遺伝性乳がん卵巣がん症候群〈HBOC〉の原因遺伝子はどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第68回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)は、BRCA1およびBRCA2遺伝子の生殖細胞系列変異によって引き起こされる遺伝性疾患です。これらの遺伝子はDNAの二本鎖切断修復に重要な役割を担っており、変異があると修復機能が損なわれ、細胞ががん化しやすくなります。HBOCの患者では、乳がん、卵巣がんだけでなく、前立腺がんや膵がんなどのリスクも高まることが知られています。
選択肢ごとの解説
- 1. APC遺伝子の変異は、主に家族性大腸腺腫症(FAP)の原因として知られています。FAPは多数の大腸ポリープを特徴とし、大腸がんのリスクを高める疾患で、遺伝性乳がん卵巣がん症候群とは異なる疾患です。正しくは:APCは家族性大腸腺腫症(FAP)の原因遺伝子です。選びやすい理由:APC遺伝子も代表的な腫瘍抑制遺伝子であり、遺伝性腫瘍症候群の原因となるため、知識が曖昧な場合に選んでしまう可能性があります。混同注意:家族性大腸腺腫症(FAP)と遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)の原因遺伝子の混同。
- 2. RB1遺伝子の変異は、主に遺伝性網膜芽細胞腫の原因遺伝子です。網膜芽細胞腫は小児期の眼に発生する悪性腫瘍であり、乳がんや卵巣がんとは直接的な関連がありません。正しくは:RB1は遺伝性網膜芽細胞腫の原因遺伝子です。選びやすい理由:RB1遺伝子も重要な腫瘍抑制遺伝子であり、遺伝性腫瘍症候群の原因となることが知られているため、一般的な知識から選んでしまうかもしれません。混同注意:遺伝性網膜芽細胞腫と遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)の原因遺伝子の混同。
- 3. MEN1遺伝子の変異は、多発性内分泌腺腫症1型(MEN1型)の原因遺伝子です。この症候群は、副甲状腺、下垂体、膵臓などの内分泌腺に多発性の腫瘍を形成する疾患であり、乳がんや卵巣がんを主とするHBOCとは直接的な関連が薄いです。正しくは:MEN1は多発性内分泌腺腫症1型(MEN1型)の原因遺伝子です。選びやすい理由:「多発性内分泌腺腫症」という名称や、内分泌系の腫瘍であることから、がん全体への関連性を漠然と感じて選ぶ可能性があります。混同注意:多発性内分泌腺腫症1型(MEN1型)と遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)の原因遺伝子の混同。
- 4. MSH2遺伝子の変異は、主にリンチ症候群(遺伝性非ポリポーシス大腸がん)の原因遺伝子の一つです。リンチ症候群では大腸がんのほか、子宮内膜がんなどのリスクも高まりますが、HBOCの主要な原因遺伝子ではありません。正しくは:MSH2はリンチ症候群(遺伝性非ポリポーシス大腸がん)の主要な原因遺伝子の一つです。選びやすい理由:リンチ症候群も乳がんや卵巣がんのリスクをわずかに高める可能性が示唆されることがあり、また一般的な遺伝性腫瘍症候群として知られているため、関連性があるように感じて選んでしまう可能性があります。混同注意:リンチ症候群と遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)の原因遺伝子の混同。
- 5. 正解。BRCA1およびBRCA2遺伝子は、DNAの損傷修復に関わる重要な腫瘍抑制遺伝子です。これらの遺伝子に変異が生じると、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)として、乳がんや卵巣がんの罹患リスクが著しく上昇することが知られています。HBOCの主要な原因遺伝子はBRCA1とBRCA2です。
国試ポイント
この問題は、主要な遺伝性腫瘍症候群とその原因遺伝子を正しく結びつけられるかを問うものです。特に、HBOCとBRCA1/2の組み合わせは最も基本的な知識として頻出します。各遺伝性疾患の原因遺伝子と、関連する臓器や臨床的特徴を正確に理解しておく必要があります。
混同注意
家族性大腸腺腫症(FAP)とAPC、網膜芽細胞腫とRB1、多発性内分泌腺腫症1型(MEN1型)とMEN1、リンチ症候群とMSH2などの他の遺伝性腫瘍症候群の原因遺伝子との混同が考えられます。それぞれの症候群と遺伝子の組み合わせを正確に覚えることが重要です。
次に同じ論点が出たら
次にHBOCについて問われる場合、診断基準、遺伝子検査の対象となる患者、リスク低減策(予防的乳房切除術や卵管卵巣摘出術など)、関連する他のがん種(前立腺がん、膵がん)、あるいはBRCA1/2以外のHBOC関連遺伝子(例: PALB2、CHEK2など、ただし国試ではBRCA1/2が中心)について問われる可能性があります。
関連知識
HBOCは常染色体優性遺伝形式をとります。罹患リスクはBRCA1変異で乳がん40-80%、卵巣がん20-40%、BRCA2変異で乳がん40-70%、卵巣がん10-20%程度とされています(生涯リスク)。診断には遺伝子検査が行われ、陽性者には定期的なスクリーニングやリスク低減手術(予防的乳房切除術、卵管卵巣摘出術)などが検討されます。また、PARP阻害薬などの治療薬はBRCA遺伝子変異のあるがん患者に有効性が示されています。