走査型電子顕微鏡標本の作製工程に含まれないのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第71回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
走査型電子顕微鏡(SEM)は、試料の表面構造を観察する装置であり、電子線を透過させる必要がないため、超薄切片を作製する工程は通常含まれません。超薄切は主に透過型電子顕微鏡(TEM)で、試料を電子が透過できるようにするために行われる工程です。その他の選択肢は、SEM標本の固定、導電性付与、コントラスト向上といった目的で実施される一般的な工程です。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。走査型電子顕微鏡(SEM)は試料表面の微細構造を観察するものであり、電子線を透過させる必要がないため、試料を透過させるための超薄切片を作製する工程は含まれません。超薄切は主に透過型電子顕微鏡(TEM)で電子を透過させるために行われます。
- 2. 走査型電子顕微鏡(SEM)で非導電性試料を観察する際には、試料表面に導電性を持たせ、チャージアップを防ぎ、二次電子放出効率を高めるために、金や白金などの金属を蒸着(スパッタコーティング)する工程は必須です。正しくは:SEM標本作製において、金属蒸着は重要な工程であるため、「含まれる」が正しい。選びやすい理由:光学顕微鏡や一部の透過型電子顕微鏡(TEM)標本の作製工程とは大きく異なるため、顕微鏡の準備工程として直接イメージしにくい、あるいは他の顕微鏡の工程と混同する可能性があります。混同注意:金属蒸着は、導電性付与というSEM特有の目的を持つため、他の固定や脱水といった共通工程と異なり、どの顕微鏡で必要か混同しやすいです。
- 3. タンニン酸処理は、固定後の試料に施されることがあり、重金属(オスミウムなど)との結合を促進することで電子密度を高め、金属蒸着の膜をよりしっかりと吸着させたり、細胞構造のコントラストを向上させたりする目的で行われます。SEMの観察に適した試料とするための工程の一つです。正しくは:タンニン酸処理はSEM標本作製において、コントラスト向上や蒸着膜の吸着性向上に寄与する工程であるため、「含まれる」が正しい。選びやすい理由:固定や脱水といった主要な工程に比べると、補助的な処理に感じられ、あまり重要ではない、あるいは省略可能な工程と誤解するかもしれません。混同注意:これは、特定の細胞内構造を強調するための染色と混同されることがありますが、SEMでは主に導電性や表面情報を改善するために利用されます。
- 4. オスミウム酸(四酸化オスミウム)は、グルタルアルデヒドによる一次固定の後、脂質を固定し、コントラストを向上させるために行われる二次固定剤として、走査型電子顕微鏡(SEM)を含む電子顕微鏡標本作製で広く用いられます。正しくは:オスミウム酸固定はSEM標本作製において、二次固定として重要な工程であるため、「含まれる」が正しい。選びやすい理由:主固定液であるグルタルアルデヒドに対し、二次固定液であるオスミウム酸の役割を忘れていると、必須ではないと判断してしまうかもしれません。混同注意:光学顕微鏡の固定液と混同し、電子顕微鏡特有の固定液としての重要性を見落とすかもしれません。また、一次固定と二次固定の役割が不明確だと混同しやすいです。
- 5. グルタルアルデヒドは、走査型電子顕微鏡(SEM)を含む電子顕微鏡観察用の試料において、タンパク質を架橋し、細胞構造を安定させるための主要な固定剤(一次固定)として非常に頻繁に用いられます。正しくは:グルタルアルデヒド固定はSEM標本作製において、一次固定として極めて重要な工程であるため、「含まれる」が正しい。選びやすい理由:固定剤の種類が多いため、どれがSEMで使われるか記憶が曖昧だと迷う可能性があります。複数の固定液が存在するため、どれが必須か判断に迷うかもしれません。混同注意:透過型電子顕微鏡(TEM)の固定液と混同しやすいですが、両方の電子顕微鏡で共通して重要な固定剤です。
国試ポイント
電子顕微鏡の種類(TEMとSEM)ごとの標本作製プロセスにおける特徴的な違い、特に固定、脱水、乾燥、導電性付与(金属蒸着)、そして切片作製の有無について正確な知識が問われています。それぞれの工程の目的と、それがどの種類の顕微鏡に適用されるかを理解しているかが重要です。
混同注意
透過型電子顕微鏡(TEM)と走査型電子顕微鏡(SEM)の標本作製手順。特に、超薄切の必要性、使用する固定液の種類(グルタルアルデヒド、オスミウム酸は共通)、そしてSEM特有の金属蒸着処理が混同されやすい点です。
次に同じ論点が出たら
次回この論点が出題された場合、TEM標本作製で「含まれない工程」や、特定の工程(例:臨界点乾燥)がどの電子顕微鏡で用いられるか、またその目的を問う問題が予想されます。各工程の目的を理解しているかが鍵となります。
関連知識
TEM標本作製:固定(グルタルアルデヒド→オスミウム酸)、脱水、包埋、超薄切、染色(ウラン酢酸、クエン酸鉛)。SEM標本作製:固定(グルタルアルデヒド→オスミウム酸)、脱水、乾燥(臨界点乾燥、凍結乾燥)、金属蒸着。それぞれの顕微鏡の観察原理(TEMは透過像、SEMは表面像)と、それが標本作製にどう影響するか。