貯血式自己血輸血で正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第63回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
貯血式自己血輸血は、患者自身の血液を事前に採取して保存し、手術時などにその血液を患者本人に輸血する治療法です。この方法は、他人の血液(同種血)を使用しないため、輸血による感染症のリスクを排除できるほか、最も重要な利点として、血液型不適合による溶血反応や、HLA抗体などによる同種免疫反応の発生を根本的に防止できる点が挙げられます。これにより、アナフィラキシーショックや輸血後移植片対宿主病(GVHD)などの重篤な副作用を避けることが可能です。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。貯血式自己血輸血は、患者自身の血液を事前に採取し、必要時にその血液を患者自身に戻す方法です。このため、他人の血液(同種血)に由来する抗原抗体反応(同種免疫)が原理的に発生しないため、GVHDやアナフィラキシーなどのリスクを大幅に低減できます。
- 2. 貯血式自己血輸血は、事前に血液を採取し保存する必要があるため、緊急手術には対応できません。緊急時には異型輸血や新鮮凍結血漿(FFP)などが選択されます。正しくは:貯血式自己血輸血は、緊急手術には適応されません。術前に計画的に採血・保存が行われる場合に限られます。選びやすい理由:自己血輸血自体は安全性が高いという認識から、緊急時にも有用なのではないかと誤解しやすいかもしれません。混同注意:自己血輸血の安全性と、貯血式であることの『事前準備が必要』という特性を混同する可能性があります。
- 3. 自己血輸血であっても、複数の自己血が採取された場合や、同種血輸血と併用される場合など、検体の取り違え(自己血と他患者の自己血、または自己血と他患者の同種血)のリスクは依然として存在します。そのため、取り違え輸血を完全に防止できるわけではありません。輸血前の厳重な確認は不可欠です。正しくは:自己血輸血であっても、採血や輸血時の取り違えリスクは存在するため、注意が必要です。選びやすい理由:「自己の血液だから間違えることはない」という単純な連想から正答と選びやすいですが、採血時や保管時、そして最終的な輸血時には他人の血液と混同しないよう厳重な管理が必須です。混同注意:「自分自身の血液だから安全」という漠然とした安心感と、医療現場でのヒューマンエラーの可能性を混同する可能性があります。
- 4. 貯血式自己血輸血で採取された血液は、一般的な輸血用血液製剤と同様に、適切な温度管理下で保管する必要があります。これは、血液の品質を維持し、細菌汚染などを防ぐためです。特殊な管理システムが不要なわけではありません。正しくは:貯血式自己血輸血で採取された血液も、厳格な保管管理体制(温度管理、衛生管理など)が必要です。選びやすい理由:自分の血液なので、特別な管理が不要なのではないかという誤解が生じやすいです。混同注意:自己血輸血の『安全性の高さ』と、『保管管理の簡便さ』を混同する可能性があります。安全性は高いですが、血液製剤としての管理は通常の血液製剤と同様に必要です。
- 5. 貯血式自己血輸血は、患者自身の血液を用いる方法であり、家族の血液を使用することは「自己血輸血」とは呼びません。家族からの輸血は「親族間輸血(directed donation)」と呼ばれ、これは同種血輸血の一種であり、自己血輸血とは異なる概念です。親族間輸血では、輸血後GVHDのリスクが増加するため、放射線照射などの特別な処理が必要です。正しくは:家族の血液を用いるのは親族間輸血であり、自己血輸血ではありません。選びやすい理由:家族の血液なら免疫反応が少ないのではないか、という誤解から選びやすいですが、遺伝的に近しいほどリンパ球が増殖しやすいため、GVHDのリスクはむしろ高まります。混同注意:『自己血輸血』と『親族間輸血』の定義を混同する可能性があります。家族の血液でも、免疫学的には「同種」です。
国試ポイント
この問題は、貯血式自己血輸血の基本的な原理と、それによって得られる最も重要な利点、特に同種免疫反応の防止について理解しているかを問うています。同時に、自己血輸血の適用限界(緊急時不可)、管理体制の必要性、および同種血輸血との明確な区別(家族血は自己血ではない)も確認しています。
混同注意
自己血輸血の安全性と、その具体的なメリット・デメリット、さらに同種血輸血(特に親族間輸血)との違いを混同しやすいです。特に、「取り違え防止」については、自己血だからこそ安全というイメージから誤解しやすいポイントです。
次に同じ論点が出たら
次に同じ論点が出た場合は、貯血式自己血輸血のメリット(感染症リスクゼロ、同種免疫防止)とデメリット(貧血の可能性、貯血期間の制限、管理の手間、緊急時不適応)を正確に想起できるかを確認します。特に、なぜ同種免疫が防止できるのか、その機序を理解しているかが重要です。
関連知識
自己血輸血には、貯血式の他に、希釈式自己血輸血(術中自己血希釈)や術中回収式自己血輸血があります。それぞれの方法の原理、メリット・デメリット、適応を理解しておくことが重要です。また、輸血による副作用全般(溶血性輸血反応、非溶血性輸血反応、感染症、GVHDなど)の知識も関連します。