Danielsらの徒手筋力テストで肩関節屈曲の段階3を測定する際、図のような代償がみられた。代償運動を生じさせている筋はどれか。

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出典:厚生労働省ホームページ(第59回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
Danielsらの徒手筋力テストにおける肩関節屈曲のレベル3では、重力に抗して全可動域で動きを完了できることが求められます。このとき、三角筋や烏口腕筋といった純粋な肩関節屈曲筋の働きが弱い場合、上腕二頭筋が肘関節屈曲(上腕二頭筋の主作用)を伴いながら肩関節屈曲を補助する代償運動が見られます。上腕二頭筋は、長頭が肩甲骨の関節上結節に付着しているため、肩関節屈曲作用も持ちます。
選択肢ごとの解説
- 1. 僧帽筋は肩甲骨の挙上、内転、上方回旋に関与しますが、肩関節屈曲時の上腕二頭筋による代償とは直接関連しません。正しくは:僧帽筋は肩甲骨の動きに関与しますが、この代償運動の主たる原因ではありません。選びやすい理由:肩甲骨の動きが代償の一部として含まれる場合もありますが、直接的な上腕の屈曲代償筋ではありません。混同注意:広範囲な肩甲帯の筋群と混同しやすい。
- 2. 棘上筋は肩関節の外転初期に関与するインナーマッスルですが、肩関節屈曲時の代償としては主に上腕二頭筋が考えられます。正しくは:棘上筋は外転初期に働きますが、肩関節屈曲の代償にはなりません。選びやすい理由:回旋筋腱板の一つであり、肩の安定性に関わるため、損傷などでは代償を引き起こす可能性もありますが、このケースの主要な代償筋ではない。混同注意:他の回旋筋腱板の筋や、肩関節の初期動作に関わる筋と混同しやすい。
- 3. 大胸筋は肩関節の屈曲(特に水平屈曲)にも関与しますが、図のような肩関節屈曲の筋力テストでの代償としては、主に上腕二頭筋が関与します。大胸筋による代償の場合、内転や内旋を伴う動きとして現れることが多いです。正しくは:大胸筋は屈曲にも関わりますが、この代償は主に上腕二頭筋によって起こります。選びやすい理由:大胸筋も肩関節の屈曲に作用するため、混同しやすい。しかし、大胸筋の代償は水平内転要素が強くなることが多い。混同注意:肩関節の屈曲に関わる主要な筋の一つであるため、代償として誤認しやすい。
- 4. 正解。Danielsらの徒手筋力テストで肩関節屈曲の筋力レベル3を評価する際、三角筋や烏口腕筋の筋力が不十分な場合、上腕二頭筋が肘関節を屈曲させながら肩関節を屈曲させる代償運動を引き起こすことがあります。これは、上腕二頭筋が肩関節の屈曲作用も持つためです。正しくは:この代償は、上腕二頭筋が肘関節を屈曲させつつ肩関節屈曲を補助することで生じます。選びやすい理由:肘関節屈曲が同時に起こるため、肘関節の主動筋である上腕二頭筋と判断しやすい。混同注意:純粋な肩関節屈曲と、肘関節屈曲を伴う代償動作との区別が難しい場合がある。
- 5. 上腕三頭筋は肘関節の伸展が主な作用であり、肩関節の屈曲やその代償には関与しません。むしろ肩関節屈曲の拮抗筋の一つです。正しくは:上腕三頭筋は肘関節の伸展筋であり、この代償には関与しません。選びやすい理由:上腕二頭筋と並ぶ上腕の主要筋であるため、選択肢として考慮される可能性があるが、機能が逆である。混同注意:上腕の筋群であるため、上腕二頭筋と対で覚えることで、その機能も混同しやすい。
国試ポイント
徒手筋力テスト(MMT)における代償運動の理解、特に各筋の機能と複数の関節にまたがる筋の作用を正確に把握しているかどうかが問われる。肩関節屈曲の評価において、上腕二頭筋が肘関節屈曲を伴いながら代償的に働くパターンは頻出である。
混同注意
肩関節屈曲に関与する他の筋(大胸筋、棘上筋など)との機能の違い。特に大胸筋は屈曲作用があるため混同しやすいが、代償のパターンが異なる。また、上腕二頭筋の主作用が肘関節屈曲であるため、肩関節屈曲の代償筋であるという点が分かりにくい場合がある。
次に同じ論点が出たら
患者が同様の代償運動を示す場合、真の肩関節屈曲筋(三角筋、烏口腕筋など)の筋力不足を考慮し、それらの筋をターゲットとした強化運動や、代償を防ぐための指導・固定を行う必要がある。また、日常生活動作における影響を評価し、適切なリハビリテーションプログラムを立案する。
関連知識
徒手筋力テストの各段階の基準、各関節における主動筋と協同筋、代償運動の種類とそれを引き起こす筋、筋の起始・停止・作用。