8歳の男児。二分脊椎。麻痺レベルはL 5。装具なしでも歩行可能であるが、バランスを崩し不安定である。歩行を安定させるため筋力増強運動を行う。増強する筋で最優先するのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第61回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
L5レベルの麻痺を持つ二分脊椎の男児が、装具なしで歩行可能だがバランスを崩し不安定であるという状況では、歩行時の体幹・骨盤の側方安定性、特に立脚相での骨盤の水平維持が重要となります。この機能は主に股関節外転筋である中殿筋が担っています。中殿筋の機能不全はトレンデレンブルグ歩行を引き起こし、歩行の不安定性やバランス不良の大きな原因となります。したがって、歩行の安定性を向上させるためには、中殿筋の筋力増強を最優先することが適切です。
選択肢ごとの解説
- 1. 腸腰筋は股関節屈曲の主要な筋肉であり、歩行の振り出しには重要ですが、歩行安定性(特に側方安定性)を直接的に高める役割は限定的です。L5麻痺レベルでは股関節屈筋は比較的保たれていることが多いです。正しくは:腸腰筋は主に股関節の屈曲と骨盤の前傾に関与します。選びやすい理由:歩行に重要な筋肉であるため、一般的に筋力増強の対象となりやすいです。混同注意:歩行における股関節周囲筋の多様な役割の中で、腸腰筋がどの安定性に関わるか混同しやすいです。
- 2. 大殿筋は股関節伸展の主要な筋肉で、立脚初期の股関節安定や階段昇降、坂道歩行などに重要ですが、歩行時の側方安定性(トレンデレンブルグ徴候の防止など)には中殿筋の方が直接的に関与します。正しくは:大殿筋は股関節の伸展および外旋に関与します。選びやすい理由:股関節伸展は歩行に不可欠な要素であり、特に立脚相後期に重要なため、選びやすいかもしれません。混同注意:股関節伸展筋と外転筋の役割の違い、特に歩行安定性におけるそれぞれの優先度について混同しやすいです。
- 3. 正解。中殿筋は股関節の外転筋であり、立脚相において骨盤の水平を保つ(骨盤の傾きを防ぐ)主要な筋肉です。この男児は歩行が不安定でバランスを崩しやすいとのことなので、トレンデレンブルグ歩行などの代償を防ぎ、歩行時の側方安定性を高める上で中殿筋の筋力増強が最優先されます。L5麻痺レベルでは中殿筋が影響を受ける可能性があり、その機能不全が歩行不安定の一因となりえます。
- 4. 大腿四頭筋は膝関節伸展の主要な筋肉で、立脚相での膝関節の安定性や立ち上がり、階段昇降などに重要ですが、この症例ではL5麻痺レベルであるため、膝関節伸筋の機能は比較的保たれていることが多く、歩行時のバランス不良や不安定性を直接的に改善する最優先の筋肉ではありません。正しくは:大腿四頭筋は膝関節の伸展に関与します。選びやすい理由:歩行に非常に重要な筋肉であり、一般的に筋力増強の対象となりやすいです。混同注意:下肢の主要な筋群全体と、個別の歩行不安定性(特に側方不安定性)に対する優先順位を混同しやすいです。
- 5. 前脛骨筋は足関節の背屈筋で、遊脚期のつま先クリアランス(ドロップフットの防止)や立脚初期の足部安定化に重要です。L5麻痺レベルでは前脛骨筋が影響を受ける可能性が高いですが、設問が「バランスを崩し不安定」という点に注目すると、股関節外転筋である中殿筋の強化が歩行の側方安定性に最も直接的に寄与するため、最優先とは言えません。正しくは:前脛骨筋は足関節の背屈および内反に関与します。選びやすい理由:L5麻痺レベルで障害されやすく、足関節の不安定性やドロップフットは歩行障害に直結するため、選びやすいです。混同注意:二分脊椎の麻痺レベルと筋力低下の関連性、および具体的な歩行不安定性の原因と対応する筋肉を混同しやすいです。
国試ポイント
この問題は、二分脊椎患者の麻痺レベルとそれに伴う筋力低下、および具体的な歩行問題(不安定性、バランス不良)に対する理学療法介入の優先順位を問うものです。特に、歩行時の側方安定性における中殿筋の役割が核心となります。各筋の機能と歩行における重要性を理解しているかどうかが問われます。
混同注意
各下肢筋が歩行のどの局面やどの安定性(前後、側方)に主に寄与するのか、という点。特に、L5麻痺レベルでの典型的な筋力低下部位と、問題文に示された「バランスを崩し不安定」という症状がどの筋の機能不全と最も強く結びつくかについて混同しやすいです。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、まず患者の疾患と麻痺レベルから予想される筋力低下部位を特定し、次に問題文の「歩行不安定性」や「バランス不良」といった具体的な症状がどの種類の安定性(前後、側方、立脚、遊脚)に関わるかを判断し、その安定性を補強する上で最も直接的かつ優先度の高い筋は何かを検討する。
関連知識
二分脊椎の麻痺レベル別の残存機能と欠損機能、各下肢筋群の解剖学的知識とその歩行サイクルにおける役割、トレンデレンブルグ徴候とその原因、理学療法における筋力増強の原則と優先順位付け。