16歳の女子。バスケットボールの試合中に受傷した。同日病院を受診し、左足関節外側靱帯損傷と診断され、理学療法を行う方針となった。急性期の対応で正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第58回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
足関節外側靭帯損傷の急性期管理では、RICE処置(Rest:安静、Ice:冷却、Compression:圧迫、Elevation:挙上)が基本となります。特に、患部を安静に保ち、必要に応じて固定することで、損傷部位の負担を軽減し、早期の回復を促します。他の選択肢は、急性期に不適切な処置であり、症状の悪化を招く可能性があります。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。足関節外側靭帯損傷の急性期管理において、患部の安静と固定はRICE処置の基本原則(RestとImmobilization)であり、損傷部位のさらなる悪化を防ぎ、組織の治癒を促進するために非常に重要です。
- 2. 急性期に積極的に可動域訓練を行うと、炎症や疼痛を増悪させ、損傷した靭帯の修復を妨げたり、さらに損傷を拡大させたりする可能性があります。正しくは:急性期を過ぎ、炎症や痛みが落ち着いてから、段階的に可動域訓練を開始します。選びやすい理由:可動域の維持が重要であるという認識から選んでしまいがちですが、急性期には安静が最優先です。混同注意:亜急性期や回復期の運動療法と混同しやすいです。
- 3. 急性期には炎症反応が起こっており、入浴などの温熱刺激で血行を促進すると、血管が拡張し、腫脹や内出血を悪化させてしまうため不適切です。急性期は冷却により血行を抑制します。正しくは:受傷したその日から、炎症を抑える目的で患部を冷却し、血液循環の亢進を抑制します。選びやすい理由:血行促進は一般的に体の回復に良いというイメージがあるため、選んでしまいがちです。混同注意:慢性期の疼痛や硬結に対する温熱療法と混同しやすいです。
- 4. 鎮痛薬は疼痛管理に用いられますが、受傷翌日から試合復帰を目指すことは、組織の修復を無視した過度な活動であり、再受傷のリスクが非常に高まります。理学療法士の役割としても、安易な早期復帰を促すのは適切ではありません。正しくは:鎮痛薬は痛みを管理するために使用されることはありますが、適切な安静と段階的なリハビリテーションが完了するまでは、試合復帰は控えるべきです。選びやすい理由:痛みが軽くなればすぐに活動できると考えるため。しかし、痛みがないことと組織が完全に治癒していることは異なります。混同注意:一時的な症状緩和と根本的な治癒の優先順位を混同しやすいです。
- 5. アイシングは急性期の炎症や腫脹を抑えるために有効ですが、長時間にわたる継続的な冷却は、凍傷のリスクや組織の血流低下による回復阻害、神経損傷などを引き起こす可能性があります。通常は15~20分程度の冷却と、それと同等かやや長めの休憩を繰り返す間欠的な冷却が推奨されます。正しくは:受傷から数日間は、適切な時間(例:15〜20分)で間欠的にアイシングを行います。選びやすい理由:アイシングが急性期の治療に有効であることは事実なので、その方法に誤りがあることを見落としやすいです。混同注意:アイシングの有効性と、その適切な実施方法(時間、頻度)を混同しやすいです。
国試ポイント
この問題は、足関節外側靭帯損傷のような急性外傷における理学療法士の初期対応、特にRICE原則の理解度を問うものです。急性期と亜急性期・慢性期の治療法の違い、そして各処置の適切な実施方法(特にアイシングの時間など)を正確に把握しているかがポイントとなります。
混同注意
急性期の炎症管理における冷却と温熱の使い分け、早期の可動域訓練の是非、そしてアイシングの適切な実施時間・頻度などが混同されやすい点です。また、RICE原則は基本的な知識ですが、その具体的な適用(特にImmobilizationの重要性)を見落とすことがあります。
次に同じ論点が出たら
この患者が亜急性期に移行した場合の理学療法介入で最も適切なのはどれか、あるいは、痛みが軽減した後の可動域訓練や筋力強化訓練の開始時期と内容、テーピングや装具によるサポートについて問われる可能性があります。
関連知識
RICE原則の各要素(Rest, Ice, Compression, Elevation)の具体的な目的と方法。近年ではPOLICE原則(Protection, Optimal Loading, Ice, Compression, Elevation)も提唱されており、過度な安静だけでなく適切な負荷の導入も重視されていますが、急性期においては保護と安静が最優先されます。靭帯損傷の重症度分類(I度、II度、III度)とそれぞれの初期管理の違い。足関節周囲の解剖(外側靭帯群の構成など)。