誤っているのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第69回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
妊娠糖尿病は、妊娠中に初めて発症または診断される糖代謝異常であり、その主な病態生理学的特徴はインスリン抵抗性の増大です。胎盤から分泌されるホルモン(ヒト胎盤性ラクトゲン、プロゲステロン、エストロゲンなど)がインスリン作用を減弱させるため、インスリン抵抗性が高まります。したがって、「インスリン抵抗性が低い」という選択肢1の記述は誤りです。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。妊娠糖尿病は、妊娠中のホルモン変動(特に胎盤性ホルモン)によって引き起こされるインスリン抵抗性の増大が主な原因です。このため、インスリン感受性が低下し、血糖値が上昇します。したがって、「インスリン抵抗性が低い」という記述は誤りです。正しくは:妊娠糖尿病では、インスリン抵抗性が高い。選びやすい理由:「妊娠」という言葉から、生理的な変化を想像し、インスリン抵抗性が改善されるかのように誤解する可能性があります。また、インスリン分泌が低下するタイプの糖尿病と混同する可能性もあります。混同注意:2型糖尿病の一部(インスリン分泌不全型)や、インスリン自己免疫症候群など、インスリン抵抗性以外の原因による高血糖状態。
- 2. HbA1cは、赤血球中のヘモグロビンAとグルコースが非酵素的に結合(糖化)して生成されます。この糖化反応の初期段階として、アルデヒド基とアミノ基の反応によりシッフ塩基が形成され、その後、アマドリ転移を経て安定なケトアミン構造(HbA1c)が生成されます。この記述は正しいです。混同注意:酵素的糖化反応や、別の糖化最終産物(AGEs)の生成経路。
- 3. 腎臓の尿細管は、糸球体でろ過されたグルコースを再吸収する機能を持っています。この再吸収能力には限界があり、血中グルコース濃度が一定レベルを超えると尿中に糖が排泄され始めます。この限界値が腎糖排泄閾値であり、通常160~180 mg/dL程度とされています。この記述は正しいです。混同注意:血糖コントロールの目標値や、糖尿病の診断基準値。
- 4. グルコースは水溶液中で環状構造をとり、α-D-グルコピラノースとβ-D-グルコピラノースの平衡混合物として存在します。ムタロターゼ(アルドース1-エピメラーゼ)は、このα型とβ型の相互変換(変旋光現象)を触媒する酵素であり、平衡状態への到達を加速します。この記述は正しいです。混同注意:他の糖代謝酵素(例:ヘキソキナーゼ、グルコースイソメラーゼなど)や、単に異性化を促進する酵素全般。
- 5. SGLT2は、腎臓の近位尿細管S1セグメントに主に発現しており、糸球体でろ過されたグルコースの約90%をナトリウムと共輸送することで再吸収する役割を担っています。糖尿病治療薬の標的としても重要です。この記述は正しいです。混同注意:SGLT1(小腸や近位尿細管S3セグメントに存在)、またはGLT(グルコース輸送体)などの他のグルコース輸送体。
国試ポイント
本問題は、糖尿病の病態生理、検査値の原理、および関連する生化学・生理学の基礎知識を広範に問うものです。特に、妊娠糖尿病の病態(インスリン抵抗性)、HbA1cの生成機序(アマドリ転移)、腎臓の糖代謝(腎糖排泄閾値、SGLT2の機能と局在)、および糖の化学的性質(ムタロターゼ)といった、それぞれのトピックにおける核心的な知識が試されています。一つの問題で複数の重要概念を複合的に理解しているかを評価する形式です。
混同注意
妊娠中のインスリン感受性の変化と、インスリン分泌能の変化、あるいは他の種類の糖尿病との病態の違い。
次に同じ論点が出たら
次に同じ論点が出た場合、妊娠糖尿病の診断基準、治療薬、または合併症について問われる可能性があります。また、HbA1cに影響を与える他の因子や、腎臓の糖輸送体の詳細な位置と役割、ムタロターゼ以外の糖代謝酵素の機能も確認する必要があります。
関連知識
妊娠糖尿病の診断基準、治療と管理。HbA1cの測定法、影響因子。腎臓のグルコース再吸収機構の全体像。SGLT2阻害薬の作用機序。糖の立体異性体と変旋光現象。