脳血管障害の患者に対する治療で適切でないのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第53回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
ボツリヌス毒素療法は、主に脳卒中後の痙縮(筋の過緊張)を緩和するために使用されます。毒素が神経筋接合部に作用し、アセチルコリンの放出を阻害することで筋肉の収縮を抑制します。弛緩性麻痺は筋緊張が低下している状態であり、この状態にボツリヌス毒素を投与すると、さらに筋力低下を助長し、機能悪化につながるため不適切です。
選択肢ごとの解説
- 1. CI療法は、脳卒中後の片麻痺患者に対して、非麻痺側の使用を制限し、麻痺側の集中的な反復練習を促すことで機能回復を目指す、科学的根拠のある治療法です。正しくは:これは適切な治療法であるため、修正の必要はありません。選びやすい理由:一般的なリハビリテーションのアプローチとして知られており、適切な選択肢に見えるため、深く考えずに選びやすいかもしれません。混同注意:他の運動療法や感覚入力による治療法と混同することがあります。
- 2. 脳卒中後の抑うつはよく見られる合併症であり、認知行動療法は、思考パターンや行動を修正することで抑うつ症状の改善を図る、有効な心理療法です。正しくは:これは適切な治療法であるため、修正の必要はありません。選びやすい理由:脳卒中後の精神的な問題に対するアプローチとして適切に見えるため、選択肢として選びやすいです。混同注意:薬物療法や他の精神療法と混同することがあります。
- 3. 正解。ボツリヌス毒素療法は、過活動な筋肉を麻痺させることで、主に痙縮(筋の過緊張)を軽減するために用いられます。弛緩性麻痺は筋緊張が低下している状態であるため、筋肉の活動をさらに抑制するボツリヌス毒素療法は不適切です。正しくは:弛緩性麻痺ではなく、痙縮を伴う麻痺に対してボツリヌス毒素療法を適用する。選びやすい理由:麻痺に対する治療法の一つとしてボツリヌス毒素療法という名前を知っていると、どんな麻痺にも効くのではないかと誤解しやすいです。混同注意:痙縮に対する治療法と弛緩性麻痺に対する治療法を混同しやすいです。また、ボツリヌス毒素が筋肉の緊張を「低下させる」作用があるため、一見弛緩性麻痺に有効に見えるかもしれませんが、これは筋力低下を助長することになります。
- 4. トレッドミル歩行練習は、安全な環境で反復的な歩行運動を可能にし、歩行能力の改善に有効なリハビリテーション手法です。脳卒中後の歩行障害に対する有効性が多くの研究で示されています。正しくは:これは適切な治療法であるため、修正の必要はありません。選びやすい理由:歩行障害に対する一般的なリハビリテーション法として認識されているため、適切な選択肢に見えます。混同注意:他の歩行練習方法(例:実用歩行訓練、免荷式歩行訓練)と混同することがあります。
- 5. プリズム適応療法は、視覚情報をずらすプリズム眼鏡を使用することで、患者の注意を無視側に向けさせ、半側空間無視の症状を一時的または持続的に改善する効果が期待される治療法です。正しくは:これは適切な治療法であるため、修正の必要はありません。選びやすい理由:半側空間無視という特殊な症状に対する具体的な治療法として、適切に見えるため選びやすいです。混同注意:他の半側空間無視の治療法(例:視覚探索訓練、肢体表象訓練)と混同することがあります。
国試ポイント
この問題は、脳血管障害後の各症状に対する治療法の適切な適用を問うものです。特に、ボツリヌス毒素療法が痙縮に対して用いられることを理解しているか、弛緩性麻痺と混同していないかがポイントになります。各治療法の適応・禁忌を正確に把握しているか、具体的な病態と治療法を結びつけて考えられるかを試す意図があります。
混同注意
ボツリヌス毒素療法が、痙縮だけでなくあらゆるタイプの麻痺、特に筋力低下を伴う弛緩性麻痺にも有効であると誤解しやすいです。また、麻痺があるから「筋緊張を緩める」という漠然としたイメージで誤って選択しがちです。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出題された場合、まず各治療法がどのような病態や症状に対して効果を発揮するのか、その作用機序まで理解しているかを確認します。特に、特定の治療法が有効な病態(例:痙縮、抑うつ)と、それに該当しない病態(例:弛緩性麻痺)を明確に区別できているかが重要になります。また、治療法の適応だけでなく、禁忌や副作用についても確認するようにします。
関連知識
脳卒中後の運動麻痺には、痙縮を伴う場合と弛緩性麻痺が持続する場合があります。痙縮の治療には、ボツリヌス毒素療法のほか、内服薬(バクロフェン、チザニジンなど)、バクロフェン髄腔内投与、神経ブロック、手術などがあります。弛緩性麻痺に対しては、筋力増強運動や電気刺激療法などが適用されます。また、認知行動療法は脳卒中後の抑うつだけでなく、不安障害や不眠症などにも有効です。