対象者を現在の生活習慣から喫煙群と非喫煙群とに分け、喫煙に起因する将来の脳血管障害の発生を明らかにする疫学研究法はどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第52回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
コホート研究は、特定の要因(ここでは喫煙習慣)に曝露している集団と曝露していない集団を対象に、将来にわたって疾患の発生状況を追跡調査し、要因と疾患の因果関係やリスクを評価する観察研究です。問題文の「現在の生活習慣から喫煙群と非喫煙群とに分け、喫煙に起因する将来の脳血管障害の発生を明らかにする」という記述は、このコホート研究の定義に完全に一致しています。
選択肢ごとの解説
- 1. 横断研究は、ある一時点における疾患の有無と要因の関連性を同時に調査するものであり、将来の発症を追跡する本問題のケースには適しません。正しくは:特定の時点での有病率や要因との関連性を調べる研究。選びやすい理由:様々な疫学研究の手法の一つとして知られているため、選択肢として目につきやすい。混同注意:コホート研究が原因と結果の時間的関係を追跡するのに対し、横断研究はスナップショットのように一時点の関係を見る点で異なります。
- 2. 記述疫学研究は、疾患の発生状況(いつ、どこで、誰に)を観察・記載するもので、特定の要因と疾患の因果関係を解明する目的には不十分です。正しくは:疾患の分布や頻度を記載し、仮説の生成に役立てる研究。選びやすい理由:疫学研究の基礎的な分類であり、幅広い内容を含むため、漠然とした知識で選んでしまう可能性があります。混同注意:記述疫学は仮説を立てる段階で用いられ、因果関係の検証には分析疫学(コホート研究、症例対照研究など)が用いられます。
- 3. 正解。コホート研究は、特定の要因(ここでは喫煙)を持つ集団と持たない集団を設定し、これらを長期間にわたって追跡調査することで、将来的に発生する疾患(脳血管障害)の発症率を比較し、要因と疾患の因果関係を明らかにする手法です。問題文の記述と完全に合致します。正しくは:現在の要因曝露状況に基づいて集団を分け、未来の疾患発生を追跡調査する研究。
- 4. 症例対照研究は、すでに疾患を発症した患者(症例群)と、その疾患を発症していない対照群を比較し、過去の要因曝露状況を遡って調査するものです。問題文は未来の発症を追跡する内容なので、症例対照研究には当てはまりません。正しくは:疾患発症者と非発症者を比較し、過去の要因曝露状況を遡って調べる研究。選びやすい理由:コホート研究と同様に分析疫学研究の一つであり、要因と疾患の関連性を探る研究なので、混同しやすい。混同注意:コホート研究が「原因→結果」と時間を順方向に追うのに対し、症例対照研究は「結果→原因」と時間を逆方向に遡る点で決定的に異なります。
- 5. 無作為化比較試験(RCT)は、介入(治療法など)の効果を評価するために、対象者を無作為に複数のグループに割り付けて比較する研究です。問題文は「現在の生活習慣から」集団を分ける観察研究であり、介入を伴う試験ではないため、誤りです。正しくは:介入の効果を評価するため、対象者を無作為にグループ分けして比較する実験的な研究。選びやすい理由:エビデンスレベルが高い研究デザインとして有名であり、科学的な信頼性が高い研究法であるため、無意識に選んでしまう可能性がある。混同注意:コホート研究が観察研究であるのに対し、無作為化比較試験は介入研究(実験研究)である点が異なります。無作為化は介入研究で因果関係を強く示すために用いられます。
国試ポイント
疫学研究の基本的な種類とその特徴(特に時間軸の向き:順向きか逆向きか、介入の有無:観察研究か介入研究か)を理解しているかを問う問題です。コホート研究と症例対照研究、横断研究の違いを明確に区別できることが重要です。
混同注意
コホート研究と症例対照研究は、どちらも要因と疾患の関連性を調べる分析疫学研究ですが、時間の流れの方向性が異なります。コホート研究は原因から結果へ時間を追う順向き研究、症例対照研究は結果(疾患)から原因へ時間を遡る逆向き研究です。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出題された場合、まず「研究の時間軸(現在から未来へ追うか、過去に遡るか)」と「介入の有無(観察か介入か)」を確認して、適切な研究デザインを選択できるかどうかがポイントになります。
関連知識
疫学研究デザインの種類(記述疫学、分析疫学、介入疫学)、分析疫学研究の具体的な手法(コホート研究、症例対照研究、横断研究)、それぞれのメリット・デメリット、エビデンスレベル。