頸髄損傷完全麻痺(第6頸髄節まで機能残存)の上肢機能で可能なのはどれか。2つ選べ。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第58回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3・4番
解説
頸髄損傷において第6頸髄節(C6)まで機能が残存している場合、C6レベルで支配される筋肉、またはそれよりも高位のC5レベルで支配される筋肉による運動が可能です。手関節の背屈は主に長橈側手根伸筋や短橈側手根伸筋(C6)、肘関節の屈曲は上腕二頭筋や上腕筋(C5, C6)によって行われるため、これらの動作はC6損傷レベルで可能と判断されます。一方、小指の外転(T1)、母指の内転(C8, T1)、中指DIP関節の屈曲(C8, T1)は、C6よりも下位の神経節による支配が必要なため、このレベルでは不可能です。
選択肢ごとの解説
- 1. 小指の外転は主にT1神経に支配される小指外転筋によって行われます。C6レベルの損傷では、この神経支配が失われているため、小指の外転は不可能です。正しくは:C8/T1レベルまで機能が残存していれば可能です。選びやすい理由:手指の動きという漠然としたイメージで、他のより複雑な動きと比べて「単純そう」と感じるかもしれませんが、手内在筋の機能にはC8/T1レベルの機能残存が必要です。混同注意:C5/C6レベルで可能な手関節や肘関節の動きと、手指のより末梢の動きが混同されやすいです。
- 2. 母指の内転は主にC8/T1神経に支配される母指内転筋によって行われます。C6レベルの損傷では、この神経支配が失われているため、母指の内転は不可能です。正しくは:C8/T1レベルまで機能が残存していれば可能です。選びやすい理由:母指の動きは他の指と異なり、比較的早期に回復すると誤解する可能性も考えられますが、内転は手内在筋の機能であり、C8/T1レベルの機能残存が必要です。混同注意:C6で可能な手関節の動き(背屈など)と、手内在筋による手指の細かい動きを混同しやすいです。
- 3. 正解。手関節の背屈は、主に長橈側手根伸筋や短橈側手根伸筋といったC6神経に支配される筋肉によって行われます。したがって、C6レベルの機能残存があればこの動作は可能です。
- 4. 正解。肘関節の屈曲は、主に上腕二頭筋や上腕筋といったC5-C6神経に支配される筋肉によって行われます。したがって、C6レベルの機能残存があればこの動作は可能です。
- 5. 中指DIP関節の屈曲は、主に深指屈筋によって行われます。深指屈筋の神経支配はC8/T1であり、C6レベルの損傷ではこの動作は不可能です。正しくは:C8/T1レベルまで機能が残存していれば可能です。選びやすい理由:PIP関節やMP関節の屈曲と混同し、指の屈曲がC6レベルで可能だと誤解する可能性もありますが、DIP関節の屈曲はより遠位の支配が必要です。混同注意:C6レベルで可能な「手関節」の動きと、C8/T1レベルで可能になる「指」の動きを混同しやすいです。
国試ポイント
頸髄損傷のレベル診断と、それに伴う機能残存の理解が問われています。特に、各関節運動を支配する主要な筋肉とその神経支配(髄節レベル)を正確に把握しているかを確認する問題です。手指の細かい運動はより下位の髄節支配である点と、手関節の背屈や肘関節の屈曲がC6レベルで可能である点が重要です。
混同注意
C6レベルでの機能残存において、手関節の動きと手指の動きを混同しやすいです。C6では手関節背屈は可能ですが、手指の屈曲・伸展や外転・内転といった細かい動きはC7-T1レベルの機能残存が必要となります。また、上腕二頭筋の腱反射がC5-C6、腕橈骨筋の腱反射がC5-C6であることも関連知識として混乱しやすいかもしれません。
次に同じ論点が出たら
次にこの論点が出題された場合、C6レベルでの機能だけでなく、C5やC7、C8、T1レベルでのキーマッスルとその機能、あるいは脊髄損傷後の残存機能を用いた生活動作(食事、着替え、車椅子操作など)について問われる可能性があります。また、不全損傷の場合の残存機能や、神経根損傷との鑑別なども注意が必要です。
関連知識
- 頸髄損傷の国際基準(ASIA Impairment Scale)に基づく残存機能の評価。 - 各髄節レベルにおける主要なキーマッスルとその機能。 - C5: 肘関節屈曲(上腕二頭筋、腕筋) - C6: 手関節背屈(橈側手根伸筋) - C7: 肘関節伸展(上腕三頭筋) - C8: 指屈曲(深指屈筋) - T1: 小指外転(小指外転筋) - 損傷レベルと代償運動、装具の活用などの臨床応用。