正常歩行周期で膝関節伸展モーメントが最も作用するのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第60回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
正常歩行の荷重応答期では、足部が接地し、体重が下肢全体にかかります。この時、床反力作用線は膝関節の中心よりやや前方を通るため、膝関節には伸展モーメントが最大で作用します。これは膝が急激に屈曲しすぎるのを防ぎ、同時に膝の過伸展を抑制し、下肢の安定性を保つために重要です。この時期の膝関節の動きは、わずかな屈曲から再び伸展方向へ向かうフェーズであり、床反力による伸展モーメントが関節を安定させる役割を担います。
選択肢ごとの解説
- 1. 初期接地(イニシャルコンタクト)では、膝関節はわずかに屈曲しており、まだ伸展モーメントが最大になる時期ではありません。正しくは:初期接地では、一般的に足部が地面に接触し、体重が乗り始めるところです。選びやすい理由:歩行開始時に膝が伸びるイメージがあるため、伸展モーメントが作用すると感じるかもしれませんが、最大ではありません。混同注意:初期接地での膝関節の動きと、その後の荷重応答期の動きを混同しやすいです。
- 2. 正解。荷重応答期(ローディングレスポンス)では、体重が下肢に完全に乗り、床反力作用線が膝関節の前方を通ることで、膝関節に強い伸展モーメントが作用します。これにより膝の過伸展を防ぎつつ、安定した支持を確保します。選びやすい理由:この時期に膝がわずかに屈曲することで衝撃吸収が行われるため、伸展モーメントではなく屈曲モーメントが強く働くように感じるかもしれませんが、実際には過度な屈曲を防ぐための伸展モーメントが最大となります。
- 3. 立脚終期(ターミナルスタンス)では、重心は支持脚の前方へ移動し、股関節の伸展が最大になり、膝関節は完全に伸展位に近づいています。この時期には推進力が中心であり、伸展モーメントは最大ではありません。正しくは:この時期には推進力が主な役割であり、膝関節の伸展モーメントは荷重応答期ほど強くありません。選びやすい理由:膝が完全に伸びる時期であるため、伸展モーメントが最大だと誤解しやすいです。しかし、最大モーメントは床反力作用線の位置とレバーアームの長さによって決まります。混同注意:膝が最大伸展位に近づく時期と、伸展モーメントが最大に作用する時期を混同しやすいです。
- 4. 前遊脚期(プレスウィング)では、膝関節は屈曲を開始し、足部が地面から離れる準備をしています。伸展モーメントが作用する時期ではありません。正しくは:前遊脚期では、次の遊脚相へ移行するため、膝関節は屈曲が始まります。選びやすい理由:立脚相から遊脚相への移行期であり、複雑な動きがあるため、判断を誤ることがあります。混同注意:推進力の発生と、それに伴う関節モーメントの関連性を混同しやすいです。
- 5. 遊脚中期(ミッドスウィング)では、遊脚肢が振り出され、膝関節は伸展していく過程にありますが、荷重応答期のような強い伸展モーメントは作用しません。主な目的はクリアランスの確保と次の接地への準備です。正しくは:遊脚中期は、下肢を前方に振り出す段階であり、クリアランスを確保しながら次の接地に向けて準備をしています。選びやすい理由:遊脚相で膝が伸びるため、伸展モーメントが作用すると考えるかもしれませんが、これは重力と筋活動によるもので、床反力による大きなモーメントではありません。混同注意:遊脚相での膝の伸展運動と、立脚相での床反力による伸展モーメントの作用を混同しやすいです。
国試ポイント
歩行周期における各関節の運動学的・運動力学的特徴、特に床反力作用線と関節モーメントの関係を理解しているかが問われます。どの時期にどの関節にどのようなモーメントが最大で作用するかを正確に把握することが重要です。
混同注意
膝関節の最大伸展位を示す時期(立脚終期)と、伸展モーメントが最大で作用する時期(荷重応答期)を混同しやすいです。伸展位=最大伸展モーメントとは限りません。また、膝の屈曲が起こる時期に伸展モーメントが働くという逆説的な状況が理解を難しくします。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出た場合、まず「最大で作用するモーメント」が問われていることを認識し、単なる「関節角度の変化」や「最終的な肢位」ではなく、「床反力作用線と関節中心の関係」を考慮して判断することが求められます。他の主要関節(股関節、足関節)における最大モーメント時期も押さえておく必要があります。
関連知識
歩行周期のフェーズ(立脚相、遊脚相)、各フェーズにおける関節運動(角度変化)、床反力作用線とモーメントアームの関係、主な筋活動、衝撃吸収と推進力のメカニズム。