ホルマリン固定パラフィン包埋標本を用いた酵素抗体法の内因性ペルオキシダーゼをブロックする試薬はどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第72回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
ホルマリン固定パラフィン包埋標本を用いた酵素抗体法(免疫組織化学)において、組織中に存在する内因性ペルオキシダーゼ(例:赤血球や好中球)が、外来性の酵素標識抗体と反応して発色基質を分解し、非特異的な染色を引き起こすことがあります。これを防ぐため、過酸化水素とメタノールを混合した溶液を用いて、この内因性ペルオキシダーゼを不活性化する(ブロックする)前処理が必要です。過酸化水素が酵素を失活させ、メタノールが組織への浸透を助けます。
選択肢ごとの解説
- 1. EDTAはキレート剤であり、カルシウムイオンの除去(脱灰)や、抗原賦活化の一部(金属イオンに依存する抗原の復元など)に使用されることがありますが、内因性ペルオキシダーゼの活性を直接阻害する作用はありません。正しくは:内因性ペルオキシダーゼのブロックには使用されません。選びやすい理由:生化学検査や病理組織学の他のプロセスで頻繁に用いられる試薬であるため、何らかのブロック作用があると誤解される可能性があります。混同注意:抗原賦活化(特に熱誘導性抗原賦活化、HIER)に用いられるEDTAバッファーと混同されることがあります。
- 2. カゼイン溶液は、非特異的な抗体結合を抑制するためのブロッキング剤として用いられます。これは抗体と組織成分の間の物理的な結合を防ぐもので、組織が持つ酵素活性自体を阻害するものではありません。正しくは:非特異的な抗体結合のブロックには有効ですが、内因性ペルオキシダーゼのブロックには使用されません。選びやすい理由:「ブロッキング」という共通の目的があるため、ペルオキシダーゼのブロッキングと混同しやすいです。混同注意:BSA(ウシ血清アルブミン)やスキムミルク、正常動物血清など、他の非特異的結合阻害剤と混同されることがあります。
- 3. 正常動物血清もカゼイン溶液と同様に、一次抗体や二次抗体が標的以外の部位に非特異的に結合するのを防ぐために使用されるブロッキング剤です。内因性酵素の活性を阻害する目的ではありません。正しくは:非特異的な抗体結合のブロックには有効ですが、内因性ペルオキシダーゼのブロックには使用されません。選びやすい理由:免疫組織化学において「ブロッキング」ステップでよく使用されるため、目的を間違えて選択しがちです。混同注意:カゼイン溶液やBSAなど、他の非特異的結合阻害剤と混同されることがあります。
- 4. クエン酸緩衝液は、特にホルマリン固定された組織における抗原賦活化(熱誘導性抗原賦活化、HIER)の際に用いられる主要な試薬の一つです。ホルマリン架橋によってマスクされた抗原エピトープを露出させる目的で、加温処理と共に使用されます。酵素活性の阻害作用はありません。正しくは:抗原賦活化には有効ですが、内因性ペルオキシダーゼのブロックには使用されません。選びやすい理由:酵素抗体法の手順の中で頻繁に使用される重要な試薬であるため、その機能が混同されやすいです。混同注意:EDTA緩衝液やTris-EDTA緩衝液など、他の抗原賦活化液と混同されることがあります。
- 5. 正解。ホルマリン固定パラフィン包埋標本を用いた酵素抗体法では、赤血球や好中球などに存在する内因性のペルオキシダーゼが、酵素抗体反応の最終発色基質と反応し、非特異的な染色(偽陽性)を引き起こす可能性があります。過酸化水素(H₂O₂)はペルオキシダーゼを不活性化し、メタノールはその組織浸透性を高めるため、この混合液は内因性ペルオキシダーゼの活性を効果的にブロックするために広く用いられます。これにより、目的とする抗原部位のみが特異的に染色されるようになります。
国試ポイント
免疫組織化学における様々な前処理(固定、脱パラフィン、抗原賦活化、ブロッキング)の目的と使用される具体的な試薬を正確に理解しているかが問われます。特に「内因性酵素のブロッキング」と「非特異的結合のブロッキング」の区別が重要です。
混同注意
非特異的結合を阻害する「ブロッキング剤」(例:カゼイン溶液、正常動物血清)と、内因性酵素活性を阻害する「ブロッキング剤」(過酸化水素加メタノール)との違いを混同しやすいです。両者は目的が異なります。
次に同じ論点が出たら
同様の論点が問われた場合、酵素抗体法における各ステップ(固定、抗原賦活化、内因性酵素ブロック、非特異的結合ブロック、発色など)の目的と、それに使用される代表的な試薬の組み合わせが適切であるかを確認します。
関連知識
免疫組織化学の手順全体(脱パラフィン・水和→抗原賦活化→内因性酵素ブロッキング→非特異的結合ブロッキング→一次抗体反応→二次抗体反応→発色反応→対比染色→封入)と、各ステップの目的および使用試薬を理解しておく必要があります。特に抗原賦活化の種類(熱誘導性HIERと酵素消化)と、その際に使用されるバッファー(クエン酸緩衝液、EDTA緩衝液など)も重要な関連知識です。