赤血球沈降速度が遅延するのはどれか。2つ選べ。
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出典:厚生労働省ホームページ(第69回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2・5番
解説
赤血球沈降速度(ESR)は、赤血球が試験管内で沈降する速度を測定する検査です。ESRは主に血漿中のタンパク質濃度(特にフィブリノゲンやグロブリン)と赤血球の数、形状に影響されます。選択肢2の真性赤血球増加症では、赤血球の絶対数が増加するため、赤血球が互いに沈降を妨げ合い、ESRは遅延(低下)します。選択肢5の先天性無フィブリノゲン血症では、赤血球の連銭形成を促す主要な因子であるフィブリノゲンが欠損しているため、赤血球が連銭を形成できず、沈降が極めて遅くなり、ESRは著しく遅延(低下)します。一方、関節リウマチ、ネフローゼ症候群、原発性マクログロブリン血症はいずれも血漿中の炎症性タンパク質(フィブリノゲン、グロブリンなど)の増加を伴うことが多く、これらのタンパク質が赤血球の連銭形成を促進するため、ESRは加速(上昇)します。
選択肢ごとの解説
- 1. 関節リウマチは慢性炎症性疾患であり、炎症性サイトカインの作用により血中のフィブリノゲンやその他の急性期タンパク質が増加します。これらのタンパク質は赤血球の連銭形成を促進し、ESRを加速(上昇)させます。正しくは:ESRは通常加速(上昇)します。選びやすい理由:炎症性疾患であるため、血液検査の異常を示す項目としてESRの変動を連想しやすいですが、ESRの遅延ではなく加速であることを注意する必要があります。混同注意:炎症反応の指標としてのESRの一般的な上昇と、特殊な条件下でのESRの変動を混同しやすいかもしれません。
- 2. 正解。真性赤血球増加症では、赤血球が著しく増加し、血液の粘稠度が高まります。赤血球の数が多すぎるため、赤血球同士が沈降する際に互いに妨げ合い、連銭形成が阻害される結果、ESRは遅延(低下)します。
- 3. ネフローゼ症候群では、尿中へのタンパク質喪失(特にアルブミン)が起こりますが、これに伴い肝臓でのフィブリノゲンやその他のグロブリン合成が亢進することが多く、血中フィブリノゲンやα2-マクログロブリンなどの増加が見られます。これらのタンパク質は赤血球の連銭形成を促進し、ESRは通常加速(上昇)します。正しくは:ESRは通常加速(上昇)します。選びやすい理由:低アルブミン血症という点で血液組成の変化があるため、ESRの異常が起こることは理解しやすいですが、その方向性を誤る可能性があります。混同注意:アルブミン減少と他の血漿タンパク質(特にフィブリノゲンやグロブリン)増加がESRに与える複合的な影響を混同しやすいです。
- 4. 原発性マクログロブリン血症は、異常に大量のモノクローナルIgM(マクログロブリン)が産生される疾患です。この巨大なタンパク質は赤血球の表面電荷を中和し、非常に強い連銭形成を誘導するため、ESRは著しく加速(上昇)します。正しくは:ESRは著しく加速(上昇)します。選びやすい理由:血漿タンパク質の異常があるため、ESRの異常を連想しやすいですが、方向性を誤る可能性があります。混同注意:他の免疫グロブリン異常(多発性骨髄腫など)と同様に、タンパク質の増加がESRに与える影響の方向性を混同しやすいです。
- 5. 正解。フィブリノゲンは、赤血球が連銭形成(コインのように積み重なる現象)する上で非常に重要な血漿タンパク質です。フィブリノゲンがない、または極端に少ない場合、この連銭形成がほとんど起こらず、赤血球は沈降しにくくなるため、ESRは著しく遅延(低下)します。
国試ポイント
赤血球沈降速度(ESR)の変動要因は、臨床検査技師国家試験で頻繁に問われる重要項目です。特に、ESRを「加速させる病態」と「遅延させる病態」を区別して理解しているかが試されます。主な変動要因として、血漿タンパク質(フィブリノゲン、免疫グロブリンなど)の量や種類、赤血球の数や形態(貧血、多血症、球状赤血球、鎌状赤血球など)、そして採血からの時間や温度などの検査条件も関連付けて覚えておく必要があります。ESRが高値を示す代表的な疾患(炎症性疾患、悪性腫瘍、結合組織病、多発性骨髄腫など)と、低値を示す代表的な疾患(真性赤血球増加症、先天性無フィブリノゲン血症、鎌状赤血球症など)は、セットで確実に理解しておくべきです。
混同注意
ESRが「加速」する病態と「遅延」する病態を混同しやすいです。特に、血漿タンパク質の異常がESRに与える影響(フィブリノゲンやグロブリン増加で加速、フィブリノゲン欠損で遅延)と、赤血球の数や形状の変化(多血症や異常形態赤血球で遅延、貧血で加速)を整理して覚えることが重要です。また、疾患名とESRの変動方向を正確に結びつけることが難しい場合があります。
次に同じ論点が出たら
次にこの論点が出題される場合、ESRの測定原理や、特定の赤血球形態異常(例: 鎌状赤血球症、遺伝性球状赤血球症)がESRに与える影響、あるいは複数の検査項目(例: CRPとESRの同時評価)との組み合わせ問題として出題される可能性があります。また、ESRの検査上の注意点や影響因子(抗凝固剤、検体放置時間、温度など)を問う問題も考えられます。
関連知識
ESRの測定原理(Westergren法、Wintrobe法など)。連銭形成のメカニズムとそれに影響する因子(赤血球の負電荷、血漿タンパク質の種類と量)。急性期反応物質(CRP、フィブリノゲン、ハプトグロビンなど)とESRとの関連。貧血の種類とESR(小球性貧血、大球性貧血、球状赤血球症など)。その他の血漿タンパク質異常を伴う疾患(多発性骨髄腫、高グロブリン血症)。ESRの生理的変動要因(年齢、性別、妊娠)。