安定性が四肢の協調運動や姿勢制御の基礎となること。陽性支持反応と痙直型麻痺の関係。