遊離グリセロール濃度が5 mg/dLの血清を試料として、グリセロール非消去法でトリグリセライドを測定したところ200 mg/dLであった。 この血清をグリセロール消去法で測定した場合のトリグリセライド値[mg/dL]に最も近いのはどれか。 ただし、オレイン酸とグリセロールの分子量をそれぞれ282、92とする。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第64回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
グリセロール非消去法では、遊離グリセロールもトリグリセライド(トリオレイン換算)として測定されます。トリオレインの分子量は、グリセロール92にオレイン酸3分子(282×3 = 846)を加え、エステル結合で失われる水3分子(18×3 = 54)を引いた884です。遊離グリセロール5 mg/dLは5 × 884 / 92 ≒ 48 mg/dLのトリグリセライドに相当するため、消去法での値は200 − 48 ≒ 152 mg/dLで、選択肢のうち最も近いのは149 mg/dLです(公式正答1)。脱水を考慮せず938(92 + 846)で換算しても5 × 938 / 92 ≒ 51 mg/dL、200 − 51 = 149 mg/dLとなり、同じ選択肢になります。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。遊離グリセロール5 mg/dLをトリグリセライドに換算すると約48〜51 mg/dLになり、200 mg/dLから差し引くと約149〜152 mg/dLです。選択肢の中で最も近いのは149 mg/dLです。選びやすい理由:グリセロール非消去法で測定した値が与えられており、これから遊離グリセロール由来の過剰分を差し引くという方向性は正しいが、換算係数の計算や、問題文に示されていない遊離グリセロール濃度を「5mg/dL」と推測する点で見落としが生じる可能性がある。特に、もし遊離グリセロール濃度を「2.3mg/dL」と解釈した場合、計算結果は176.55 mg/dLとなり、149 mg/dLとは大きく異なるため、混乱しやすい。混同注意:グリセロール分子量とTG分子量の換算を誤ったり、遊離グリセロール濃度を何と仮定するかで結果が大きく変わるため、混乱しやすい。
- 2. 遊離グリセロールの換算量を差し引きすぎ・差し引き不足のどちらとも合わない値で、5 mg/dLの遊離グリセロールをトリグリセライドに換算した約50 mg/dLを差し引いた値(約149〜152 mg/dL)とは異なります。正しくは:正しい計算では、グリセロール5 mg/dLがTGとして約51 mg/dL検出されるため、200 mg/dLから51 mg/dLを引くと149 mg/dLになります。選びやすい理由:近い数値であるため、計算ミスや、遊離グリセロール濃度の読み取りミスによって選んでしまう可能性がある。混同注意:換算係数の誤りや、遊離グリセロール濃度を間違った値(例:問題文の「〇mg/dL」部分を別の数値と仮定)で計算した場合に混同しやすい。
- 3. 遊離グリセロールの影響を約15 mg/dLと過小評価した場合の値です。5 mg/dLの遊離グリセロールはトリグリセライドとして約50 mg/dLに相当します。正しくは:正しい計算では、グリセロール5 mg/dLがTGとして約51 mg/dL検出されるため、200 mg/dLから51 mg/dLを引くと149 mg/dLになります。選びやすい理由:選択肢の数値が近いため、計算ミスや、過剰検出分の見積もり違いにより選んでしまう可能性がある。混同注意:遊離グリセロールによる過剰検出分を大幅に過小評価した場合に混同しやすい。
- 4. 遊離グリセロール5 mg/dLを換算せずにそのまま差し引いた値(200 − 5)です。トリグリセライドへの換算(約10倍)が必要です。正しくは:正しい計算では、グリセロール5 mg/dLがTGとして約51 mg/dL検出されるため、200 mg/dLから51 mg/dLを引くと149 mg/dLになります。選びやすい理由:200 mg/dLに比較的近いため、遊離グリセロールの影響を軽微と判断した場合に誤って選ぶ可能性がある。混同注意:遊離グリセロールの影響がほとんどないと誤解した場合に混同しやすい。
- 5. 遊離グリセロールの影響をほとんど考慮していない値です。5 mg/dLの遊離グリセロールはトリグリセライドとして約50 mg/dLに相当します。正しくは:正しい計算では、グリセロール5 mg/dLがTGとして約51 mg/dL検出されるため、200 mg/dLから51 mg/dLを引くと149 mg/dLになります。選びやすい理由:200 mg/dLに最も近いため、遊離グリセロールの補正が非常に小さいと誤解した場合に選びやすい。混同注意:遊離グリセロールによる過剰検出分をほぼ無視して良いと誤認した場合に混同しやすい。
国試ポイント
グリセロール非消去法によるトリグリセライド測定において、遊離グリセロールが測定値に与える影響を理解し、その補正計算ができるかが問われます。特に、遊離グリセロールをトリグリセライドに換算する際の分子量比の計算が重要です。問題文の数値の読み取り(特に示されていない数値を推測する)もポイントになります。
混同注意
遊離グリセロールとトリグリセライドの分子量換算係数の計算を誤ること。また、遊離グリセロール濃度が問題文で明示されていない場合に、どの値で計算すべきか迷うこと。グリセロール消去法が何を目的としているかを正確に理解していない場合にも誤った選択をしてしまいます。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出題された場合、まず遊離グリセロールがTGとして検出される場合の分子量比による換算係数を正確に求める。次に、問題文で与えられた遊離グリセロール濃度(または、与えられていない場合は選択肢から逆算して妥当な数値を推測)を用いて、過剰検出分を計算し、非消去法の結果から差し引くことを確認します。
関連知識
グリセロール非消去法とグリセロール消去法の原理と違い、それぞれの測定法の利点・欠点。トリグリセライドの生化学的構造と代謝。脂質検査における各種検査項目の意義。