組織標本作製用固定液で正しいのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第72回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
10%中性緩衝ホルマリンは、DNAやRNAに架橋や分解を引き起こすため、理想的な遺伝子解析のサンプルとは言えません。しかし、病理組織の標準的な固定法であるため、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織は臨床検体として非常に多く存在します。近年の分子生物学的手法の進歩により、FFPE組織から核酸を抽出し、次世代シーケンシング(NGS)などの網羅的遺伝子解析を行うことが可能になり、研究や診断の現場で広く活用されています。そのため、「利用できる」という観点からは適切な記述です。
選択肢ごとの解説
- 1. ホルマリンは中性脂肪を溶解せず、むしろその構造を保ちます。中性脂肪を溶解するのは、主にアルコール系の固定液です。正しくは:10%ホルマリンは中性脂肪を溶解せず、保存する。選びやすい理由:固定液の中には脂肪を溶解するものがあるため、ホルマリンもそうであると誤解しやすいかもしれません。混同注意:アルコール固定液など、脂肪を溶解する性質を持つ固定液と混同する可能性があります。
- 2. グルタルアルデヒドはホルマリンに比べて組織への浸透力が弱いです。そのため、組織の深部まで固定するのに時間がかかり、固定不良を引き起こすことがあります。正しくは:グルタルアルデヒドは組織への浸透力が弱い。選びやすい理由:電子顕微鏡観察に用いられる高性能な固定液であるという印象から、全ての特性が優れていると誤解する可能性があります。混同注意:ホルマリンの高い浸透力と混同しやすいです。
- 3. パラホルムアルデヒド自体にはギ酸は含まれていません。ホルムアルデヒド水溶液(ホルマリン)が酸化される過程でギ酸が生成されることがあり、pHが低下する原因となります。そのため、通常、パラホルムアルデヒドから調製される固定液は緩衝液で中性に保たれます。正しくは:4%パラホルムアルデヒド固定液は、経時的にギ酸を生成する可能性があるため、通常は緩衝されている。選びやすい理由:ホルマリンが経年によりギ酸を生成し酸性になるという知識と結びつきやすいため、選択しやすいかもしれません。混同注意:未緩衝ホルマリンの経時的な変化と、パラホルムアルデヒドの本来の組成を混同しやすいです。
- 4. 正解。10%中性緩衝ホルマリン固定は、DNAやRNAを架橋・分解させるため、新鮮凍結検体と比較すると分子生物学的解析には制約があります。しかし、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織は臨床検体の主要な形態であり、核酸抽出技術や次世代シーケンシングなどの解析手法の進歩により、FFPE組織から得られた核酸を用いた網羅的遺伝子解析が広く行われています。したがって、「利用できる」という意味で適切な記述です。
- 5. 10%中性緩衝ホルマリンの「中性緩衝」には、リン酸二水素ナトリウムやリン酸水素二ナトリウムなどのリン酸緩衝液が用いられます。塩化ナトリウムは浸透圧を調整するために使用されることがありますが、pHを中性に保つための緩衝剤ではありません。正しくは:10%中性緩衝ホルマリンの調製には、主にリン酸緩衝液が使われる。選びやすい理由:生理食塩水などでよく使用されるため、溶液の調製全般に用いられると誤解しやすいかもしれません。混同注意:緩衝液の成分(リン酸塩など)と、浸透圧調整剤(塩化ナトリウム)の役割を混同しやすいです。
国試ポイント
固定液の種類とそれぞれの特性(浸透力、固定能力、組織成分への影響、分子生物学的解析への適性など)が問われます。特に、ホルマリンが分子生物学的解析に与える影響と、それを克服する技術の進展という現実的な側面を理解しているかが問われた問題です。
混同注意
固定液の理想的な特性と、実際の臨床検体における利用可能性の区別。特に分子生物学的解析におけるホルマリンの影響は重要ですが、技術の進歩により利用範囲が広がっている点を理解しておく必要があります。
次に同じ論点が出たら
次回同じ論点が出た場合、固定液ごとの「分子生物学的解析への適性」について、理想論だけでなく、現在の技術進歩によって「利用可能」になっている点も考慮に入れる必要があります。また、各固定液の具体的な化学的性質や、不適切な固定が引き起こす問題(ピグメント生成、アーチファクトなど)についても確認すると良いでしょう。
関連知識
固定液の種類(ホルマリン、グルタルアルデヒド、アルコールなど)とその作用機序、適切な緩衝方法、固定時間、温度、浸透圧の影響、分子生物学的解析における各固定液の利点と欠点。FFPE組織からの核酸抽出法(架橋解除技術など)。