Duchenne型筋ジストロフィーのステージ5(厚生省筋萎縮症研究班の機能障害度分類による)に対する理学療法で優先度が高いのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第53回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
Duchenne型筋ジストロフィーのステージ5では、歩行不能となり、車椅子生活が中心となります。この時期には体幹筋力の低下が著しく、脊柱の側弯変形が急速に進行することが大きな問題となります。側弯は、座位バランスの悪化、疼痛、呼吸機能のさらなる低下(胸郭の変形や肺活量減少)、食事摂取困難などを引き起こし、患者のQOLを著しく低下させます。体幹装具(特にコルセットなど)を使用することで、脊柱の変形進行を抑制し、座位の安定性を保ち、結果として呼吸機能や消化器機能の維持に貢献し、QOLの改善が期待できます。そのため、このステージにおける理学療法として体幹装具の使用は極めて優先度が高いとされています。
選択肢ごとの解説
- 1. ステージ5の患者は、すでに座位が自力で保持できないか、非常に不安定な状態です。この段階で座位保持練習を優先しても効果は限定的であり、安全性の確保が困難です。正しくは:座位保持の困難さに対しては、座位保持装置や車椅子の選定、適切なポジショニングが優先されます。選びやすい理由:一般的なリハビリの項目として思いつきやすいですが、病期の進行度を考慮すると優先度は低いです。混同注意:他のステージにおけるリハビリ内容と混同しやすいです。ステージ5では、活動能力の維持よりも、安全とQOLの維持に焦点が移ります。
- 2. 正解。Duchenne型筋ジストロフィーのステージ5では、体幹筋力の低下が著しく、脊柱の変形(特に側弯)が進行しやすい時期です。体幹装具の使用は、脊柱変形の進行を抑制し、座位を安定させ、呼吸機能や食事機能の維持に寄与するため、このステージで非常に優先度の高い介入となります。選びやすい理由:装具の使用は負担を増やす側面もあるため、必要性を判断する知識が求められます。混同注意:装具は機能維持のためだけでなく、QOL向上や合併症予防の側面もあることを理解していないと選択しにくいかもしれません。
- 3. 徒手による咳嗽介助は、呼吸筋の弱化による喀痰排出困難に対して重要な介入ですが、ステージ5では呼吸筋力低下が著しく、人工呼吸器の使用が検討される段階です。この時期は呼吸器合併症予防が重要ですが、徒手介助単独では不十分な場合が多く、より包括的な呼吸管理の一部として行われます。優先順位としては、脊柱変形抑制による呼吸機能への影響軽減の方が先に来る場合が多いです。正しくは:呼吸管理全体の一環として行われます。また、脊柱変形が呼吸機能に与える影響を抑制する体幹装具の方が、長期的な視点での優先度が高いと言えます。選びやすい理由:呼吸器合併症が重篤であるため、呼吸介助自体は重要だと考えられやすいですが、ステージ5における最優先事項とは限りません。混同注意:呼吸リハビリテーションの重要性とは混同しやすいですが、この問題は「最も優先度が高いのはどれか」を問うています。呼吸管理全体の中で、体幹装具が脊柱変形抑制を通じて呼吸機能維持に果たす役割は大きいです。
- 4. Duchenne型筋ジストロフィーでは進行性筋力低下が特徴であり、ステージ5ではすでに歩行能力が失われ、下肢の筋力も著しく低下しています。この段階で下肢に抵抗を増やす運動を行うと、筋の損傷を促進したり、過負荷による疲労を招いたりするリスクが高く、筋力維持効果も期待できません。正しくは:このステージでは、関節拘縮予防のための他動運動や、残存機能に応じた軽い運動、ポジショニングが適切です。選びやすい理由:筋力低下に対する一般的なアプローチとして想起されやすいですが、筋ジストロフィーの病態生理を理解していれば不適切だと判断できます。混同注意:一般的な筋力強化訓練と、筋ジストロフィー特有の進行性筋力低下における運動療法は区別する必要があります。
- 5. ステージ5では、患者は基本的に車椅子生活であり、自力での立ち上がりは不可能です。そのため、椅子からの立ち上がり練習は、このステージの患者には適した介入ではありません。正しくは:このステージでは、介助による移乗方法の検討や、移乗用具の活用が中心となります。選びやすい理由:日常生活動作の練習として考えられやすいですが、病期の進行度を考慮する必要があります。混同注意:初期・中期ステージにおける機能維持訓練と混同しやすいです。
国試ポイント
筋ジストロフィーの機能障害度分類(特に厚生労働省研究班の分類)と、各ステージで生じる主要な問題、それに対する優先度の高い理学療法介入を理解しているかが問われる。特に進行期における合併症予防とQOL維持へのアプローチが重要となる。
混同注意
筋ジストロフィーの各ステージにおける運動療法の強度や目的、また呼吸管理や日常生活動作(ADL)への介入の優先順位と混同しやすい。進行期には、残存機能の維持よりも合併症予防やQOLの確保が主眼となる点を理解することが重要。
次に同じ論点が出たら
筋ジストロフィーの問題が出題された場合、まずDuchenne型かそれ以外かを確認し、次に機能障害度分類のどのステージに該当するかを特定する。そのステージで主に問題となる病態や合併症を想起し、それに対する最も効果的かつ優先度の高い介入を選択できるかを見る。
関連知識
Duchenne型筋ジストロフィーの機能障害度分類(ステージ1〜6)、各ステージの臨床的特徴、呼吸器合併症と呼吸管理、整形外科的合併症(側弯、関節拘縮)とその管理、車椅子シーティングとポジショニング、栄養管理、遺伝カウンセリング。