分子標的薬投与の決定にHER2を用いるのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第65回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
HER2(Human Epidermal growth factor Receptor 2)は、上皮成長因子受容体ファミリーの一員であるチロシンキナーゼ型受容体です。このHER2遺伝子の増幅またはタンパクの過剰発現は、乳癌の約15-20%に見られ、がん細胞の増殖や転移を促進します。HER2陽性乳癌に対しては、トラスツズマブ(ハーセプチン)やペルツズマブ、ラパチニブなどのHER2を標的とする分子標的薬が非常に有効であり、予後を改善することが示されています。このため、乳癌の治療方針を決定する上でHER2の状態は必須の検査項目となっています。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。乳癌において、HER2遺伝子の増幅やHER2タンパクの過剰発現が認められる場合、トラスツズマブ(ハーセプチン)などのHER2を標的とする薬剤が非常に有効です。これは、HER2が乳癌細胞の増殖に関わる重要な受容体であるためです。
- 2. 大腸癌の分子標的治療には、EGFRやVEGFに対する薬剤が用いられます。HER2増幅は一部の大腸癌にも見られますが、現在のところ乳癌ほどHER2標的薬が広く標準治療として確立されているわけではありません。正しくは:大腸癌では、RAS遺伝子変異やBRAF遺伝子変異、MSI-H/dMMRなどが分子標的治療薬選択の主要なバイオマーカーとなります。特に抗EGFR抗体薬(セツキシマブ、パニツムマブ)ではRAS野生型が適応です。選びやすい理由:様々な癌で分子標的薬が使われるため、HER2の関連性があるかのように感じることがあるかもしれません。混同注意:他の消化器癌(胃癌など)でもHER2が使われるため、混同しやすいかもしれません。
- 3. 悪性黒色腫の分子標的治療では、BRAF遺伝子変異やKIT遺伝子変異が主要なターゲットとなります。特にBRAF V600E変異陽性の場合にBRAF阻害薬やMEK阻害薬が有効です。正しくは:悪性黒色腫の分子標的治療薬選択では、BRAF遺伝子変異の有無が最も重要です。選びやすい理由:皮膚癌であるため、比較的表面で観察しやすい病変であり、何らかの分子標的があると考えられがちです。混同注意:BRAF遺伝子変異をターゲットとする他の癌種(甲状腺癌など)と混同することがあります。
- 4. 非小細胞肺癌の分子標的治療では、EGFR遺伝子変異、ALK融合遺伝子、ROS1融合遺伝子、BRAF遺伝子変異などが主要なターゲットとなります。HER2変異も報告はありますが、乳癌のようにHER2標的薬が確立された治療として広く用いられているわけではありません。正しくは:非小細胞肺癌の分子標的治療薬選択では、EGFR遺伝子変異、ALK融合遺伝子、ROS1融合遺伝子などが主要なバイオマーカーです。選びやすい理由:肺癌は分子標的薬の種類が非常に多いため、どの標的がどの癌種に該当するか混同しやすいです。混同注意:EGFRやALKなど、別の受容体チロシンキナーゼをターゲットとする点と混同しやすいです。
- 5. GISTの分子標的治療では、KIT遺伝子やPDGFRA遺伝子の変異がターゲットとなります。これらの変異によって異常活性化したチロシンキナーゼを阻害するイマチニブなどが有効です。正しくは:GISTの分子標的治療薬選択では、KIT遺伝子変異やPDGFRA遺伝子変異が重要です。選びやすい理由:GISTも分子標的薬治療の代表例であり、何らかの受容体を標的とすることから、HER2と混同する可能性があります。混同注意:KITやPDGFRAなど、別の受容体型チロシンキナーゼと混同しやすいです。
国試ポイント
この問題は、主要な癌種とその分子標的薬の適応となるバイオマーカーとの組み合わせに関する基本的な知識を問うものです。特にHER2と乳癌の関連性は、臨床検査技師国家試験において頻出の重要なポイントです。各癌種でどのような遺伝子変異やタンパク発現が分子標的治療の対象となるかを正確に覚えている必要があります。
混同注意
各癌腫で用いられる分子標的薬のターゲットとなる遺伝子やタンパクは多岐にわたるため、HER2がどの癌種に特に関連が深いか混同しやすい。特に、EGFR、ALK、BRAF、KITなど、他の主要なターゲットとの区別が重要です。
次に同じ論点が出たら
次に類似問題が出た場合、主要な癌種(乳癌、肺癌、大腸癌、胃癌など)について、それぞれどの遺伝子変異やタンパク過剰発現が分子標的薬の適応となるバイオマーカーであるかを一覧で確認し、特に標準治療として確立されているものを確実に判断できるかを見る必要があります。
関連知識
HER2は、乳癌だけでなく、一部の胃癌や食道腺癌、子宮癌などでも治療標的となる場合があります。また、HER2の検出方法には免疫組織化学(IHC)法、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)法、CISH法などがあり、それぞれの手法の特徴と判定基準も重要です。トラスツズマブ以外にも、抗HER2抗体薬物複合体(ADC)であるトラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)やトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)などもHER2陽性乳癌治療に用いられます。