25歳の女性。1か月ほど前から熱いラーメンを吹いて冷ましていると右の手足に力が入らなくなる症状が数分続くことがあったが、その後回復したため様子を見ていた。数日前にも同様の症状があり、心配になり病院を受診した。既往歴に特記すべきことはない。脳血管造影検査の正面像および側面像(別冊No. 2)を別に示す。この患者で疑う疾患はどれか。

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出典:厚生労働省ホームページ(第60回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
25歳の若年女性で、熱いものを吹く(過換気)という行為で右の手足に一時的な脱力(一過性脳虚血発作:TIA)が誘発され、数分で回復するという症状は、もやもや病の典型的な臨床像です。もやもや病は、脳血管造影検査で、内頸動脈終末部およびその近傍の主要血管の狭窄・閉塞と、それを補うように発達した異常な細い血管網(もやもや血管)が特徴的に描出されます。この所見と症状が合致するため、「もやもや病」が最も疑われる疾患です。
選択肢ごとの解説
- 1. 脳炎は通常、発熱や頭痛、意識障害など急性の炎症症状を伴い、一過性の脱力発作とは異なる病態です。脳血管造影で直接的な血管異常が描出されることは稀です。正しくは:脳炎であれば、脳画像検査で脳の炎症性変化や浮腫が見られ、髄液検査で炎症所見が確認されます。選びやすい理由:特異的な症状が少ないため、漠然とした脳の病気として誤って選択される可能性があります。混同注意:脳梗塞やてんかんなど、他の脳の疾患と混同されることがあります。
- 2. 脳腫瘍は進行性であることが多く、数分で完全に回復する一過性の脱力発作とは合致しにくいです。脳血管造影では腫瘍血管や血管の圧排・偏位が見られることがありますが、本問のような特定の血管異常は典型的ではありません。正しくは:脳腫瘍であれば、CTやMRIで腫瘤性病変が確認され、症状も進行性に悪化することが一般的です。選びやすい理由:画像所見があるため、脳腫瘍を疑うかもしれません。混同注意:脳腫瘍によるてんかん発作と混同されることがありますが、本症例の血管造影所見は腫瘍を示唆していません。
- 3. 正解。もやもや病は、内頸動脈終末部およびその周囲の主要動脈が狭窄・閉塞し、その代償として脳底部の細い血管(もやもや血管)が発達する進行性の脳血管疾患です。熱いものを吹くなどの過換気によって脳血管が収縮し、脳血流が一時的に低下することで、手足の脱力などの症状(一過性脳虚血発作:TIA)を引き起こしやすい特徴があります。脳血管造影では、特徴的な内頸動脈終末部の狭窄と、異常な毛細血管網(もやもや血管)が描出されます。正しくは:この選択肢は正しいです。選びやすい理由:診断が画像所見と症状に強く結びついているため、適切な知識があれば選択しやすいです。混同注意:他の血管性病変(動脈硬化、血管炎など)と混同されることがありますが、若年発症や特定誘因(過換気)が特徴的です。
- 4. 硬膜動静脈瘻は、硬膜内の動脈と静脈が異常に交通する疾患で、多くは頭蓋内圧亢進症状、眼症状、拍動性耳鳴などを呈します。脳虚血症状も起こりえますが、過換気による誘発は典型的ではありません。脳血管造影では、動脈から直接静脈へ流れる短絡路が描出されますが、本問のような主要動脈の狭窄と異常毛細血管網は認められません。正しくは:硬膜動静脈瘻であれば、脳血管造影で直接的な動静脈シャントが描出されます。選びやすい理由:血管性の疾患であるため、画像所見から関連を疑う可能性があります。混同注意:動静脈奇形(AVM)や海綿状血管腫など、他の脳血管奇形と混同されることがあります。
- 5. アテローム性脳梗塞は、動脈硬化を基盤とする病態で、多くは高齢者に発症します。25歳という若年での発症は稀であり、また一過性の症状が過換気で誘発されるという特徴は、もやもや病に典型的です。脳血管造影では、主に大きな血管のアテローム性狭窄が描出されますが、もやもや病のような末梢血管のもやもやとした異常血管網は特徴ではありません。正しくは:アテローム性脳梗塞であれば、高血圧、糖尿病、脂質異常症などのリスク因子を持つ高齢者に多く、血管造影では主に太い動脈のアテローム性狭窄や閉塞が見られます。選びやすい理由:脳梗塞の一種であるため、一過性脳虚血発作というキーワードから連想しやすいです。混同注意:一過性脳虚血発作(TIA)の原因として、アテローム性動脈硬化症も重要ですが、患者年齢と誘発因子が異なります。
国試ポイント
本問題は、若年者における一過性脳虚血発作の誘発因子(過換気)と、それに伴う脳血管造影検査の典型的な所見を結びつけて、もやもや病を診断できるかという知識を問うています。特に、画像診断と臨床症状の関連性が重要です。
混同注意
一過性脳虚血発作(TIA)の原因は多岐にわたりますが、若年発症で過換気誘発性の場合は、もやもや病を強く疑う必要があります。アテローム性脳梗塞はTIAの原因として頻度が高いですが、年齢と誘発因子が異なるため注意が必要です。
次に同じ論点が出たら
今後、同様の論点が出題された場合、患者の年齢、症状の誘発因子、症状の一過性、そして画像所見(特に血管造影)の組み合わせから、鑑別疾患を正確に特定できるかどうかが問われるでしょう。各疾患の典型的な症状と画像所見の関連性を深く理解しておく必要があります。
関連知識
もやもや病は、特に東アジア人に多く見られる原因不明の進行性脳血管疾患です。症状としては、一過性脳虚血発作(TIA)の他に、脳出血、頭痛、てんかんなどがあります。過換気は血管収縮を誘発し、狭窄した血管領域の血流をさらに低下させるため、TIAが起こりやすくなります。診断は脳血管造影検査がゴールドスタンダードですが、MRAやCTAも用いられます。治療法としては、血行再建術(バイパス手術)があります。