78歳の男性。心不全患者の左室流入血流速波形と計測値(別冊No. 5)を別に示す。 この波形はどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第69回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
別冊No. 5の計測値は、E波高150 cm/sec、A波高34 cm/sec(E/A ≒ 4.4)、E波減速時間128 msecです。E/Aが2以上と著明に高く、減速時間が短縮していることから、左室充満圧が高度に上昇した拘束パターンと判断します(公式正答4)。
選択肢ごとの解説
- 1. 正常パターンでは、E波がA波よりも高くなります(E/A比 > 1)。また、E波の減速時間(DT)は短すぎず、長すぎず適度な範囲にあります。正しくは:正常パターンはE波がA波より優位で、E波の減速時間も正常範囲です。選びやすい理由:もしE波とA波の区別がつきにくい場合、または波形の特徴を正確に理解していない場合、誤って正常と判断する可能性があります。混同注意:正常パターンと拘束性パターンは全く異なる波形を示します。特にE/A比とE波DTが大きく異なります。
- 2. 弛緩障害パターン(軽度から中等度の拡張障害)では、E波がA波より低くなり(E/A比 < 1)、E波の減速時間(DT)が延長します。提示された波形とは異なります。正しくは:弛緩障害パターンはE波がA波より低く、E波の減速時間が延長します。選びやすい理由:拡張障害の最も一般的な初期段階であるため、安易に選択してしまう可能性があります。しかし、波形を詳細に見るとE/A比とDTが弛緩障害の典型と一致しません。混同注意:拘束性パターンと弛緩障害パターンは拡張障害の重症度によって異なり、特にE/A比とE波DTで区別されます。
- 3. 偽正常化パターンは、中等度の弛緩障害に左室充満圧の上昇が加わり、結果的にE/A比が正常範囲に見える状態です。しかし、E波の減速時間(DT)の短縮や肺静脈血流波形の異常など、他の指標で拡張障害が示唆されます。提示された波形はE/A比が非常に大きく、DTが著しく短縮しているため異なります。正しくは:偽正常化パターンはE/A比が正常範囲に見えるものの、E波DTの短縮や肺静脈血流波形の異常を伴います。選びやすい理由:E/A比が1に近い波形の場合、誤って偽正常化と判断する可能性があります。しかし、この問題の波形はE/A比が極めて高いため、当てはまりません。混同注意:正常パターンや弛緩障害パターンと混同しやすいですが、肺静脈血流波形や心室壁運動解析などの他の指標と組み合わせて判断する必要があります。
- 4. 正解。拘束パターン(重度拡張障害)では、左室の拡張能が著しく障害されているため、左房圧が非常に高くなり、急速な左室充満が起こります。そのため、早期拡張期充満を示すE波が著しく高くなり、A波は非常に低くなるか消失し、E/A比は2.0以上と著しく増大します。また、左室のコンプライアンス低下により、E波の減速時間(DT)は150ms未満と著しく短縮します。提示された波形は、高いE波と低いA波、そして短いE波DTを示しており、これらの特徴と完全に一致します。選びやすい理由:他の拡張障害のパターンと混同しやすいため、E/A比とE波DTの両方の特徴を正確に把握していないと誤答する可能性があります。混同注意:弛緩障害パターンや偽正常化パターンとの違いをE/A比とE波DTで明確に区別することが重要です。
- 5. 提示された波形は、特徴的なE波とA波を示しており、拡張障害のパターンとして明確に識別可能です。正しくは:波形は特徴を示しており、判定可能です。選びやすい理由:自信がない場合に安易に選択してしまう可能性がありますが、この波形は典型的なパターンです。混同注意:他のパターンと見分けがつかない場合など、知識が曖昧な場合に選択しがちです。
国試ポイント
この問題は、心エコー検査における左室流入血流速波形を正確に解釈し、拡張障害の各病態パターン(特に拘束パターン)を識別する能力を問うものです。E/A比とE波減速時間(DT)という主要な指標を用いて、拡張障害の重症度を判断できるかが鍵となります。
混同注意
拡張障害の各パターン(正常、弛緩障害、偽正常化、拘束)は、E/A比、E波の減速時間(DT)、さらには肺静脈血流波形など、複数の指標を組み合わせて識別する必要があります。特に、偽正常化パターンはE/A比が正常範囲に見えるため、他の指標との総合的な判断が求められます。
次に同じ論点が出たら
同様の論点が出題された場合、まずE波とA波の相対的な高さを確認し、E/A比がどの範囲にあるかを判断します。次に、E波の減速時間(DT)の長短を確認します。これらの情報から、拡張障害の4つの主要パターン(正常、弛緩障害、偽正常化、拘束)のいずれに該当するかを判断します。必要に応じて、肺静脈血流波形や組織ドプラ法などの他の情報も考慮して総合的に判断する能力が求められます。
関連知識
左室流入血流速波形による拡張能評価では、以下のポイントが重要です。1. E波とA波: E波は左室が能動的に弛緩する早期拡張期の血流、A波は心房収縮による後期拡張期の血流を反映する。2. E/A比: 正常は1.0〜2.0程度。弛緩障害では1.0未満、拘束パターンでは2.0以上となる。偽正常化は1.0〜2.0だが、他の異常所見を伴う。3. E波減速時間(DT): E波のピークから基線に戻るまでの時間。左室コンプライアンスを反映し、正常は150〜240ms程度。弛緩障害では延長、拘束パターンでは150ms未満に短縮する。4. 肺静脈血流波形: 拡張障害の重症度評価の補助指標として用いられる。特に偽正常化パターンや拘束パターンで診断に有用。