標準予防策〈standard precautions〉において、操作の後だけに手指衛生が必要なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第53回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
標準予防策では、患者の血液、体液、分泌物、排泄物、損傷のある皮膚、粘膜を感染源とみなし、それらに触れる可能性がある場合は手指衛生が必須です。選択肢の中で、「操作の後だけ」手指衛生が必要となるのは、患者に直接触れず、しかし患者由来の微生物が付着している可能性のある環境表面(ベッド柵など)に触れた場合です。他の選択肢(気管吸引、血圧測定、脈拍測定、体温測定)は、患者に直接触れる行為であるか、体液に接触する可能性が高いため、操作の前後両方に手指衛生が必要です。ベッド柵は、患者に直接触れる前には手指衛生が不要な場合もありますが、操作後は感染源に触れた可能性を考慮し手指衛生を行います。
選択肢ごとの解説
- 1. 気管吸引は、患者の体液(唾液、痰など)との接触リスクが非常に高く、操作の前後両方に手指衛生が必要です。特に、吸引チューブや吸引装置に触れる前と、吸引後に患者や環境に触れる前には必ず実施します。正しくは:気管吸引では、操作の前後両方に手指衛生が必要です。選びやすい理由:体液接触の危険性が高いため、手指衛生の重要性は理解しやすいが、「操作の後だけ」という条件を見落としやすい。混同注意:操作後の手指衛生は当然必要であるため、誤って正しいと判断してしまう可能性がある。しかし、この問題は「後だけ」という限定的な条件を問うている点に注意が必要です。
- 2. 血圧測定は、通常、患者の皮膚に直接接触するため、操作の前後両方に手指衛生を行うのが原則です。特に、測定前に患者に触れる前と、測定後に患者周辺の環境に触れる前には重要です。正しくは:血圧測定では、操作の前後両方に手指衛生が必要です。選びやすい理由:一般的な医療行為であり、患者との直接的な体液接触がないため、後だけの手指衛生で十分だと錯覚する可能性がある。混同注意:非侵襲的な検査であるため、前後両方の必要性を軽視しがちですが、患者の皮膚に直接触れる行為であるため、前後両方の手指衛生が求められます。
- 3. 脈拍測定も、患者の皮膚に直接触れる行為であるため、標準予防策に基づき操作の前後両方に手指衛生を行う必要があります。測定前に患者の皮膚に触れる前と、測定後に他の場所や物品に触れる前に実施します。正しくは:脈拍測定では、操作の前後両方に手指衛生が必要です。選びやすい理由:血圧測定と同様に、患者との直接的な体液接触がないため、「後だけ」で良いと誤解しやすい。混同注意:患者の皮膚に直接触れる行為であるため、前後両方の手指衛生が必要ですが、感覚的に「簡単な行為」と捉えられ、後だけの手指衛生で済ませてしまう可能性があります。
- 4. 体温測定も、通常は患者の皮膚に直接触れるか、体温計が患者の体表面に接触するため、標準予防策では操作の前後両方に手指衛生が推奨されます。特に、測定前に患者に触れる前と、測定後に使用した器具や患者周辺に触れる前には行います。正しくは:体温測定では、操作の前後両方に手指衛生が必要です。選びやすい理由:非侵襲的であり、感染リスクが低いと感じられるため、後だけの手指衛生で済ませて良いと誤って判断しやすい。混同注意:患者に直接触れる、または患者の体液と接触する可能性のある器具を扱う行為であるため、前後両方の手指衛生が必要です。体温計の種類によっては消毒が重要ですが、手指衛生は別問題です。
- 5. 正解。ベッド柵は患者の周囲環境であり、患者の体液や微生物が付着している可能性があります。そのため、ベッド柵を操作した後に手指衛生を行うことで、医療従事者の手指を介した微生物の伝播を防ぎます。操作前は、他の清潔な行為を行う前であれば不要です。選びやすい理由:患者に直接触れないため、手指衛生自体が不要だと考えてしまう可能性がある。しかし、環境表面は重要な感染源となりうるため、操作後の手指衛生は必須です。混同注意:患者に直接触れない環境表面の操作であるため、手指衛生の必要性自体を疑問に思うことがあるが、環境を介した接触感染の予防のために重要である。
国試ポイント
標準予防策における手指衛生のタイミングと対象についての理解が問われています。特に、患者に直接触れる行為と環境表面に触れる行為の違い、そして「操作の後だけ」という限定的な条件を正確に判断できるかどうかが重要です。
混同注意
患者に直接触れる行為(血圧測定、脈拍測定など)は、「後だけ」ではなく「前後両方」の手指衛生が必要であるため、この点が混同されやすいです。また、ベッド柵のような環境表面の操作に対する手指衛生の必要性を認識していないと誤答につながります。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、各行為が「患者への直接的な接触を伴うか(体液・皮膚・粘膜)」「体液曝露のリスクがあるか」「単なる環境表面との接触か」を区別し、「前後両方の手指衛生が必要なケース」と「操作後だけ必要なケース」を明確に判断できるかが鍵となります。
関連知識
手指衛生の5つのタイミング(WHOガイドライン):①患者に触れる前、②清潔/無菌操作の前、③体液曝露リスクの後、④患者に触れた後、⑤患者周辺の環境に触れた後。この問題は主に⑤の状況に関連しています。