甲状腺穿刺吸引細胞診のPapanicolaou染色標本(別冊No. 11)を別に示す。考えられるのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第72回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
提示された画像には、甲状腺乳頭癌に特徴的な細胞所見である核の重積、核の拡大と不整形、核溝(核の縦方向の陥凹)、核内封入体(細胞質が核内に陥入したもの)、そしてクロマチンの辺縁肥厚による「すりガラス状核」が認められます。これらの所見の組み合わせは、甲状腺乳頭癌の診断に極めて特異的です。
選択肢ごとの解説
- 1. 画像に示されている細胞像は、正常な甲状腺濾胞細胞の形態とは異なります。核の重積、核溝、核内封入体、クロマチンの辺縁肥厚など、悪性所見を示しています。正しくは:正常甲状腺濾胞細胞では、細胞の配列は規則的で、核は円形または卵円形であり、均一なクロマチン分布を示し、明確な核小体が見られることがあります。
- 2. 橋本病ではリンパ球浸潤、好酸性細胞質を持つOncocyte(アシュケナジー細胞)、および一部異型を示す濾胞細胞が見られますが、本画像に見られるような核の異常所見(核溝、核内封入体など)は通常主ではありません。正しくは:橋本病の細胞像は、背景に多数のリンパ球を認め、濾胞細胞はアシュケナジー細胞化していることが多いです。核の異型は乳頭癌ほど顕著ではありません。選びやすい理由:甲状腺疾患の鑑別診断の一つとして考慮されるため。混同注意:腫瘍性病変ではなく炎症性病変として誤解する可能性。
- 3. 亜急性甲状腺炎では炎症細胞浸潤(特に多核巨細胞や好中球)、破壊された濾胞細胞などが特徴的ですが、画像に見られるような明らかな核の悪性所見は認められません。正しくは:亜急性甲状腺炎の細胞像は、多核巨細胞、炎症細胞(好中球、リンパ球)、破壊された甲状腺濾胞細胞、コロイドの消失などが特徴です。選びやすい理由:甲状腺疾患の鑑別診断の一つとして考慮されるため。混同注意:腫瘍性病変ではなく炎症性病変として誤解する可能性。
- 4. 正解。画像には、核の拡大、不整な核縁、核溝(核の縦方向の陥凹)、核内封入体(細胞質が核内に陥入したもの)、クロマチンの辺縁肥厚(「すりガラス状核」)、核の重積といった、甲状腺乳頭癌に特徴的な細胞学的所見が明確に観察されます。特にすりガラス状核や核溝は診断的価値が高いです。正しくは:これは正しい選択肢です。
- 5. 甲状腺のリンパ腫では、小型から中型、大型のリンパ球がシート状に増殖し、リンパ濾胞構造を破壊しますが、画像に見られるような甲状腺濾胞細胞由来の核内封入体や核溝といった所見は呈しません。正しくは:甲状腺リンパ腫の細胞像は、異型リンパ球の増殖が主体であり、濾胞細胞の異常所見とは異なります。背景にリンパ球を多数認める点は橋本病と共通しますが、異型リンパ球の形態や分布が異なります。選びやすい理由:甲状腺腫瘍性病変の一つとして考慮されるため。混同注意:炎症性疾患の橋本病との鑑別、または他の悪性腫瘍との鑑別。
国試ポイント
甲状腺疾患における細胞診の基本的な鑑別能力、特に甲状腺乳頭癌の細胞学的特徴(すりガラス状核、核溝、核内封入体など)を正確に認識できるかが問われています。典型的な悪性所見を把握していることが重要です。
混同注意
甲状腺乳頭癌の核所見は特徴的ですが、慢性甲状腺炎(橋本病)で認められるOncocyte(アシュケナジー細胞)の異型性や、濾胞性腫瘍との鑑別は重要です。特に低異型度乳頭癌や濾胞型乳頭癌では、鑑別が難しい場合があります。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合は、まず核の形態異常(大きさ、形、クロマチン分布)に注目し、次に核溝や核内封入体といった乳頭癌に特異的な所見の有無を確認します。同時に、背景に炎症細胞の有無やコロイドの状態なども観察し、総合的に判断します。
関連知識
甲状腺腫瘍のWHO分類、甲状腺穿刺吸引細胞診のBethesdaシステム、各甲状腺疾患の病理学的特徴(組織像および細胞像)、分子生物学的診断(BRAF変異など)が関連知識となります。特に甲状腺乳頭癌の診断における細胞診の役割は大きいです。