子宮頸部擦過細胞診のPapanicolaou染色標本(別冊No. 8)を別に示す。矢印で示すのはどれか。

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出典:厚生労働省ホームページ(第64回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
下に示すPapanicolaou染色標本において、矢印で示された構造は、核が不明瞭で、小型リンパ球よりやや大きく、扁平上皮細胞の核よりは小さい梨洋形(洋梨形)の原虫の形態を呈している。これらの特徴はTrichomonas vaginalis(トリコモナス膣炎の原因原虫)に典型的である。トリコモナス感染では、背景に多数の好中球や“シフト現象”を伴う細菌(コッコバチルス)が観察されることが多い。
選択肢ごとの解説
- 1. カンジダは酵母様真菌で、卵円形の出芽酵母や仮性菌糸として観察される。トリコモナスとは形態が異なる。正しくは:正しい形態は、カンジダは卵円形の酵母様細胞と仮性菌糸を形成する。選びやすい理由:膣炎の原因となる病原体であるため、選択肢として考えやすい。混同注意:他の膣炎の原因微生物(細菌性膣症の原因菌など)と混同しやすい。
- 2. クラミジアは細胞内寄生性の細菌であり、Papanicolaou染色では感染細胞の細胞質内に封入体として観察される。図に示すような梨洋形の原虫ではない。正しくは:正しい形態は、クラミジアは上皮細胞の細胞質内に封入体として存在する。選びやすい理由:性感染症の一般的な原因であり、子宮頸部で検出されることがあるため。混同注意:ウイルスによる細胞変性効果(例:HSVによる多核巨細胞、CMVによる封入体)と混同しやすい。
- 3. 正解。Papanicolaou染色では、トリコモナス(Trichomonas vaginalis)は、核の小さい梨洋形(洋梨形)の原虫として観察される。しばしば核が不明瞭であったり、退行変性を示すものも多い。サイズは小型リンパ球よりやや大きく、扁平上皮細胞の核より小さいことが多い。背景には好中球や細菌の増加が見られることがある。図に示す矢印の先の構造はこれらの特徴と一致する。選びやすい理由:特徴的な形態から比較的判別しやすいが、退行変性している場合は他の異物と見間違える可能性もある。
- 4. クリプトコッカスは莢膜を持つ酵母様真菌で、通常は子宮頸部で検出されることは稀であり、Papanicolaou染色では厚い莢膜を持つ円形または卵円形の出芽酵母として観察される。図に示す形態とは異なる。正しくは:正しい形態は、クリプトコッカスは厚い莢膜を持つ酵母様真菌で、出芽を示す。選びやすい理由:真菌感染症の一つであるため、カンジダなどと並んで感染症の選択肢として考えられる。混同注意:他の真菌(例:カンジダ)や、形態の似た異物と混同しやすい。
- 5. サイトメガロウイルス(CMV)感染では、特徴的な細胞変性効果が認められる。感染細胞は腫大し、細胞核には好塩基性の巨大な封入体(フクロウの眼状)が見られ、細胞質にも封入体が認められることがある。図に示す梨洋形の構造はCMVによる細胞変性とは異なる。正しくは:正しい形態は、サイトメガロウイルス感染ではフクロウの眼状核内封入体を伴う腫大した細胞が認められる。選びやすい理由:ウイルス感染による細胞変性効果は子宮頸部細胞診で問われることがあるため。混同注意:単純ヘルペスウイルス(HSV)による多核巨細胞や核内封入体と混同しやすい。
国試ポイント
Papanicolaou染色標本における主要な病原微生物(細菌、真菌、原虫、ウイルスなど)の形態学的特徴を識別できるかどうかが問われている。特に、子宮頸部擦過細胞診で頻繁に検出されるトリコモナスやカンジダの典型的な所見を理解していることが重要である。
混同注意
トリコモナスは退行変性すると、核が不明瞭になり、形態が歪むため、好中球や細胞の残骸、異物などと混同されやすい。また、他の酵母様真菌(カンジダ、クリプトコッカス)とも形状が異なることを理解しておく必要がある。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出題された場合、まず細胞のサイズ、形状、核の有無と形態、細胞質の特徴、細胞内外の封入体の有無、および背景に存在する炎症細胞や細菌の種類に注目し、各病原体の典型的な形態と照合して判断する。
関連知識
子宮頸部細胞診における感染症の診断基準、各病原体のPapanicolaou染色での特徴、関連する臨床症状(例:膣分泌物の特徴、かゆみなど)。細菌性膣症のコッコバチルス、ヘルペスウイルスによる多核巨細胞、サイトメガロウイルスによるフクロウの眼状封入体なども区別できるようにしておくべき。