61歳の女性。脳梗塞による失語症。言語理解は良好である。発語は流暢であるが錯語や保続は認められた。呼称では「時計」を「ト、トチ、、、」と誤りに気づき自己修正を繰り返すが、失敗に終わる。復唱も不良である。失語症のタイプで正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第61回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
提示された症例は、言語理解が良好であるにもかかわらず、発語に錯語や保続が頻繁に見られ、特に呼称において自己修正を試みるも失敗するという「接近行為」が特徴的です。さらに復唱も不良である点がポイントです。これらの特徴は、ウェルニッケ・リヒトハイムの分類における伝導失語に典型的です。伝導失語では弓状束の損傷によって言語理解中枢と運動性言語中枢の連絡が障害され、聴覚情報から発語への変換が困難になるため、復唱と錯語の自己修正が困難になります。
選択肢ごとの解説
- 1. Broca失語の患者さんは、発語が非流暢で、努力を要する話し方や短文になりやすい特徴があります。提示されたケースでは「発語は流暢である」と明記されているため、Broca失語とは異なります。正しくは:「発語は非流暢で、話すのに労力を要し、短文であることが特徴的です。」選びやすい理由:脳梗塞による失語症の代表的なタイプの一つであるため、知識が曖昧だと選びやすいかもしれません。混同注意:超皮質性運動失語(復唱良好)と混同しやすいですが、発語の流暢性が大きく異なります。
- 2. Wernicke失語の患者さんは、他者の言葉の理解が著しく困難であるという特徴があります。提示されたケースでは「言語理解は良好である」と明記されており、Wernicke失語の診断基準と矛盾します。正しくは:「言語理解は著しく障害され、発話は流暢ですが意味不明瞭なジャーゴンや新語が特徴的です。」選びやすい理由:発語が流暢で錯語が見られる点は共通していますが、言語理解の有無が明確な鑑別点です。混同注意:超皮質性感覚失語(復唱良好)と混同しやすいですが、言語理解の程度が異なります。
- 3. 健忘性失語の患者さんは、単語を思い出せない呼称障害が主症状ですが、復唱能力は一般的に良好です。提示されたケースでは「復唱も不良である」とされているため、健忘性失語には当てはまりません。正しくは:「呼称障害が主症状ですが、言語理解と復唱は比較的良好に保たれています。」選びやすい理由:呼称困難という症状は共通しており、理解も良好であるため、復唱の機能を見落とすと誤って選択する可能性があります。混同注意:どのタイプの失語症でも呼称障害は見られますが、復唱の可否が重要な鑑別点です。
- 4. 全失語の患者さんは、言語理解、発語、復唱といった全ての言語機能が重度に障害される状態です。提示されたケースでは「言語理解は良好である」とされており、全失語の特徴とは一致しません。正しくは:「言語理解、発語、復唱の全てが重度に障害され、コミュニケーションが極めて困難な状態です。」選びやすい理由:脳梗塞後に起こりうる重篤な失語症タイプの一つであるため、重症度への印象から選びやすいかもしれません。混同注意:どのタイプの失語症とも大きく異なるため、混同は少ないかもしれません。
- 5. 正解。伝導失語は、言語理解が良好で、発語は流暢ですが、音韻性錯語や保続が頻繁に見られ、特に呼称時の自己修正(接近行為)が特徴的です。また、復唱は著しく障害されます。このケースは、これらの症状(言語理解良好、発語流暢だが錯語・保続あり、呼称での自己修正、復唱不良)全てに合致するため、伝導失語と判断できます。
国試ポイント
失語症の分類(特にウェルニッケ・リヒトハイムの図式)における各タイプの特徴を正確に理解しているかが問われています。特に「言語理解」「発語の流暢性」「復唱」「呼称」の4つの主要な機能の障害パターンを区別できることが重要です。伝導失語の「接近行為」や「復唱障害」は頻出のポイントです。
混同注意
健忘性失語(復唱良好)、軽度のウェルニッケ失語(理解不良)、軽度のブローカ失語(発語非流暢)などと混同しやすいですが、流暢性、理解、復唱の組み合わせで明確に鑑別できます。
次に同じ論点が出たら
次にこの論点が出題された場合、症状の組み合わせだけでなく、それぞれの症状の「程度」に着目して、より詳細な鑑別を行う必要があります。特に復唱の可否、錯語の種類(音韻性か意味性か)、自己修正行動の有無と内容が鑑別の鍵となります。
関連知識
ウェルニッケ・リヒトハイムの失語症分類、各失語症タイプにおける主要症状(言語理解、発語、復唱、呼称、読字、書字)、責任病巣、失語症の評価法(標準失語症検査SLTAなど)。