抗体のがん抗原結合部分とT細胞刺激伝達分子を融合させたキメラ抗原受容体でがん細胞を攻撃する治療法はどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第72回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
設問は、キメラ抗原受容体(CAR)の具体的な構成要素(抗体のがん抗原結合部分とT細胞刺激伝達分子の融合)とその作用機序(T細胞によるがん細胞攻撃)を詳細に説明しており、これはまさにCAR-T療法(Chimeric Antigen Receptor T-cell therapy)の定義そのものです。他の選択肢は、アレルギー治療、一般的な抗体治療、広義のがん治療、または炎症性疾患治療であり、設問の記述とは合致しません。
選択肢ごとの解説
- 1. この治療法は、アレルギー反応の原因となるアレルゲンを少量ずつ体内に繰り返し投与することで、そのアレルギー反応を徐々に弱めていく目的で行われるもので、がん治療とは異なります。正しくは:アレルギー疾患に対する免疫療法の一つです。選びやすい理由:免疫系に関わる治療法であるため、一部の学生は広い意味で免疫療法と関連付けて誤解する可能性がありますが、作用機序は全く異なります。混同注意:特異的なアレルギー反応の抑制を目指すものであり、がん細胞を直接攻撃するCAR-T療法とは混同しません。
- 2. 正解。設問で説明されている「抗体のがん抗原結合部分とT細胞刺激伝達分子を融合させたキメラ抗原受容体(CAR)をT細胞に導入し、がん細胞を標的として攻撃させる」治療法の正確な名称が、キメラ抗原受容体T細胞療法(Chimeric Antigen Receptor T-cell therapy)、略してCAR-T療法です。
- 3. この療法は、ウイルスや毒素などの特定の標的に対する抗体(中和抗体)を患者に投与し、その標的の生物活性や病原性を直接阻害することで病気を治療するものです。がん細胞を標的とする場合もありますが、T細胞にCARを導入するという機序ではありません。正しくは:特定の病原体や毒素、あるいはがん関連分子の作用を直接阻害する抗体を用いた治療法です。選びやすい理由:「抗体」という言葉が含まれるため、免疫を利用したがん治療の一種と捉え、選択肢として魅力を感じるかもしれませんが、T細胞を操作する点が異なります。混同注意:抗体医薬の一種ですが、T細胞を遺伝子改変して治療に用いるCAR-T療法とは作用機序が大きく異なります。
- 4. 分子標的療法は、がん細胞の増殖や生存に必要な特定の分子(タンパク質や遺伝子)の働きだけを選択的に阻害することで、副作用を抑えつつがんを治療する広範な治療法の総称です。CAR-T療法も広義には分子標的療法の一つと言えますが、設問は「キメラ抗原受容体」を用いた具体的な技術を問うており、より限定された具体的な名称が求められています。正しくは:がん細胞の特定の分子を標的にして、その機能を阻害する治療法全般を指します。選びやすい理由:CAR-T療法もがん細胞の特定の分子を「標的」とするため、「分子標的療法」という言葉に引きつけられやすいですが、設問はCAR-Tという具体的な治療法自体の説明をしているため、より具体的な名称を選ぶ必要があります。混同注意:CAR-T療法は分子標的療法の一種ですが、問題文が具体的な「キメラ抗原受容体」の仕組みに言及しているため、より具体的なCAR-T療法が正解となります。広い概念と具体的な技術を混同しないよう注意が必要です。
- 5. この療法は、副腎皮質ステロイド薬を短期間に大量に点滴投与する治療法で、主に自己免疫疾患や重症の炎症性疾患の急性期治療に用いられます。がん細胞を直接攻撃する治療法ではありません。正しくは:自己免疫疾患や炎症性疾患の急性期に、ステロイド薬を大量に投与する治療法です。選びやすい理由:医療現場で広く使われる治療法の一つですが、がん治療、特に免疫細胞を操作する治療とは全く関係ありません。混同注意:がん治療、特に免疫療法とは作用機序も対象疾患も全く異なるため、混同することは少ないでしょう。
国試ポイント
CAR-T療法は近年の注目すべきがん免疫療法であり、その基本原理と名称を正確に理解しているかが問われています。特に「キメラ抗原受容体(CAR)」の構成要素(抗原認識部位とT細胞活性化シグナル)とその機能(T細胞によるがん細胞標的攻撃)を結びつけられるかが重要です。広義の「分子標的療法」と、より具体的な「CAR-T療法」の違いも問われるポイントです。
混同注意
「分子標的療法」が最も混同しやすい選択肢です。CAR-T療法もがん細胞の特定の分子を標的にするため、広義では分子標的療法に含まれますが、設問がキメラ抗原受容体という具体的な技術に言及している場合は、より正確な「CAR-T療法」が正解となります。また、他の免疫療法(中和抗体療法など)との区別も重要です。
次に同じ論点が出たら
次に同様の論点が出題された場合、CARの具体的な構造(例:〇〇鎖と〇〇鎖の融合、共刺激分子の役割)や、CAR-T療法の対象疾患(例:B細胞性白血病・リンパ腫)、あるいは副作用の種類とその対処法が問われる可能性があります。また、他の先進的な細胞・遺伝子治療との比較問題も考えられます。
関連知識
がん免疫療法(免疫チェックポイント阻害剤、TIL療法など)、抗体医薬の種類とその作用機序、T細胞の活性化メカニズム、遺伝子治療の基礎知識、白血病やリンパ腫などの血液がんにおけるCAR-T療法の適用、副作用(サイトカイン放出症候群、神経毒性)とその管理についても理解しておく必要があります。