80歳の女性。夫と2人暮らし。認知症があり、MMSEは13点。自宅にて転倒し、救急搬送され大腿骨頸部骨折と診断されて人工骨頭置換術が行われた。その後、回復期リハビリテーション病棟へ転棟し、理学療法を開始したが消極的である。理学療法中の患者の訴えへの返答で適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第56回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
認知症の患者様とのコミュニケーションでは、共感と受容が非常に重要です。患者様の感情を否定せず、そのまま受け止めることで、安心感を与え、信頼関係を築きやすくなります。選択肢2の「帰りたいのですね」は、患者様の感情を言語化し、受容する適切な対応です。他の選択肢は、患者様の状態や感情を考慮せず、否定したり、指示したり、突き放すような対応であり、認知症患者様への接し方としては不適切です。
選択肢ごとの解説
- 1. 認知症の患者様は、記憶障害によって同じ質問を繰り返すことがあります。その際、「さっきも答えましたよ」と返答することは、患者様の混乱や不快感を増幅させ、信頼関係を損なう可能性があります。穏やかに再度名前を伝えるなど、寄り添う姿勢が重要です。正しくは:患者様が質問した際は、毎回丁寧に名前を伝える。選びやすい理由:繰り返される質問に対して、つい説明したくなる気持ちは理解できますが、認知症の特性を考えると不適切な対応となります。混同注意:認知症による記憶障害への理解が不足していると、このような返答を選んでしまう可能性があります。
- 2. 正解。患者様の感情を受容し、共感を示す「傾聴」の姿勢は、認知症患者様とのコミュニケーションにおいて非常に重要です。患者様の訴えを否定せず、その感情を言語化して返すことで、患者様は自分の気持ちが理解されたと感じ、安心感を得やすくなります。正しくは:この返答は適切です。選びやすい理由:他に「もう少し頑張りましょう」などと励ましたくなるかもしれませんが、まずは傾聴が大切です。混同注意:患者様の訴えをそのまま繰り返すだけでは、解決にならないと感じるかもしれませんが、感情の受容という点で非常に有効です。
- 3. 術後のリハビリテーションにおいて、痛みの訴えを無視し「我慢してください」と返答することは、患者様の苦痛を増大させ、リハビリテーションへの意欲を著しく低下させます。また、痛みの原因が合併症や過負荷である可能性も考慮し、状況を確認し、必要に応じて痛みを緩和する処置や運動内容の見直しを行うべきです。正しくは:痛みの程度や性質を確認し、無理のない範囲で運動を進めるか、一時中断して医師や看護師と連携する。選びやすい理由:リハビリの進行を優先したいという気持ちから、このような返答をしてしまうことがあるかもしれません。混同注意:リハビリにはある程度の痛みが伴う、という思い込みがあると選択してしまう可能性があります。
- 4. 患者様の意欲低下に対し、「歩けなくなる」といった脅しのような言葉で強制することは、患者様との信頼関係を損ない、さらにリハビリテーションへの拒否感を強める結果を招きます。患者様の訴えを受け止め、その日の体調や気分を考慮しつつ、小さな目標を設定したり、別の方法を提案するなど、柔軟な対応が求められます。正しくは:患者様の意向を尊重し、理由を尋ねたり、簡単な運動から始めるなど、状況に応じた提案を行う。選びやすい理由:患者様の回復を願うあまり、厳しく指導してしまうことがあるかもしれません。混同注意:リハビリの重要性を伝えたいという気持ちから、このような強い言葉を選んでしまう可能性があります。
- 5. 認知症患者様が「物が盗られた」と訴える場合、それは記憶障害による物忘れや見当識障害からくる被害妄想であることが多いです。その訴えに対し、「持ってきてはいけませんよ」と否定したり、責任を転嫁するような返答は、患者様の不安や不信感を増大させます。まずは患者様の訴えを受け止め、一緒に探す姿勢を見せるなど、安心させる対応が適切です。正しくは:患者様の訴えを受け止め、一緒に財布を探したり、看護師や家族と連携して状況を確認する。選びやすい理由:財布の紛失を防ぐための注意喚起として、このような返答をしてしまうかもしれませんが、認知症の特性を考えると不適切です。混同注意:単なる物忘れとして捉えてしまい、このような返答を選んでしまう可能性があります。
国試ポイント
認知症患者への適切なコミュニケーション(傾聴、共感、受容)
混同注意
患者の感情を理解し、寄り添う姿勢が大切であることを理解していないと、意欲を引き出そうとする選択肢や、事実を伝えようとする選択肢を選びがちです。
次に同じ論点が出たら
この患者様が今後リハビリテーションに消極的になった場合、どのようなアプローチが効果的か。
関連知識
バリデーション、ユマニチュード、現実見当識訓練、回想法など、認知症ケアの様々なコミュニケーション技法とその目的。