防衛機制として誤っているのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第56回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
防衛機制は、精神的な苦痛や不安を軽減するために無意識的に働く心理的なメカニズムです。選択肢の『転移』は、精神分析的治療において患者が治療者に過去の重要な人物への感情を向ける現象であり、防衛機制そのものではありません。一方、『抑圧』、『合理化』、『反動形成』、『スプリッティング』はすべてフロイトや対象関係論などで提唱された防衛機制の一種です。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。転移は防衛機制の一つではなく、精神分析の治療過程で患者が治療者に対して過去の重要な人物(親など)への感情や態度を無意識的に向ける現象を指します。正しくは:防衛機制の例としては、抑圧、合理化、反動形成、昇華、投影、退行、同一化などがあります。選びやすい理由:心理学や精神医学の用語としてよく知られているため、防衛機制の一種だと誤解しやすいかもしれません。特に『感情が転じている』という言葉の響きから、防衛的に感情が処理されていると捉えがちです。混同注意:『投影(projection)』や『置き換え(displacement)』といった、感情の対象を変える防衛機制と混同されやすいですが、転移は治療関係に特有の現象であり、防衛機制とは区別されます。
- 2. 抑圧は防衛機制の一つです。受け入れがたい衝動や記憶を意識から無意識へと追いやることで、不安から身を守ろうとします。選びやすい理由:防衛機制の代表的な例として知られているため、正しい選択肢だと判断しやすいです。混同注意:『抑制(suppression)』と混同されやすいですが、抑圧は無意識的なプロセスであるのに対し、抑制は意識的に思考や感情を排除しようとするプロセスです。
- 3. 合理化は防衛機制の一つです。満たされなかった欲求や失敗に対して、もっともらしい理由や口実をつけて自分を納得させ、心の安定を保とうとします。選びやすい理由:日常生活でよく見られる行動パターンであり、防衛機制として理解しやすいため、正しい選択肢だと判断しやすいです。混同注意:『知性化(intellectualization)』と混同されやすいですが、合理化は行動や感情を後付けで正当化するのに対し、知性化は感情的な問題を抽象的・論理的に分析することで、感情を切り離そうとします。
- 4. 反動形成は防衛機制の一つです。受け入れがたい衝動や感情とは正反対の行動や態度をとることで、不安を抑えようとします。選びやすい理由:防衛機制の中でも特徴的な例として知られているため、正しい選択肢だと判断しやすいです。混同注意:『投影(projection)』や『置き換え(displacement)』と混同されやすいですが、反動形成は自己の内部の感情を逆転させて表現するのに対し、投影は自己の感情を他者に転嫁し、置き換えは感情の対象を別のものに移します。
- 5. スプリッティング(splitting、分裂)は防衛機制の一つです。自己や他者を「良いもの」と「悪いもの」に極端に二分して捉えることで、葛藤や不安から身を守ろうとします。特に境界性パーソナリティ障害で見られます。選びやすい理由:比較的新しい概念として認識している場合や、パーソナリティ障害との関連で学ぶため、正しい選択肢だと判断しやすいです。混同注意:他の防衛機制、特に『投影(projection)』や『否認(denial)』と関連して論じられることもありますが、スプリッティングは自己と他者の両方を極端な両極に分けるという点で区別されます。
国試ポイント
この問題は、主要な防衛機制の種類と、それ以外の心理学用語との区別を問うものです。防衛機制は精神分析の基礎概念であり、理学療法士として患者の心理状態を理解する上で重要です。特に、精神科領域のリハビリテーションでは、患者の防衛機制が治療介入に影響を与えるため、その知識が必須となります。
混同注意
『転移』と『置き換え(displacement)』や『投影(projection)』といった、感情の対象が移る防衛機制と混同しやすいですが、転移は治療関係に特有の現象であり、防衛機制とは明確に区別されます。
次に同じ論点が出たら
次に同じ論点が出たら、各防衛機制の具体的な定義と臨床例を正確に理解できているか、また、精神分析や心理療法における他の重要な概念(例:抵抗、逆転移)と混同していないかを確認します。特に、発達段階に応じた防衛機制の成熟度や、特定の精神疾患と関連の深い防衛機制(例:境界性パーソナリティ障害とスプリッティング)に関する知識が問われる可能性があります。
関連知識
防衛機制は、無意識的な心の働きであり、ストレスや不安から自己を守るために機能します。未熟な防衛機制は適応を妨げる場合がありますが、成熟した防衛機制(例:昇華、ユーモア)は建設的に機能することもあります。精神分析では、防衛機制を理解し、より適応的な対処法を身につけることを目指します。精神科関連の疾病、特にパーソナリティ障害の病態理解においても、防衛機制の知識は不可欠です。