透過型電子顕微鏡標本の作製法について正しいのはどれか。2つ選べ。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第64回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1・4番
解説
透過型電子顕微鏡標本では、微細構造のコントラストを得るために重金属を用いた電子染色(選択肢1)が必要です。また、細胞膜などの脂質成分を良好に固定し、電子密度を高めるためにオスミウム酸による後固定(選択肢4)が重要です。これに対し、パラフィンは超薄切片作製に適さず(選択肢2)、エタノールは前固定には用いられず(選択肢3)、イソプロパノールは標準的な置換剤ではありません(選択肢5)。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。透過型電子顕微鏡では、電子線の透過率に差をつけることでコントラストを出すため、重金属(酢酸ウラン、クエン酸鉛など)を用いた電子染色が必須です。
- 2. パラフィンは電子顕微鏡の分解能に必要な超薄切片の作製には適していません。正しくは:透過型電子顕微鏡標本の包埋には、エポキシ樹脂(例:エポン樹脂)やアクリル樹脂などの硬質な樹脂が用いられます。選びやすい理由:光学顕微鏡の標本作製では一般的な材料であるため、混同しやすいです。混同注意:光学顕微鏡標本における包埋剤(パラフィン)と電子顕微鏡標本における包埋剤(エポキシ樹脂など)を混同している可能性があります。
- 3. エタノールは脂質を溶解し、細胞の微細構造を損なうため、電子顕微鏡の前固定には適しません。主に脱水処理に用いられます。正しくは:透過型電子顕微鏡標本の前固定には、グルタルアルデヒドやホルムアルデヒドなどのアルデヒド系固定液が一般的に用いられます。選びやすい理由:エタノールが組織処理の過程で広く使用されるため、固定液と誤解しやすいです。混同注意:固定剤(グルタルアルデヒドなど)と脱水剤(エタノール)の役割を混同している可能性があります。
- 4. 正解。オスミウム酸(四酸化オスミウム)は脂質を固定し、膜構造の保存に優れているため、電子顕微鏡標本の後固定に広く用いられます。また、重金属であるため電子密度を上昇させ、電子染色の一部としても機能します。選びやすい理由:オスミウム酸は毒性があるため、その使用を避けるべきだと誤解するかもしれませんが、電子顕微鏡標本作成においては重要な固定液です。
- 5. イソプロパノールは脱水処理に用いられることがありますが、電子顕微鏡の標本作製においては、脱水後に包埋剤と混和させるための置換剤としてプロピレンオキシドなどがより一般的に使用されます。正しくは:脱水後に包埋剤と互いに溶解する置換剤(中間剤)として、プロピレンオキシドやアセトンなどが用いられます。選びやすい理由:アルコール類であるため、脱水や置換といった溶剤のステップで使われると誤解しやすいです。混同注意:脱水剤(エタノール、アセトンなど)と置換剤(プロピレンオキシドなど)の役割や、具体的な薬剤名を混同している可能性があります。
国試ポイント
透過型電子顕微鏡標本作製における各ステップ(固定、脱水、置換、包埋、染色)で使用される試薬とその目的について、光学顕微鏡のそれと比較しながら正確に理解しているかが問われます。特に、超微細構造の観察に特有な試薬(グルタルアルデヒド、オスミウム酸、エポキシ樹脂、重金属染色剤など)の知識が重要です。
混同注意
光学顕微鏡の組織標本作製法と、電子顕微鏡の標本作製法における使用試薬や手順。特に、固定液(前固定・後固定)、脱水剤、置換剤、包埋剤の種類と役割の混同。電子染色と光学顕微鏡染色。
次に同じ論点が出たら
同様の論点が問われた場合、各試薬がどのステップで、どのような目的で使用されるのか、またその試薬がどのような特性を持っているのか(例:脂質固定、タンパク質固定、電子密度上昇など)を明確に区別できるかを確認します。
関連知識
・光学顕微鏡標本作製(固定:ホルマリン、脱水:アルコール、透明:キシレン、包埋:パラフィン、染色:HE染色など) ・各固定液の作用機序(アルデヒド系、オスミウム酸) ・超薄切片作製法(ウルトラミクロトーム) ・電子顕微鏡の原理(電子線と物質の相互作用、コントラスト生成)