65歳の男性。右利き。突然の意識障害で搬送された。くも膜下出血の診断で、破裂脳動脈瘤のクリッピング手術を施行された。発症後3か月の頭部CT(別冊No.2)を別に示す。この患者に出現しやすい症状はどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第54回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
くも膜下出血、特に前交通動脈瘤破裂後の患者では、両側性または片側の前脳基底部、視床、乳頭体、海馬などの損傷により、健忘症候群を呈することが非常に多いです。前向性健忘がその主要な症状であり、新しい出来事を記憶できないため、毎日同じ相手に初対面のように接するといった行動が観察されます。提示されたCT画像では、両側性の病変が示唆されており、これが健忘症候群の発生と強く関連しています。他の選択肢の症状は、今回の画像所見から直接的に優先して考えられるものではありません。
選択肢ごとの解説
- 1. 左右失認の症状ですが、CT画像から示唆される病変部位(今回は前頭葉内側部と側頭葉、特に両側性)と直接的に関連性が高いとは言えません。空間認知障害の一部として見られることはありますが、選択肢5の方がより直接的に関連します。正しくは:この病変部位で左右失認が見られる可能性は低い。選びやすい理由:失行や失認の一種と混同しやすいため。混同注意:着衣失行や左右失認。
- 2. 観念運動失行や観念失行の症状であり、主に優位半球(多くは左半球)の頭頂葉や前頭葉の病変で出現しやすいです。今回のCT画像で示唆される病変部位とは直接的な関連性が薄いです。正しくは:この病変部位でジェスチャーの模倣が困難になる可能性は低い。選びやすい理由:失行の症状と関連付けやすいため。混同注意:観念運動失行や構成失行。
- 3. これは半側空間無視(特に左半側空間無視)の典型的な症状です。半側空間無視は主に右半球の頭頂葉、側頭葉、前頭葉、基底核などの損傷で生じますが、今回のCT画像(特に両側性病変の可能性)からは、右半球の損傷だけを直接的に示唆するものではなく、より関連性の高い症状が他にあるため不適切です。正しくは:この病変部位で半側空間無視が主症状となる可能性は低い。選びやすい理由:視空間認知障害の一つとして考えられやすいため。混同注意:半側空間無視。
- 4. 相貌失認の症状であり、主に右半球の側頭葉内側部や後頭葉の紡錘状回などの損傷で生じます。CT画像からは、その部位の損傷を直接的に示唆するものではなく、選択肢5の方が病態と合致します。正しくは:この病変部位で相貌失認が主症状となる可能性は低い。選びやすい理由:高次脳機能障害の一種と関連付けやすいため。混同注意:相貌失認や視覚失認。
- 5. 正解。これは健忘症候群の典型的な症状の一つである『前向性健忘(新しい情報を記憶できない)』を示唆しています。くも膜下出血後の記憶障害は、前交通動脈領域の動脈瘤破裂(下図CT画像で示唆される両側の前頭葉内側部、側頭葉内側部の病変と関連)などで高頻度に出現します。特に、前交通動脈瘤破裂後の健忘症候群は、特徴的な症状として知られています。下図CTでは、脳室周囲や側頭葉に血腫の跡や脳室拡大が見られ、これは広範囲の脳損傷、特に記憶に関わる部位(側頭葉内側部、間脳など)への影響を示唆しています。
国試ポイント
くも膜下出血、特に前交通動脈瘤破裂後の特徴的な高次脳機能障害(健忘症候群)とその症状を理解しているかが問われています。画像所見と臨床症状を結びつける能力が重要です。
混同注意
健忘症候群の症状と、他の失語、失行、失認などの高次脳機能障害の症状。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出題された場合、くも膜下出血の病変部位と、それに伴う特徴的な高次脳機能障害(特に記憶障害)の組み合わせに注目して判断する。特に前交通動脈瘤破裂後の健忘症候群は頻出テーマである。
関連知識
前交通動脈瘤破裂後の健忘症候群では、前向性健忘が主体であり、作話が見られることもあります。記憶障害の神経解剖学的基盤(海馬、乳頭体、視床、前脳基底部など)も理解しておく必要があります。また、くも膜下出血の合併症として水頭症や脳血管攣縮も重要ですが、本問では高次脳機能障害に焦点が当てられています。