血液塗抹標本の染色法について誤っているのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第69回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
特異的エステラーゼ(クロロアセテートエステラーゼ)は主に骨髄系の顆粒球(好中球系)に陽性を示し、フッ化ナトリウム(NaF)では阻害されません。一方、非特異的エステラーゼ(α-ナフチル酢酸エステラーゼなど)は主に単球系の細胞に陽性を示し、フッ化ナトリウムによって活性が阻害されます。この問題は、両エステラーゼ染色の特性とそれぞれの阻害剤に関する知識を問うものであり、選択肢5は特異的エステラーゼがフッ化ナトリウムで阻害されると記述しているため誤りです。
選択肢ごとの解説
- 1. 正常な赤芽球はグリコーゲンをほとんど含んでいないため、PAS染色(Periodic Acid-Schiff染色)では通常陰性を示します。これは正しい記述です。選びやすい理由:急性赤白血病(M6)などで異常な赤芽球がPAS染色で陽性を示すことがあるため、その知識と混同して、正常な赤芽球も陽性だと思い込み、誤りだと判断してしまう可能性があります。混同注意:正常赤芽球のPAS染色性と、異常赤芽球(特に赤白血病細胞)のPAS染色性(顆粒状またはブロック状陽性)とを混同しやすいです。
- 2. 鉄芽球性貧血では、骨髄中の赤芽球に異常な鉄の沈着(環状鉄芽球)が見られるため、プルシアンブルー染色などの鉄染色はその検出に非常に有用です。これは正しい記述です。選びやすい理由:鉄代謝異常全般の知識が曖昧な場合、鉄芽球性貧血における鉄染色の具体的な役割を誤解し、不適切だと判断する可能性があります。混同注意:他の種類の貧血(例:鉄欠乏性貧血、溶血性貧血)の診断における鉄の評価と混同しやすいです。
- 3. May-Giemsa染色は、血液細胞の核、細胞質、顆粒などの形態学的特徴を鮮明に染め分けることができ、血球鑑別診断において基本的な汎用染色法として広く用いられています。これは正しい記述です。選びやすい理由:特殊染色が特定の成分を染め分けることに特化しているため、May-Giemsa染色が広範な形態観察に優れているという点を軽視し、誤りだと判断する可能性があります。混同注意:PAS染色やペルオキシダーゼ染色などの「特殊染色」が特定の細胞成分や酵素活性を検出するのに対し、May-Giemsa染色が一般的な「形態観察」を目的としている点との区別を混同しやすいです。
- 4. 成熟好中球はミエロペルオキシダーゼという酵素を豊富に含んでいるため、ペルオキシダーゼ染色(MPO染色)で強く陽性反応を示します。これは急性骨髄性白血病(AML)の分類などにも用いられる重要な所見です。これは正しい記述です。選びやすい理由:リンパ球がMPO染色で陰性であることなど、他の白血球の染色性との混同により、好中球も陰性だと誤解する可能性があります。混同注意:他の白血球系細胞のMPO染色性(例:単球は弱い陽性、リンパ球・赤芽球・形質細胞は陰性、好酸球も陽性だが顆粒が異なる)と混同しやすいです。
- 5. 正解。特異的エステラーゼ(クロロアセテートエステラーゼ、Naphthol AS-D chloroacetate esterase: NASDCl)は主に好中球系の細胞に陽性を示し、フッ化ナトリウム(NaF)では活性が阻害されません。フッ化ナトリウムで活性が阻害されるのは、単球系の細胞に陽性を示す非特異的エステラーゼ(α-ナフチル酢酸エステラーゼ、α-naphthyl acetate esterase: ANAE)です。したがって、この記述は誤りです。正しくは:「非特異的エステラーゼ染色はフッ化ナトリウムによって活性が阻害されます。」または「特異的エステラーゼ染色はフッ化ナトリウムによって活性が阻害されません。」選びやすい理由:エステラーゼ染色の種類と阻害剤の組み合わせを正確に覚えていない場合、非特異的エステラーゼの知識と混同して、この記述を正しいと判断してしまう可能性があります。混同注意:特異的エステラーゼ染色と非特異的エステラーゼ染色の対象細胞(好中球系と単球系)、およびそれぞれの阻害剤(特異的エステラーゼはエゼリン、非特異的エステラーゼはフッ化ナトリウム)を混同しやすいです。
国試ポイント
血液塗抹標本の特殊染色に関する問題では、各染色の陽性細胞、陰性細胞、その特異性(何の成分を染めているか)、そして特定の阻害剤がある場合はその阻害剤がどの染色に作用するか(どの細胞系を鑑別するか)といった基本的な知識が頻繁に問われます。特に、急性白血病のM分類などで重要なエステラーゼ染色については、特異的と非特異的の違いやそれぞれの阻害剤について正確な理解が求められます。
混同注意
特異的エステラーゼ染色と非特異的エステラーゼ染色の鑑別点(陽性細胞、阻害剤)を混同しやすいです。また、PAS染色における正常赤芽球と異常赤芽球の陽性パターンの違い、ペルオキシダーゼ染色における各種白血球の染色性も混同されがちです。
次に同じ論点が出たら
血液特殊染色に関する問題が出題された場合、各染色の陽性細胞、陰性細胞、特異性、そして特定の阻害剤(もしあれば)とその対象を正確に覚えているかを確認しましょう。特に、鑑別診断に用いられる染色法については、どのような病態で陽性・陰性となるかを把握することが重要です。また、各染色の原理(何を検出しているのか)を理解することで、より深い知識となります。
関連知識
PAS染色:グリコーゲンを染める。正常赤芽球は陰性、赤白血病細胞は陽性。鉄染色:鉄(ヘモジデリン)を染める。環状鉄芽球性貧血の診断に有用。May-Giemsa染色:汎用的な形態観察用染色。核、細胞質、顆粒を染め分ける。ペルオキシダーゼ染色:ミエロペルオキシダーゼを検出。好中球系は強陽性、単球系は弱陽性、リンパ球系は陰性。エステラーゼ染色:特異的エステラーゼは好中球系に陽性でNaFで阻害されない。非特異的エステラーゼは単球系に陽性でNaFで阻害される。