2歳3か月の女児。出生時に頭蓋内出血を合併し脳性麻痺と診断された。現在、四肢の筋緊張は低下し、姿勢や動きの中で両下肢の筋緊張が亢進する。両上肢にアテトーゼ様の動きがありADLは全介助である。両上肢で支持して座位が1分程度は可能である。発達歴は、頸定:10か月、寝返り:1歳2か月、ずり這い:1歳5か月。現時点で最も必要な補装具はどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第59回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
この2歳3か月の女児は、脳性麻痺による運動障害があり、両上肢で支えても1分程度しか座位を保持できません。アテトーゼ様の動きや下肢の筋緊張亢進があるものの、ADLは全介助であり、体幹の安定性が極めて低い状態です。日常生活において、安定した姿勢を保つことは、食事、遊び、学習、他者とのコミュニケーションなど、あらゆる活動の基盤となります。座位保持装置は、個々の身体状況に合わせて作られ、適切な姿勢を保持することで、活動参加を促し、二次的な変形(例:脊柱側弯症、股関節脱臼など)を予防する上で最も重要性が高いと考えられます。他の選択肢は、この女児の現在の発達段階や運動能力には合致しないか、優先順位が低いと判断されます。
選択肢ごとの解説
- 1. この女児は、両上肢で支持して1分程度の座位がやっとできる段階であり、まだ立位や歩行の準備が整っていません。歩行器は立位や歩行を補助する目的で使用するため、現時点での優先度は低いと考えられます。正しくは:立位保持や歩行能力がある程度確立され、それをさらにサポートする段階であれば選択肢になります。選びやすい理由:将来的に歩行を目指す補装具として、早期に考えがちですが、現状の能力とは乖離があります。混同注意:立位保持装具や歩行練習のためのパラレルバーなどと混同しやすいですが、歩行器はより自立歩行に近い段階で用いられます。
- 2. 靴型装具は足関節の安定性向上や変形予防、歩行の改善を目的としますが、この女児はまだ座位が不安定で、立位や歩行の段階には至っていません。足関節単独の問題解決よりも、体幹全体の安定化が優先されます。正しくは:体重支持や歩行が可能な段階で、足関節の過度な底屈・内反を防ぐ目的などで検討されます。選びやすい理由:下肢の筋緊張亢進があるため、足関節の変形を心配して選びたくなるかもしれませんが、優先順位が異なります。混同注意:短下肢装具(AFO)や長下肢装具(KAFO)などの他の下肢装具と混同しやすいですが、靴型装具はより軽度なサポートや足部のみの対応です。
- 3. 電動車椅子は、ある程度の認知能力や上肢による操作能力が求められます。この女児はまだ2歳3か月で、アテトーゼ様の不随意運動があり、ADLは全介助であるため、自分で電動車椅子を操作することは難しいと考えられます。正しくは:移動手段が必要な場合でも、まずは介助者が操作する普通型車椅子やバギーが検討され、本人の操作能力が向上してから電動車椅子が検討されます。選びやすい理由:移動手段として選択肢に挙がるものの、年齢や運動能力の観点から時期尚早です。混同注意:普通型車椅子やバギーなどの介助式移動手段と混同しやすいですが、電動車椅子は本人の操作を前提としています。
- 4. 正解。この女児は両上肢で支持してようやく1分程度の座位が可能であり、体幹の安定性が非常に低い状態です。しかし、日常生活では多くの時間を座位で過ごすため、適切な姿勢を安全に保つための座位保持装置が最も必要です。これにより、摂食、遊び、学習、他者との交流といった活動への参加を促し、二次的な変形(脊柱側弯など)の予防にも繋がります。選びやすい理由:他の装具も重要に見えるかもしれませんが、まず体幹の安定を確保することが活動参加の前提となります。混同注意:バギーや車椅子と混同しやすいですが、座位保持装置は主に「安定した座位姿勢を保つ」ことに特化しており、移動機能は副次的またはありません。
- 5. 普通型車椅子は移動手段として利用されますが、この女児はまだ2歳3か月であり、体幹の安定性が低く、通常の車椅子では適切な姿勢を維持することが困難です。この年齢の児には、リクライニングやチルト機能、座位保持機能が一体化したバギータイプが検討されることが多く、まずは体幹の安定を最優先する座位保持装置がより重要です。正しくは:移動手段が必要な場合でも、まずは座位保持機能が内蔵されたバギータイプが検討され、座位保持装置で得られる安定性が基本となります。選びやすい理由:移動手段として必要と考えるかもしれませんが、現状では座位保持能力が追いついていません。混同注意:バギーや座位保持装置と混同しやすいですが、普通型車椅子は成人用に近い構造で、児の姿勢保持には不十分な場合が多いです。
国試ポイント
脳性麻痺児の補装具の選択は、児の年齢、発達段階、残存能力、および最も改善が必要な機能(特にADLと二次障害予防)に基づいて問われます。特に、体幹の安定性が低い場合の最優先事項を理解しているかが試されます。
混同注意
移動のための車椅子やバギー、あるいは将来的な歩行補助具としての歩行器などと混同しやすいですが、最も重要なのはまず体幹の安定を確保することです。また、単に座らせるのではなく、正しい姿勢で安定して座らせるという点が重要です。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出題された場合、まず児の年齢と発達レベル(特に首のすわり、寝返り、座位、立位、歩行の可否)を確認し、次に現在の主訴(例:ADLの困難さ、二次障害の有無)と身体所見(例:筋緊張の状態、不随意運動の有無)を総合的に判断して、その段階で最も優先される機能獲得や二次障害予防に繋がる補装具を選択します。
関連知識
脳性麻痺の分類(痙直型、アテトーゼ型、失調型など)、発達段階に応じた補装具の選択原則、二次障害(脊柱側弯、股関節脱臼、拘縮など)の予防と対応、ADLの評価(FIM, WeeFIMなど)と介助量、様々な補装具の種類と適応(靴型装具、短下肢装具、長下肢装具、座位保持装置、車椅子、バギー、歩行器、立位保持装置など)。