46歳の男性。前日夜に冷たい風に当たり、翌朝目が覚めると右顔面の腫れぼったさを感じた。昼食時に食事が口からこぼれることに気が付き、近くの神経内科を受診した。開眼安静時の顔面の状態を図に示す。この患者で正常に保たれる運動はどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第52回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
この問題は、顔面神経麻痺の症状とその原因を理解しているか、特に顔面神経と三叉神経の支配領域の違いを正確に把握しているかを問うものです。設問の記述(冷たい風に当たった、右顔面の腫れぼったさ、食事が口からこぼれる)と、下図に示される顔面の非対称性(特に右側の眼が完全に閉じきれていない、口角の下垂など)は、典型的な末梢性顔面神経麻痺(ベル麻痺)の症状を示しています。顔面神経は主に表情筋を支配し、三叉神経は咀嚼筋を支配します。したがって、顔面神経麻痺があっても、三叉神経支配の咀嚼運動は正常に保たれます。奥歯を噛みしめる運動は三叉神経支配であるため、この患者で正常に保たれる運動となります。
選択肢ごとの解説
- 1. これは顔面神経(第VII脳神経)の支配領域である前頭筋の動きです。ベル麻痺(顔面神経麻痺)では、顔面神経の機能が障害されるため、額にしわを寄せることが困難になります。正しくは:おでこにしわを寄せることは困難となる。選びやすい理由:顔の動き全般が障害されると考えやすいが、具体的にどの神経が関与しているかまで深掘りしないと誤りやすい。混同注意:三叉神経と顔面神経の区別が曖昧だと間違える可能性があります。
- 2. 眉をひそめる動きは皺眉筋や鼻根筋といった顔面神経支配の筋肉によるものです。顔面神経麻痺ではこれらの筋肉の機能も低下するため、眉をひそめることが難しくなります。正しくは:眉をしかめることは困難となる。選びやすい理由:顔の表情筋の動きとして認識されやすいため、全てが障害されると誤解する可能性がある。混同注意:眼球運動や咀嚼運動との区別がつきにくい場合に混同する可能性があります。
- 3. まぶたを閉じる動きは眼輪筋によって行われ、これも顔面神経の支配を受けています。したがって、顔面神経麻痺がある場合、まぶたを完全に閉じることが難しくなります。正しくは:まぶたをしっかり閉じることは困難となる。選びやすい理由:眼の保護に直結する重要な動きなので、比較的障害されにくいと思いがちだが、実際には顔面神経麻痺で障害される。混同注意:眼瞼挙上(動眼神経支配)と混同すると誤答しやすいです。
- 4. 正解。奥歯を噛みしめる動きは、咬筋や側頭筋といった咀嚼筋によって行われ、これらの筋肉は三叉神経(第V脳神経)の運動枝によって支配されています。顔面神経(第VII脳神経)は表情筋を支配するため、顔面神経麻痺では咀嚼筋の機能は正常に保たれます。正しくは:この選択肢は正しい。選びやすい理由:特になし。他の選択肢が顔面神経支配の筋肉の動きであるため、消去法で正解にたどり着きやすい。混同注意:特になし。顔面神経と三叉神経の支配領域の違いを理解していれば正答できます。
- 5. 口唇をすぼめたり突き出したりする動きは、口輪筋などの顔面神経支配の表情筋によって行われます。顔面神経麻痺ではこれらの筋肉の機能が低下するため、口唇を十分に動かすことが難しくなります。正しくは:口唇をすぼめるように突き出すことは困難となる。選びやすい理由:摂食障害に直接関わる動きなので、顔面神経麻痺で障害されると認識しやすい。混同注意:咀嚼運動と表情筋の動きを混同しやすい。
国試ポイント
顔面神経麻痺の典型的な症候と、顔面神経(第VII脳神経)と三叉神経(第V脳神経)の支配領域の区別が問われています。特に、表情筋と咀嚼筋の支配神経を正確に理解しているかが重要です。また、問題文中の情報(冷風、片側性麻痺)からベル麻痺を推測できるかもポイントです。
混同注意
顔面神経と三叉神経の支配領域、特に顔面筋と咀嚼筋の区別が最も混同しやすい点です。また、中枢性顔面神経麻痺と末梢性顔面神経麻痺の違いも、額のしわ寄せの有無で鑑別されるため、関連知識として重要です。
次に同じ論点が出たら
次に同様の論点が出題された場合、顔面神経麻痺の診断名(ベル麻痺、ハント症候群など)や、中枢性・末梢性の鑑別、麻痺の重症度評価(柳原法など)、リハビリテーション介入の時期や内容に関する問題が出される可能性があります。また、他の脳神経(例えば動眼神経、滑車神経、外転神経による眼球運動の障害など)との鑑別を問う複合問題も考えられます。
関連知識
顔面神経は、顔面の表情筋、涙腺・唾液腺の一部、味覚(舌の前2/3)を支配します。三叉神経は、顔面の感覚と咀嚼筋を支配します。ベル麻痺は末梢性顔面神経麻痺の代表であり、片側の顔面筋(額を含む)が全て麻痺します。中枢性顔面神経麻痺では、対側の顔面下部の麻痺が見られますが、額の動きは保たれることが多いです。