赤血球沈降速度を遅延させるのはどれか。2つ選べ。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第64回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1・5番
解説
赤血球沈降速度(ESR)は、赤血球が血漿中を沈降する速さを測定する検査です。ESRは主に、赤血球の連銭形成(rouleaux formation)の程度と、赤血球の数に影響されます。連銭形成は、赤血球表面の負電荷を中和し、赤血球同士が凝集しやすくなることで起こり、沈降速度を促進します。フィブリノゲンやグロブリンなどの急性期反応物質は連銭形成を強く促進します。アルブミンは連銭形成を抑制する作用があります。赤血球数が増加すると、赤血球間の物理的干渉が増え、沈降が遅延します。 選択肢1の赤血球増加症では、赤血球が多すぎるため沈降が妨げられ、ESRは遅延します。 選択肢5の低フィブリノゲン血症では、連銭形成の主要な促進因子であるフィブリノゲンが減少するため、連銭形成が抑制され、ESRは遅延します。 一方、選択肢2の寒冷凝集素症では、赤血球が不規則に凝集して大きな塊となるため、沈降速度は著しく促進されます。 選択肢3の高グロブリン血症および選択肢4の低アルブミン血症は、いずれも赤血球の連銭形成を促進し、ESRを促進する要因となります。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。赤血球数が増加すると、血漿中の赤血球間の距離が縮まり、沈降する際に互いに干渉し合いにくくなるため、沈降速度が遅延します。
- 2. 寒冷凝集素症では赤血球が凝集するため、沈降単位が大きくなり、ESRは促進されます。正しくは:寒冷凝集素症はESRを促進します。選びやすい理由:「凝集」という言葉から、沈降が阻害されると誤解する可能性がありますが、実際は凝集塊が重くなり沈降が早まります。混同注意:赤血球の変形や形態異常(例: 鎌状赤血球)が沈降を遅らせる場合と混同しやすいですが、凝集は別です。
- 3. 高グロブリン血症では、グロブリンが赤血球表面の負電荷を中和し、連銭形成(rouleaux formation)を促進するため、ESRは促進されます。正しくは:高グロブリン血症はESRを促進します。選びやすい理由:血漿タンパク質濃度が高いとESRが促進されるという基本的な知識から、誤って選択してしまう可能性があります。混同注意:アルブミンとグロブリンのESRへの影響の違いと混同しやすいです。グロブリンはESR促進作用が強いです。
- 4. 低アルブミン血症では、血漿中のアルブミンが減少し、相対的にグロブリンやフィブリノゲンなどのESR促進因子が優位になるため、ESRは促進されます。正しくは:低アルブミン血症はESRを促進します。選びやすい理由:血漿タンパク質が減少するとESRが遅延すると誤解する可能性がありますが、アルブミンの減少は他の促進因子の相対的増加を意味します。混同注意:総タンパク質減少と混同しやすいですが、ESRはタンパク質の「種類と比率」に大きく影響されます。
- 5. 正解。フィブリノゲンは赤血球の連銭形成を強力に促進するタンパク質であり、その濃度が低下すると連銭形成が抑制されるため、ESRは遅延します。
国試ポイント
ESRの測定原理と、ESRに影響を与える主要な血漿タンパク質(フィブリノゲン、グロブリン、アルブミン)の役割、および赤血球数の増減による影響を理解しているかを問う問題です。ESRの促進・遅延要因を正確に区別できる知識が求められます。
混同注意
ESRの促進因子と遅延因子、特に血漿タンパク質の種類(アルブミン vs グロブリン・フィブリノゲン)による影響の違いが混同されやすいです。また、赤血球の形態異常(例: 鎌状赤血球や球状赤血球)がESRを遅らせる場合と、赤血球凝集(例: 寒冷凝集素症)がESRを促進する場合との区別も重要です。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出題された場合、ESRの促進因子と遅延因子をそれぞれリストアップし、それぞれの要因がどのようなメカニズムでESRに影響するか(連銭形成の促進/抑制、赤血球の物理的干渉など)を詳細に説明できるかを確認します。
関連知識
ESRは非特異的な炎症マーカーとして用いられます。ESRの基準値、測定方法(Westergren法、Wintrobe法)、連銭形成のメカニズム、他の炎症マーカー(CRPなど)との関連性についても理解しておくと良いでしょう。