補体系の検査結果を以下に示す。
| 検査項目 | 検査結果 |
|---|---|
| CH₅₀ | 低下 |
| C3 | 基準範囲内 |
| C4 | 低下 |
| C1q | 基準範囲内 |
| C1-INH活性 | 低下 |
考えられるのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第70回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
遺伝性血管性浮腫(HAE)は、C1インヒビター(C1-INH)の機能低下または量的不足により、補体古典経路が過剰に活性化される疾患です。C1-INHはC1エステラーゼの活性を阻害する役割を担っており、その機能不全によりC1が継続的にC4およびC2を切断し、結果としてC4とC2の消費が起こり血中濃度が低下します。設問の検査結果ではC1インヒビター活性の低下が示唆されており、この状況に最も合致するのは遺伝性血管性浮腫です。
選択肢ごとの解説
- 1. 関節リウマチでは、一部の症例で補体成分(特にC3, C4)が低下することがありますが、C1インヒビター活性は通常低下しません。むしろ炎症により補体消費が亢進することがあり、C1インヒビターが正常である場合は別の疾患が考えられます。正しくは:C1インヒビター活性も低下している場合は、この選択肢は不適切です。選びやすい理由:免疫複合体病であるため補体消費がある点は似ていますが、C1インヒビター活性低下が決め手となります。混同注意:他の自己免疫疾患との鑑別が重要です。
- 2. 膜性増殖性糸球体腎炎では、C3の著しい低下を認めることが多いですが、C1インヒビター活性の低下は一般的ではありません。C1インヒビター活性が低下している場合、この疾患は考えにくいです。正しくは:C1インヒビター活性が正常であれば、この選択肢も検討対象になります。選びやすい理由:C3の低下は共通しますが、C1インヒビターの異常が鑑別点です。混同注意:C3腎症と混同しやすいですが、C1インヒビターの関与が異なります。
- 3. 全身性エリテマトーデス(SLE)では、疾患活動期にC3、C4といった補体成分の低下がよく見られますが、C1インヒビターの活性は通常低下しません。C1インヒビター活性が低下しているという検査結果には合致しません。正しくは:C1インヒビター活性が正常であれば、活動期のSLEは補体低下を示すため選択肢となり得ます。選びやすい理由:免疫複合体が関与する自己免疫疾患であり、補体消費があるため、補体成分の低下は共通する特徴です。混同注意:他の自己免疫疾患と同様、C1インヒビターの異常が鑑別点となります。
- 4. 溶連菌感染後急性糸球体腎炎では、感染後早期にC3の低下が認められますが、C4は比較的保たれる傾向があり、C1インヒビターの活性低下は通常見られません。C1インヒビター活性が低下しているという検査結果には合致しません。正しくは:C1インヒビター活性が正常であれば、補体低下の原因としてこの疾患も考慮されます。選びやすい理由:C3の低下は類似していますが、C4やC1インヒビターの状態が異なります。混同注意:他の糸球体腎炎との鑑別が必要です。
- 5. 正解。遺伝性血管性浮腫は、C1インヒビターの機能的または量的な異常によって補体経路、特に古典経路が過剰に活性化され、補体成分(C4、C2)が消費される疾患です。そのため、C1インヒビター活性の低下とC4の低下が見られる検査結果は、この疾患と一致します。正しくは:遺伝性血管性浮腫は、C1インヒビターの欠損または機能不全により、C1エステラーゼが制御されずに活性化し、補体古典経路が異常に亢進することで、C2やC4が消費される病態です。選びやすい理由:C3の低下を伴わない補体異常の鑑別点として重要です。混同注意:後天性血管性浮腫との鑑別も必要ですが、こちらはC1インヒビター活性低下とC4低下という古典的なパターンを示します。
国試ポイント
補体系の検査結果の解釈、特にC1インヒビター活性と各補体成分の関連性を理解しているかが問われています。C1インヒビターの異常が関連する疾患として、遺伝性血管性浮腫は重要です。また、補体経路の古典経路、副経路、レクチン経路それぞれの活性化と消費される補体成分の特徴を把握しておくことが重要です。
混同注意
C3とC4の低下が見られる疾患は複数ありますが、C1インヒビターの活性低下が同時に見られる点が鑑別のポイントとなります。SLEや膜性増殖性糸球体腎炎など他の免疫複合体病ではC1インヒビター活性は通常低下しません。
次に同じ論点が出たら
C1インヒビターの活性低下の他に、C1qの低値が見られる場合は、後天性血管性浮腫が示唆されます。遺伝性血管性浮腫(HAE)ではC1qは正常または高値であることが多いです。また、HAEのタイプ(Type I: C1-INH量低下、Type II: C1-INH機能低下)についても鑑別が進められます。
関連知識
C1インヒビターは、補体だけでなく凝固系、線溶系、キニン系の制御にも関与しています。C1インヒビターの機能不全は、血管透過性亢進を引き起こすブラジキニンなどの産生亢進にも繋がり、浮腫症状の原因となります。後天性血管性浮腫では、C1インヒビターの自己抗体やリンパ増殖性疾患などによりC1インヒビターが消費・不活化される病態であり、こちらもC1インヒビター活性低下を示します。