78歳の男性。心不全患者の左室流入血流速波形と計測値(別冊No. 5)を別に示す。 この波形の記録に用いたのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第69回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
提示された「波形の記録」という表現は、特定の部位における血流速度の時間的変化を詳細に追うことを意味します。パルスドプラ法は、測定したい深さにサンプリングボリュームを設定し、その限られた領域からの反射波を用いて血流速度の波形(スペクトラム波形)を記録できるため、この目的に最も適しています。これにより、拡張期や収縮期の血流速度のピークや、逆流の有無などを詳細に評価することが可能になります。
選択肢ごとの解説
- 1. 組織ドプラ法は、心筋などの組織自体の動き(速度)を検出する目的で使用されます。血流速度の記録には適していません。正しくは:心筋など組織の動きを評価する際に用います。選びやすい理由:ドプラ法の一種であるため、混同しやすいかもしれません。混同注意:組織の動きと血流の動きを混同する可能性があります。
- 2. カラードプラ法は、血流の方向と速度をリアルタイムで画像上に色付けして表示しますが、連続した精密な速度波形を記録するものではありません。特定の関心領域(ROI)を設定して、その領域内の平均的な血流情報を色で可視化します。正しくは:血流の方向と速度をカラー表示で視覚化する際に用います。選びやすい理由:血流を可視化するドプラ法であるため、血流測定全般に使われると誤解しやすいかもしれません。混同注意:視覚的な血流表示と定量的血流速度波形記録を混同する可能性があります。
- 3. 正解。パルスドプラ法は、超音波を短時間発信し、特定の深さ(サンプリングボリューム)からの反射波を受信することで、その位置における血流速度の連続的な波形を記録できます。これにより、個々の心拍における血流速度の変化を詳細に分析することが可能です。選びやすい理由:他のドプラ法も血流に関連するため、それぞれの特徴を正確に理解していないと選択を迷う可能性があります。混同注意:連続波ドプラ法との区別が重要です。
- 4. パワードプラ法は、血流の有無や量(パワー)を感度高く検出するのに優れており、微細な血流の検出に適していますが、血流の方向や速度情報(波形)を得ることはできません。正しくは:血流の有無や血流量の検出、特に微細な血流の評価に用います。選びやすい理由:血流の評価に用いられるため、選択肢として魅力的かもしれません。混同注意:血流の検出能力と血流速度波形の記録能力を混同する可能性があります。
- 5. 連続波ドプラ法は、連続的に超音波を発信・受信することで非常に速い血流速度を正確に測定できますが、送受信が連続しているため、特定の深さ(位置)を区別して血流波形を記録することはできません。このため、サンプリングボリューム(測定したい領域)を限定して血流波形を得るのには適していません。正しくは:特定の深さを指定せず、最も速い血流速度を高い精度で測定する際に用います。選びやすい理由:血流速度波形を記録するドプラ法であるため、パルスドプラ法と混同しやすいです。混同注意:パルスドプラ法と連続波ドプラ法の、サンプリングボリュームの選択性(深さ分解能)の違いを混同しやすいです。
国試ポイント
この問題は、各ドプラ法の基本的な原理と、それぞれの用途(何が測定でき、何ができないか)を正確に理解しているかを問うものです。特にパルスドプラ法と連続波ドプラ法の違い、およびカラードプラ法やパワードプラ法との区別が重要となります。
混同注意
パルスドプラ法と連続波ドプラ法は、どちらも血流速度の波形を記録する点で似ていますが、パルスドプラ法は「特定の深さの選択性(距離分解能)」があるのに対し、連続波ドプラ法はそれがありません。また、カラードプラ法やパワードプラ法は、血流の有無や方向を視覚的に捉えるもので、詳細な速度波形記録とは目的が異なります。
次に同じ論点が出たら
同様の論点が出題された場合、まず「どのような情報を得たいのか(例:特定の部位の速度波形、広い範囲の血流の有無、最高流速など)」に着目し、それぞれのドプラ法の原理と測定特性を照らし合わせることで正答にたどり着くことができます。特に「波形の記録」や「特定の深さ」といったキーワードに注意が必要です。
関連知識
超音波診断装置のドプラ機能には、主にカラードプラ法、パワードプラ法、パルスドプラ法、連続波ドプラ法、組織ドプラ法などがあります。それぞれの方法が持つ原理的特徴(発信・受信方法、周波数シフトの利用)と、それによって得られる情報(血流の有無、方向、速度、組織の動きなど)を理解することが重要です。特に、パルスドプラ法は距離分解能があり、特定の部位の速度波形を記録できる一方で、高い流速ではエイリアシング(折り返し現象)を起こしやすいという特徴があります。連続波ドプラ法は距離分解能はないものの、非常に高い流速でもエイリアシングを起こさずに測定が可能です。