頻回の動悸を主訴に来院した患者の心電図(別冊No. 3)を別に示す。動悸の原因で最も考えられるのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第64回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
提示された心電図は、QRS波形が狭く(脚ブロックなどの変行伝導がなければ上室性起源を示唆)、脈が速く規則的である頻拍を示しています。P波は不明瞭かQRS波に埋もれている可能性があります。これらの特徴は、発作性上室頻拍(PSVT)に典型的です。PSVTは急激に始まり急激に停止する動悸発作として知られています。
選択肢ごとの解説
- 1. 心室細動では、QRS波が不規則かつ非常に速く、波形は基線が不規則に揺れる粗動・細動を示すことが多いです。この心電図所見とは異なります。正しくは:心室細動は心室の電気活動が無秩序になり、QRS波形を形成せず、粗い波や細かい波が不規則に現れます。選びやすい理由:動悸の原因となる重篤な不整脈の一つではありますが、心電図波形が一致しません。混同注意:心室細動と心房細動の区別、またTorsades de pointesのような多形性心室頻拍との鑑別が難しい場合があります。
- 2. 洞性不整脈は、洞結節からのP波が先行し、そのR-R間隔が呼吸変動などによって不規則になるものです。しかし、この心電図ではP波が見当たらず、QRS波形が狭く、頻拍を示しています。正しくは:洞性不整脈はP波に先行されるQRS波があり、R-R間隔が呼吸に伴って変動します。選びやすい理由:不整脈という点では共通しますが、心電図の所見が異なります。混同注意:洞性頻脈や洞性徐脈といった洞結節起源の不整脈と混同しやすいです。
- 3. 洞不全症候群は洞結節の機能不全により、洞性徐脈、洞停止、洞房ブロック、徐脈頻脈症候群などを呈します。しかし、この心電図では徐脈ではなく頻拍の状態です。正しくは:洞不全症候群は、洞結節の機能低下により徐脈や洞停止、または徐脈と頻拍を繰り返す状態を指します。選びやすい理由:不整脈の原因となる疾患ですが、心電図が示すのは頻拍であり、洞不全症候群の典型的な徐脈や停止のパターンではありません。混同注意:徐脈性不整脈と頻脈性不整脈の病態理解が不十分だと混同する可能性があります。
- 4. 洞房ブロックは洞結節で発生した刺激が心房へ伝導されない状態であり、P波の脱落やP-P間隔の延長が見られます。この心電図は頻拍であり、P波の脱落を主徴とする洞房ブロックの所見ではありません。正しくは:洞房ブロックでは、洞結節からの刺激が心房に伝わらないため、P波の脱落や心拍数の減少が特徴です。選びやすい理由:伝導系の異常である点では共通しますが、心電図のパターンが一致しません。混同注意:房室ブロックとの違い、およびブロックの度合いによる心電図変化について混乱しやすいです。
- 5. 正解。提示された心電図は、狭いQRS波形を伴う規則正しい頻拍を示しており、P波が判別しにくいか、またはQRS波に隠れています。これは発作性上室頻拍(PSVT)の典型的な特徴です。動悸の主訴とよく合致します。正しくは:発作性上室頻拍は、房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT)や房室リエントリー性頻拍(AVRT)などによって引き起こされ、規則的で狭いQRS頻拍を特徴とします。選びやすい理由:他の頻拍性不整脈との鑑別が重要です。混同注意:心房頻拍、心房粗動、心房細動、またはWPW症候群を伴う頻拍など、他の上室性頻拍との鑑別が難しいことがあります。
国試ポイント
狭いQRS頻拍の鑑別が重要です。特に、P波の有無やQRS波との関係、頻拍の規則性に着目することが求められます。洞性頻脈、心房細動、心房粗動、発作性上室頻拍などの代表的な頻拍性不整脈の心電図所見を正確に把握しているかが問われています。
混同注意
心房頻拍、心房粗動、WPW症候群を伴う頻拍などの他の上室性頻拍。これらも狭いQRS頻拍を示すことがありますが、P波の有無や形、R-P間隔、R-R間隔の規則性などで鑑別します。
次に同じ論点が出たら
この患者の動悸が頻回であることから、発作性上室頻拍の診断が確定すれば、アブレーション治療の適応も検討される可能性があります。
関連知識
発作性上室頻拍には房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT)と房室リエントリー性頻拍(AVRT、WPW症候群を伴うものなど)が主なものとして挙げられます。AVNRTではP波がQRS波に隠れるか、直後に逆行性P波として出現することが多いです。AVRTではR-P'間隔が短いP波がQRS波の直後に出現することがあります。