ゲル濾過クロマトグラフィで溶出の順番が最も遅いリポ蛋白はどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第72回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
ゲル濾過クロマトグラフィは、分子の大きさ(分子量)に基づいて物質を分離する手法です。多孔質のゲル粒子が充填されたカラムを溶媒が流れる際、分子量の大きい物質はゲル粒子の細孔に入り込めず、比較的直線的に速くカラムを通過します。一方、分子量の小さい物質は細孔に入り込み、複雑な経路をたどるため、カラム内での滞留時間が長くなり、溶出が遅くなります。リポ蛋白は、その比重によって分類されますが、この比重と分子の大きさには逆相関があります。すなわち、比重が小さいほど分子は大きく(カイロミクロン、VLDLなど)、比重が大きいほど分子は小さくなります(HDL)。したがって、最も比重の大きい高比重リポ蛋白(HDL)が、リポ蛋白の中で最も分子が小さいため、ゲル濾過クロマトグラフィでは最も遅く溶出することになります。リポ蛋白のサイズの一般的な順序は、カイロミクロン > VLDL > IDL > LDL > HDL です。
選択肢ごとの解説
- 1. カイロミクロンはリポ蛋白の中で最も大きく、ゲル濾過クロマトグラフィでは最も早く溶出します。正しくは:ゲル濾過クロマトグラフィでは、分子量の大きいリポ蛋白ほど早く溶出します。選びやすい理由:リポ蛋白の種類として最初に覚えることが多いですが、そのサイズ(分子量)は非常に大きいことを理解していないと誤る可能性があります。混同注意:「最も」という言葉から、何らかの極端な性質を持つリポ蛋白を選ぶことを意識するが、それが「最も大きい」と「最も小さい」のどちらを指すのか混同しやすい。
- 2. 正解。ゲル濾過クロマトグラフィは分子の大きさに応じて分離を行う方法です。リポ蛋白の中で高比重リポ蛋白(HDL)は最も小さいため、カラム内で長く留まり、最後に溶出します。
- 3. IDLはVLDLとLDLの間に位置するサイズのリポ蛋白です。HDLよりは大きく、VLDLやカイロミクロンよりは小さいため、最後に溶出することはありません。正しくは:ゲル濾過クロマトグラフィにおいて、IDLはHDLより早く溶出します。選びやすい理由:リポ蛋白のサイズ順を正確に把握していない場合、中間的な存在であるため選んでしまう可能性があります。混同注意:VLDL、LDLとのサイズの比較を混同しやすい。
- 4. LDLはHDLよりも大きく、VLDLやカイロミクロンよりは小さいリポ蛋白です。ゲル濾過クロマトグラフィではHDLよりも早く溶出します。正しくは:ゲル濾過クロマトグラフィにおいて、LDLはHDLより早く溶出します。選びやすい理由:LDLは臨床上重要なリポ蛋白であるため、目につきやすい選択肢ですが、サイズとしてはHDLより大きいです。混同注意:各リポ蛋白の相対的なサイズ関係を正確に覚えていないと、誤って選択してしまう可能性があります。
- 5. VLDLはカイロミクロンの次に大きく、LDL、IDL、HDLよりも大きなリポ蛋白です。ゲル濾過クロマトグラフィでは早く溶出します。正しくは:ゲル濾過クロマトグラフィにおいて、VLDLはHDLよりもかなり早く溶出します。選びやすい理由:VLDLも一般的なリポ蛋白ですが、サイズは大きい部類に入ります。混同注意:「超低比重」という名称から、何らかの極端な性質を持つリポ蛋白であるという印象を受けるが、それが「サイズが非常に大きい」ことを意味することを認識していないと混同しやすい。
国試ポイント
ゲル濾過クロマトグラフィの原理(分子量による分離)と、主要なリポ蛋白の相対的なサイズ(分子量または比重)の関係を正確に理解しているかを問う問題です。特に「溶出が遅い=分子が小さい」という関係性を把握できているかが重要です。リポ蛋白の種類ごとの物理化学的性質(比重、粒子径、構成成分)は頻出テーマです。
混同注意
比重とサイズの概念を混同しやすいです。比重が「高」いリポ蛋白(HDL)は、粒子径が「小」さいことを意味します。また、クロマトグラフィの種類によって分離原理が異なるため、イオン交換クロマトグラフィやアフィニティークロマトグラフィなど、他の分離手法とゲル濾過クロマトグラフィの原理を混同しないように注意が必要です。
次に同じ論点が出たら
次に同様の論点が出題された場合、ゲル濾過クロマトグラフィで「最も早く溶出するリポ蛋白はどれか」、あるいは超遠心法や電気泳動法など「他の分離方法におけるリポ蛋白の分離順序」を問われる可能性があります。また、それぞれのリポ蛋白の主要なアポ蛋白や脂質構成成分、あるいは代謝経路における役割など、より詳細な知識が問われることも考えられます。
関連知識
リポ蛋白は、カイロミクロン、VLDL、IDL、LDL、HDLの5種類に大別され、それぞれ主な輸送脂質や生理的役割が異なります。それぞれのリポ蛋白の主な機能(例:カイロミクロンは食事由来トリグリセリド輸送、VLDLは肝臓合成トリグリセリド輸送、LDLはコレステロールを末梢組織へ輸送、HDLはコレステロールを肝臓へ回収)や主要なアポ蛋白(例:カイロミクロンにB-48、VLDL・LDLにB-100、HDLにA-I, C, E)についても関連付けて学習すると良いでしょう。また、リポ蛋白の分離には超遠心法や電気泳動法も用いられますが、それぞれの分離原理も理解しておくことが重要です。