運動負荷試験が実施可能なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第64回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
運動負荷試験は、心臓に負荷をかけることで、安静時には現れない虚血性変化や不整脈などを誘発し、診断に役立てる検査です。しかし、患者の安全を確保するため、重篤な心臓病や急性の病態がある場合には実施が禁忌とされています。選択肢1〜4は、いずれも運動負荷によって病態が急激に悪化し、生命を脅かす危険性が高いため、運動負荷試験は絶対禁忌です。一方、I度房室ブロックは、房室伝導の軽度な遅延であり、通常は血行動態に影響を及ぼさず、運動による悪化のリスクも低いため、運動負荷試験を実施可能な場合が多いです。
選択肢ごとの解説
- 1. 急性肺塞栓症は、肺動脈が血栓で閉塞し、心臓への負担が急激に増大する重篤な状態です。この状態で運動負荷をかけると、肺動脈圧がさらに上昇し、右心不全の悪化や致死的な不整脈を誘発する危険性が極めて高いため、運動負荷試験は禁忌です。正しくは:急性肺塞栓症は運動負荷試験の絶対禁忌である。選びやすい理由:一見すると心臓に直接的な問題がないように思えるかもしれませんが、肺循環と密接に関わっているため、運動による負荷は心臓に大きな影響を与えます。混同注意:他の心血管疾患。特に、安静時では症状が目立たないが負荷で悪化する病態と混同しやすいが、急性期は絶対禁忌となる。
- 2. 不安定狭心症は、冠動脈の血流が不安定であり、安静時にも胸痛が発生したり、わずかな労作で痛みが誘発・悪化したりする状態です。運動負荷をかけると、心筋酸素需要が急増し、心筋虚血をさらに悪化させ、心筋梗塞や突然死のリスクが高まるため、運動負荷試験は禁忌です。正しくは:不安定狭心症は運動負荷試験の絶対禁忌である。選びやすい理由:安定狭心症であれば運動負荷試験の適応となる場合があるため、混同しやすい。しかし、「不安定」という点が重要。混同注意:安定狭心症。安定狭心症は、症状の誘発閾値を評価するために運動負荷試験が考慮されることがあるが、不安定狭心症は異なる。
- 3. 急性大動脈解離は、大動脈壁が裂けることで生じる非常に危険な病態です。運動負荷によって血圧が上昇すると、解離部位への負担が増大し、解離の進行、大動脈破裂、心タンポナーデなどの致死的な合併症を引き起こす可能性が極めて高いため、運動負荷試験は絶対禁忌です。正しくは:急性大動脈解離は運動負荷試験の絶対禁忌である。選びやすい理由:突然の胸痛や背部痛が主症状であり、心筋梗塞と鑑別が必要な状況が多いが、負荷は禁忌。混同注意:虚血性心疾患。原因は異なるが、急性の胸痛を伴う重篤な循環器疾患という点で共通点があり、負荷の禁忌を覚える必要がある。
- 4. 持続性心室頻拍は、心室からの異常な電気興奮により心拍数が極めて高くなる重症不整脈です。この状態での運動負荷は、不整脈のさらなる悪化、心拍出量の低下、心室細動への移行、循環虚脱など、生命を脅かす事態を招く危険性が高いため、運動負荷試験は禁忌です。正しくは:持続性心室頻拍は運動負荷試験の絶対禁忌である。選びやすい理由:発作性上室性頻拍など、一部の不整脈では診断のために負荷試験が行われることもあるため、混同しやすい。しかし、心室頻拍はより重篤。混同注意:発作性上室性頻拍。上室性頻拍は、運動で誘発されるか評価するために負荷試験が考慮される場合があるが、心室頻拍は危険性が高い。
- 5. 正解。I度房室ブロックは、心房から心室への電気刺激伝導がわずかに遅延している状態を指し、自覚症状を伴わないことがほとんどで、予後も良好な場合が多いです。運動によって心拍数が増加しても、通常は心房から心室への伝導は維持され、血行動態に重大な影響を及ぼすことは稀です。そのため、他の重篤な疾患がなければ、I度房室ブロック単独では運動負荷試験の禁忌とはなりません。ただし、II度以上の房室ブロックでは負荷により悪化する可能性があるため禁忌となることが多いです。正しくは:I度房室ブロックは、運動負荷試験の絶対禁忌ではない。選びやすい理由:「ブロック」という言葉から一見重篤な印象を受けるかもしれませんが、I度房室ブロックは最も軽度であり、通常は治療も不要で経過観察されることが多い良性の不整脈です。他の重篤な心疾患と区別することが重要です。混同注意:II度またはIII度房室ブロック。これらのブロックは心房からの刺激が心室に伝わるのが部分的または完全に途絶えるため、運動負荷は心拍出量をさらに低下させ、失神や心停止のリスクを高めるため、運動負荷試験は禁忌である。
国試ポイント
運動負荷試験の適応と禁忌に関する知識が問われています。特に、絶対禁忌となる病態を正確に理解しているかが重要です。各病態がなぜ禁忌となるのか、その病態生理学的背景と合わせて学習することが求められます。
混同注意
I度房室ブロックと、より重度のII度、III度房室ブロックは混同しやすい。また、安定狭心症と不安定狭心症のように、病態の「安定性」によって適応が異なる疾患も注意が必要である。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出題された場合、まず各選択肢の疾患が「急性期」であるか「慢性期」であるか、また「不安定」であるか「安定」であるかを判断する。特に「急性」「不安定」「重症不整脈」といったキーワードがあれば、運動負荷試験の禁忌である可能性が高いと判断し、各疾患の病態生理と照らし合わせてリスクを評価する。
関連知識
運動負荷試験の種類(トレッドミル、自転車エルゴメータ)、目的(虚血性心疾患の診断、不整脈の評価、運動耐容能の評価)、検査中止基準。心電図変化(ST低下、T波変化、不整脈の出現)と病態との関連。各疾患の病態生理。