痙縮の治療に用いられるボツリヌス毒素の作用部位はどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第56回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
ボツリヌス毒素は、神経筋接合部において運動神経終末に作用します。具体的には、アセチルコリンを貯蔵する小胞が細胞膜に融合し、神経伝達物質を放出する際に必要なSNARE複合体(VAMP、SNAP-25、Syntaxin)と呼ばれるタンパク質を切断または分解します。これによりアセチルコリンの放出が阻害され、筋収縮が抑制されて痙縮が緩和されます。
選択肢ごとの解説
- 1. 筋小胞体は筋収縮のカルシウムイオン貯蔵に関与しますが、ボツリヌス毒素は直接ここには作用しません。正しくは:筋小胞体ではなく、運動神経終末がボツリヌス毒素の作用部位です。選びやすい理由:筋収縮に関わる部位であるため、関連していると誤解されやすいかもしれません。混同注意:アセチルコリンの放出や受容体、筋収縮メカニズム全体と混同しやすいです。
- 2. 脊髄前角には運動ニューロンの細胞体がありますが、ボツリヌス毒素は神経細胞体ではなく、末梢の神経終末に作用します。正しくは:脊髄前角ではなく、運動神経終末がボツリヌス毒素の作用部位です。選びやすい理由:運動神経系の重要な中枢であるため、作用部位として考えやすいかもしれません。混同注意:中枢神経系と末梢神経系、細胞体と神経終末の作用点の違いと混同しやすいです。
- 3. 脊髄前根は運動神経の軸索が通る部位ですが、ボツリヌス毒素は軸索そのものには作用せず、神経伝達物質の放出が行われる終末部に作用します。正しくは:脊髄前根ではなく、運動神経終末がボツリヌス毒素の作用部位です。選びやすい理由:運動神経が通るルートの一部であるため、関連が深いと誤解されやすいです。混同注意:神経の経路と神経伝達物質の放出部位の違いと混同しやすいです。
- 4. 正解。ボツリヌス毒素は、アセチルコリン放出を担うSNAREタンパク質を分解し、運動神経終末からのアセチルコリンの放出を阻害することで、筋収縮を抑制します。これにより痙縮が緩和されます。
- 5. 脊髄後根神経節は感覚神経の細胞体がある部位であり、ボツリヌス毒素が作用する運動神経系とは異なります。正しくは:脊髄後根神経節ではなく、運動神経終末がボツリヌス毒素の作用部位です。選びやすい理由:神経系の部位であるため、全体像が把握できていないと選びやすいかもしれません。混同注意:運動神経と感覚神経、中枢と末梢、細胞体と終末など、神経系の各部位の機能や役割と混同しやすいです。
国試ポイント
この問題は、痙縮治療に使われる主要な薬剤であるボツリヌス毒素の作用機序とその作用部位について、正確な知識があるかを問うものです。特に、神経系のどのレベルで、どのような分子メカニズムで効果を発揮するのかを理解しているかが重要です。臨床応用されている薬剤の基礎知識は頻出です。
混同注意
ボツリヌス毒素の作用部位は、中枢神経系(脊髄前角など)と末梢神経系(運動神経終末)のどちらか、また、神経伝道経路のどこに位置するのかが混同されやすい点です。また、神経筋接合部におけるアセチルコリンの放出前か、放出されたアセチルコリンの受容体(アセチルコリン受容体)に作用するのか、といった具体的なメカニズムについても混同しやすいです。
次に同じ論点が出たら
次に同じ論点が出た場合、ボツリヌス毒素の作用機序をより詳細に問う問題(例:どのタンパク質に作用するか)、他の痙縮治療薬の作用部位や機序との比較、またはボツリヌス毒素の副作用や禁忌に関する問題が出題される可能性があります。
関連知識
痙縮治療にはボツリヌス毒素の他にも、経口薬(バクロフェン、チザニジンなど)、髄腔内バクロフェンポンプ、選択的脊髄後根切断術などがあります。また、アセチルコリンの作用機序や神経筋接合部の機能、SNARE複合体の役割、さらにはアセチルコリンの拮抗薬(例:アトロピン)やアセチルコリンエステラーゼ阻害薬などの知識も関連します。