ATP産生に関与しないのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第72回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
尿素サイクルは、タンパク質代謝で発生する有害なアンモニアを解毒し、尿素として体外へ排出する重要な代謝経路です。しかし、このサイクルはATPを産生するのではなく、むしろその過程でATP(カルバモイルリン酸合成反応などで)を消費します。一方、β酸化、嫌気的解糖、電子伝達系、クエン酸回路は、それぞれ異なる形でATPを産生するか、ATP産生に不可欠なNADHやFADH2を生成することで、ATP産生に直接的または間接的に深く関与しています。
選択肢ごとの解説
- 1. 脂肪酸のβ酸化は、脂肪酸を分解してアセチルCoA、NADH、FADH2を生成します。これらのNADHとFADH2は、その後の電子伝達系で大量のATPが産生されるための重要な供給源となるため、ATP産生に間接的に深く関与しています。選びやすい理由:脂肪酸代謝の詳細は複雑で、ATP産生への直接的な関与が見えにくいため、関与しないと誤解されることがあります。混同注意:ATPを消費する他の同化経路(例:脂肪酸合成)や、尿素サイクルなどATPを消費する異化経路。
- 2. 嫌気的解糖は、酸素が不足している状況下でグルコースを分解し、乳酸を生成しながら、基質レベルのリン酸化によって少量のATP(正味2分子)を直接産生します。これはATP産生に関わる経路です。選びやすい理由:好気的解糖や電子伝達系に比べて産生されるATP量が少ないため、ATP産生に関わらないと誤って判断される可能性があります。混同注意:好気的解糖やクエン酸回路といった、より効率的にATPを産生する経路。
- 3. 電子伝達系は、NADHとFADH2から電子を受け取り、そのエネルギーを利用してプロトン勾配を形成し、この勾配を駆動力としてATP合成酵素が大量のATPを合成します。これは生体内で最も効率的なATP産生経路であり、主要な関与経路です。選びやすい理由:なし、これはATP産生の主要経路として広く認識されています。混同注意:NADHやFADH2を供給するクエン酸回路や解糖系。
- 4. クエン酸回路は、アセチルCoAを完全に酸化し、多くのNADHとFADH2を生成します。これらのNADHとFADH2は電子伝達系へ送られ、そこで大量のATP産生に貢献します。また、回路中に1分子のGTP(ATPと等価)を基質レベルのリン酸化により直接産生します。選びやすい理由:直接的なATP産生量(GTPとして1分子)が少ないため、その役割を過小評価し、ATP産生に大きく関わらないと誤解されることがあります。混同注意:解糖系やβ酸化など、クエン酸回路にアセチルCoAを供給する代謝経路。
- 5. 正解。尿素サイクルは、アミノ酸の分解によって生じる有毒なアンモニアを、無毒な尿素に変換して体外に排出するための解毒経路です。このサイクル自体はATPを産生せず、むしろカルバモイルリン酸の合成など、複数のステップでATPを消費します。選びやすい理由:尿素の生成という重要な生理機能を持つため、エネルギー代謝と何らかの形で関係しているように見え、ATPを産生すると誤解されることがあります。混同注意:クエン酸回路(一部の代謝中間体が共通するため)や、エネルギー代謝に関わる他の経路全般。特に、糖新生のようなATPを消費するが生命維持に不可欠な他の経路。
国試ポイント
主要な代謝経路の機能と、それがATPを「産生する」のか「消費する」のか、または「全く関与しない」のかを正確に区別できるかを問う問題です。特に、異化経路に見えてもATPを消費する経路(尿素サイクル、糖新生など)の知識が重要になります。
混同注意
代謝経路の名称が似ているものや、ATPを消費するがエネルギー代謝に関連する経路(例:糖新生)と混同しやすいです。また、間接的なATP産生(NADH/FADH2の生成)と直接的なATP産生(基質レベルのリン酸化)の区別が曖昧だと迷う可能性があります。
次に同じ論点が出たら
次に同じ論点の問題が出題された場合、単に経路名だけでなく、その経路が「ATPを生成するかどうか(そしてそのメカニズム)」「ATPを消費するかどうか」を正確に判断できるかが問われるでしょう。特に、一見エネルギー産生に関与しそうな経路でも実際にはATPを消費するもの(例:糖新生、尿素サイクル)に注目する必要があります。
関連知識
解糖系(好気・嫌気)、クエン酸回路、電子伝達系、β酸化、糖新生、アミノ酸代謝、脂肪酸合成など、主要な代謝経路の全体像と、それぞれの経路でのエネルギー収支(ATPの産生または消費)に関する知識が問われます。各経路の細胞内局在や主要酵素についても関連知識として理解しておくことが重要です。