46歳の男性。主訴は腹部不快感。現病歴として、外国旅行中に加熱不十分の牛ステーキを食べ、帰国して3か月後、肛門周囲から条虫の肉厚の片節が1個ずつ分離して排出され、糞便中で動いていた。虫体の写真(別冊No. 1)を別に示す。診断として考えられるのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第65回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
加熱不十分の牛肉の摂取歴があり、肉厚の片節が1個ずつ分離して肛門周囲から排出され、糞便中で動いていたという経過は、牛肉を介して感染する無鉤条虫症に典型的です(公式正答3)。無鉤条虫の片節は運動性が強く、自ら肛門から這い出ることがあります。
選択肢ごとの解説
- 1. 多包条虫症はエキノコックス症の一種であり、キツネや犬などの糞便に含まれる虫卵を介して感染する。肝臓などに多包性の嚢胞を形成し、本症例の片節排出とは症状が異なるため誤り。正しくは:多包条虫症は、主に肝臓に多包性の嚢胞を形成し、虫体片節を排出することは通常ない。選びやすい理由:条虫症の一種であるため、混同しやすいかもしれないが、感染経路と症状が全く異なる。混同注意:他の条虫症、特に嚢虫症
- 2. 単包条虫症もエキノコックス症の一種であり、羊や犬などの糞便に含まれる虫卵を介して感染する。肝臓などに単包性の嚢胞を形成し、本症例の片節排出とは症状が異なるため誤り。正しくは:単包条虫症は、主に肝臓に単包性の嚢胞を形成し、虫体片節を排出することは通常ない。選びやすい理由:多包条虫症と同様に、条虫症の一種であるため混同しやすい可能性がある。混同注意:他の条虫症、特に嚢虫症
- 3. 正解。無鉤条虫は牛肉中の嚢虫を加熱不十分なまま食べることで感染します。肉厚で運動性のある片節が1個ずつ分離して排出されるのが特徴で、本症例の食歴・経過と一致します。
- 4. 有鉤条虫症の感染源は加熱不十分な豚肉であり、本症例の牛ステーキとは異なる。また、有鉤条虫の頭節には鉤が認められるが、無鉤条虫には鉤がない。片節の形態も、有鉤条虫は無鉤条虫よりも子宮分枝が少なく(通常7-13本)、より樹枝状に分岐する特徴がある。画像所見からは無鉤条虫に特徴的な形態が確認されるため誤り。正しくは:有鉤条虫の感染源は加熱不十分な豚肉であり、片節の子宮分枝は無鉤条虫よりも少ない。選びやすい理由:加熱不十分な肉の摂取による条虫症という点で共通するため、混同しやすい。混同注意:無鉤条虫症
- 5. 日本海裂頭条虫症は、サケやマスなどの淡水魚を介して感染する。片節の排出はみられるが、本症例の食歴(牛ステーキ)とは一致しない。また、日本海裂頭条虫の片節は子宮が中央にロゼット状に配列する特徴があり、画像所見とは異なるため誤り。正しくは:日本海裂頭条虫症は淡水魚からの感染であり、片節の子宮はロゼット状に配列する。選びやすい理由:片節が肛門周囲から排出され、糞便中で動いていたという点で、患者の症状と一致する部分があるため。混同注意:無鉤条虫症や有鉤条虫症などの消化管内寄生性条虫症
国試ポイント
条虫症の感染経路、症状、および虫体形態の特徴を鑑別できるようになること。特に、有鉤条虫と無鉤条虫の形態的違いと感染源を正確に理解すること。
混同注意
有鉤条虫と無鉤条虫は感染経路(豚肉か牛肉か)と頭節の鉤の有無、そして子宮分枝の形態で鑑別する。日本海裂頭条虫は魚介類からの感染であり、片節が肉厚で運動性がある点では似ているが、片節内部の子宮形態が異なり、卵は糞便中に排出される。
次に同じ論点が出たら
次回の問題では、食歴(特に肉の種類)、虫体の形態(頭節の鉤の有無、片節の子宮分枝の形態)、排出様式(単独排出か連なって排出されるか)に注目して判断する。
関連知識
条虫症の診断は、糞便中の虫卵または片節の確認による。片節診断の場合、圧平標本を作成し、子宮分枝の形態を観察することが重要。治療にはプラジカンテルが用いられる。