海外から帰国後、発熱を主訴として外来を受診した患者の末梢血Giemsa染色薄層塗抹標本(別冊No. 1)を別に示す。診断として正しいのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第63回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
提供された画像で示されている末梢血ギムザ染色薄層塗抹標本には、赤血球内で帯状に広がる特徴的な栄養体が見られます。この「帯状栄養体(バンド型栄養体)」は、四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae)の鑑別診断上、非常に重要な所見です。また、感染赤血球はほぼ正常な大きさであることが多いです。これらの特徴から、診断は四日熱マラリアが最も適切です。
選択肢ごとの解説
- 1. 住血吸虫症は寄生虫疾患ですが、末梢血塗抹標本で診断されることは稀です。通常、便や尿中の虫卵、または組織生検で診断されます。正しくは:住血吸虫症の診断は、便や尿中の虫卵検査、または組織生検によって行われます。選びやすい理由:海外からの帰国者で寄生虫感染症という点で選択肢に入るかもしれませんが、検査法が異なります。混同注意:他の海外渡航歴のある患者に多い寄生虫症全般と混同しやすいです。
- 2. フィラリア症も寄生虫疾患ですが、末梢血塗抹標本で検出されるのはミクロフィラリアです。ミクロフィラリアは一般的に細長く、写真のリング状、アメーバ状の形態とは異なります。正しくは:フィラリア症の診断には、末梢血中のミクロフィラリア検出が行われますが、その形態は写真の所見とは異なります。選びやすい理由:夜間採血でミクロフィラリアが検出されることがあるため、血液検査で診断される寄生虫症として選択肢になりやすいです。混同注意:血液中に寄生虫が検出される病気という点でマラリアと混同しやすいです。
- 3. 熱帯熱マラリアでは、赤血球内にリング体、アメーバ状の栄養体、分裂体などが認められますが、画像のような「帯状栄養体」や「クネイクネと曲がる不規則な形をした栄養体」が特徴的ではありません。また、感染赤血球の大きさが正常なことも画像の特徴です。さらに、熱帯熱マラリアでは多重寄生が見られることが多いですが、この画像では単一の寄生が示唆されます。正しくは:熱帯熱マラリアではリング体や分裂体が多く、感染赤血球に大小不同や多重寄生が見られることが多いです。また、感染赤血球が正常赤血球より小さくなる傾向があります。選びやすい理由:マラリアは発熱を伴う海外からの帰国者に多く、最も重症化しやすい型として知られているため、一般的な知識から選ばれやすいです。混同注意:他のタイプのマラリアと混同しやすいですが、特に熱帯熱マラリアはリング体が最も多く見られ、それ以外のステージは末梢血に出にくいという特徴があります。
- 4. 正解。下に示す画像は、感染赤血球が正常赤血球とほぼ同じ大きさであり、その中に「帯状栄養体」(バンド型栄養体)と呼ばれる、赤血球内を横断するように伸びる独特な形態の寄生虫が認められます。これは四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae)の非常に特徴的な所見です。また、一部にコンパクトな分裂体も見られることがあります。正しくは:この選択肢は正しいです。
- 5. トリパノソーマ症では、末梢血塗抹標本でトリパノソーマ原虫が直接検出されることがありますが、その形態は紡錘形で鞭毛を持ち、赤血球内に寄生するマラリア原虫とは全く異なります。正しくは:トリパノソーマ原虫は、赤血球外の血漿中に見られる自由生活性の原虫であり、マラリア原虫とは形態が大きく異なります。選びやすい理由:アフリカ睡眠病など、海外渡航歴のある患者に多い寄生虫症であり、血液検査で診断されるという点で選択肢になりやすいです。混同注意:マラリア原虫とトリパノソーマ原虫の形態的な違いや、寄生部位(赤血球内か血漿中か)を混同しやすいです。
国試ポイント
本問題は、マラリア原虫の種類ごとの末梢血塗抹標本の形態学的特徴を正確に識別できるかを問うものです。特に、四日熱マラリア原虫に特徴的な「帯状栄養体」を知っているかが重要となります。海外渡航歴と発熱という典型的な病歴から、寄生虫感染症、特にマラリアを想起し、その鑑別診断に必要な知識が問われています。
混同注意
マラリア原虫の各種類(熱帯熱、三日熱、四日熱、卵形)の形態的特徴、特にリング体、栄養体、分裂体、配偶体、および感染赤血球の変化(腫大、萎縮、正常、Schüffner斑、Maurer斑など)が混同されやすいです。特に熱帯熱マラリアのリング体と他のマラリアの栄養体を混同しないよう注意が必要です。
次に同じ論点が出たら
同様の論点で出題された場合、他の種類のマラリア原虫(熱帯熱、三日熱、卵形)の代表的な形態学的所見(例: 熱帯熱マラリアの多重寄生リング体、三日熱マラリアの感染赤血球腫大とアメーバ状栄養体、卵形マラリアの感染赤血球の卵円形化とSchüffner斑)を示す画像から診断を問われる可能性があります。
関連知識
マラリアはハマダラカによって媒介される原虫感染症で、発熱、悪寒、頭痛などを主症状とします。世界中で毎年多くの感染者と死者を出しており、海外渡航歴のある発熱患者では常に鑑別疾患として考慮されるべきです。診断はギムザ染色による末梢血塗抹標本の鏡検が標準で、厚層塗抹標本で寄生虫の有無と密度を確認し、薄層塗抹標本で原虫の種類を同定します。治療は原虫の種類や薬剤耐性によって異なります。