全身持久力トレーニングの効果で正しいのはどれか。2つ選べ。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第57回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3・4番
解説
全身持久力トレーニングは、心臓血管系、呼吸器系、および骨格筋の代謝機能に多くの生理学的適応をもたらします。これにより、心臓のポンプ機能が強化され最大心拍出量が増加し、酸素運搬能力と利用効率が向上するため、最大酸素摂取量も増加します。また、トレーニングによって運動効率が向上するため、同じ運動強度での酸素消費量や二酸化炭素排出量が減少し、その結果として換気量も減少します。さらに、有酸素性代謝能力が向上することで、より高い運動強度まで乳酸が蓄積しにくくなり、嫌気性代謝閾値が出現する運動強度は上昇します。末梢血管の拡張能力や毛細血管の密度も増加するため、末梢血管抵抗は減少します。
選択肢ごとの解説
- 1. 誤り。全身持久力トレーニングにより、心臓のポンプ機能が向上し、1回拍出量が増加するため、最大心拍出量は増加します。正しくは:最大心拍出量は増加する。選びやすい理由:安静時心拍数が減少することと混同し、運動時の心機能も全体的に抑制されると誤解しやすいかもしれません。しかし、心臓の効率が上がるため、最大の能力は向上します。混同注意:安静時心拍数の減少と最大心拍出量の変化を混同する。
- 2. 誤り。全身持久力トレーニングにより、運動筋における毛細血管の密度が増加し、血管の拡張能力も向上するため、末梢血管抵抗は減少します。正しくは:末梢血管抵抗は減少する。選びやすい理由:血圧が高くなる病態と関連付けて考え、血管抵抗が増加すると誤解する可能性がありますが、トレーニングは血管の柔軟性を高め、血流を改善します。混同注意:高血圧などによる血管抵抗の増加と混同する。
- 3. 正解。正しい。全身持久力トレーニングは、心肺機能(心拍出量、酸素運搬能力)と末梢組織の酸素利用能力(ミトコンドリア機能、毛細血管密度)を向上させるため、最大酸素摂取量(VO2max)を増加させます。
- 4. 正解。正しい。トレーニングによって運動効率が向上すると、同じ運動強度を維持するための酸素消費量や二酸化炭素排出量が減少し、結果として換気量も減少します。呼吸筋の効率も向上するため、より少ない労力で換気を行えるようになります。
- 5. 誤り。全身持久力トレーニングにより、有酸素運動能力が向上するため、嫌気性代謝閾値(AT)が出現する運動強度は上昇(向上)します。これにより、より高い強度で長時間運動を持続できるようになります。正しくは:嫌気性代謝閾値が出現する運動強度は上昇(向上)する。選びやすい理由:運動能力が向上することを「閾値が低くなる」と誤って解釈してしまうかもしれません。実際には、より高い負荷まで有酸素運動で対応できるため、閾値は「上がる」と表現されます。混同注意:閾値という言葉から、能力向上を「閾値が低下する」と誤解する。運動能力が向上すれば閾値は高くなる。
国試ポイント
全身持久力トレーニングによる生理学的適応は、理学療法士国家試験において頻出の基礎知識です。特に、心拍出量、最大酸素摂取量、換気量、嫌気性代謝閾値、末梢血管抵抗といった主要な指標が、トレーニングによって『増加するのか』『減少するのか』を正確に理解しているかが問われます。それぞれの変化の方向性と、その背景にある生理学的メカニズムを結びつけて覚えることが重要です。
混同注意
最大心拍出量の変化と安静時心拍数の変化(安静時心拍数は減少)、嫌気性代謝閾値の『上昇』と運動負荷の『軽減』といった、言葉のニュアンスによる混同に注意が必要です。また、酸素摂取量、換気量、心拍数といった異なる指標が、同じ運動強度時と最大運動時でどのように変化するかも正確に区別する必要があります。
次に同じ論点が出たら
次にこの論点が出題された場合、全身持久力トレーニングが安静時心拍数、安静時血圧、血中乳酸濃度、RPE(自覚的運動強度)にどのような影響を与えるか、あるいは、トレーニング効果の測定方法(例:VO2maxテスト、AT測定)に関する知識が問われる可能性があります。また、疾病を持つ対象者(例:心疾患患者、COPD患者)における持久力トレーニングの効果の違いが問われることも考えられます。
関連知識
運動生理学における心臓血管系の適応(心肥大、1回拍出量増加、血管新生)、呼吸器系の適応(呼吸筋効率、換気効率)、筋・代謝系の適応(ミトコンドリアの数と大きさの増加、酸化酵素活性の向上、グリコーゲン貯蔵量の増加)など。Fickの原理や、運動中のエネルギー供給経路(有酸素性・嫌気性)の知識も関連します。