採血時のパンピング(何度も手を握ったり開いたりを繰り返す動作)で偽高値になるのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第72回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
採血時のパンピング動作は、筋肉の収縮を繰り返し引き起こします。これにより、筋肉細胞からのカリウム放出が促進されることに加え、採血による血管のうっ滞状態が加わることで、赤血球の脆弱性が増し、溶血が起こりやすくなります。赤血球内には高濃度のカリウムが含まれているため、溶血によってカリウムが血清中に放出され、測定されるカリウム値が実際よりも高くなる(偽高値)現象が生じます。このため、正確なカリウム値を測定するためには、パンピングを避け、軽く握る程度に留めることが重要です。
選択肢ごとの解説
- 1. パンピングによってリンの濃度が偽高値になることは一般的ではありません。リンは細胞内にも多く存在しますが、パンピングによる細胞破壊がカリウムほど顕著に影響することはありません。正しくは:パンピングによる影響は小さい。選びやすい理由:細胞内物質であるため、誤って選ぶ可能性もある。混同注意:リンとカリウムは両方とも細胞内に多く存在するが、パンピングによる溶血で顕著に血清濃度が上昇するのはカリウムである。
- 2. 正解。採血時のパンピングは、前腕の筋肉を繰り返し収縮させることで、筋肉細胞からのカリウムの逸脱や溶血による赤血球からのカリウム放出を促進し、血清カリウム値を偽高値にすることが知られています。正しくは:パンピングによりカリウム値は偽高値となる。選びやすい理由:カリウム値の上昇は重要なため、この知識は必須である。混同注意:カリウムは細胞内に高濃度に存在する電解質であり、細胞が物理的ストレスを受けると細胞外へ漏出しやすい。
- 3. クロール(塩化物イオン)は主に細胞外液に存在する電解質であり、パンピングによってその血清濃度が偽高値になることはありません。むしろ血液の濃縮により相対的に変動することはあるかもしれませんが、偽高値の直接的な原因ではありません。正しくは:パンピングによるクロール値への影響はほとんどない。選びやすい理由:電解質であるため、他の電解質との混同で誤って選ぶ可能性。混同注意:クロールは細胞外液の主要な陰イオンであり、細胞内液の主要な陽イオンであるカリウムとは挙動が異なる。
- 4. カルシウムは血清中にイオン化カルシウム、タンパク結合型カルシウムとして存在しますが、パンピングによって偽高値となることはありません。むしろ、血液の濃縮によってタンパク結合型カルシウムがわずかに上昇することがあるかもしれませんが、これは偽高値とは異なります。正しくは:パンピングによるカルシウム値への影響はほとんどない。選びやすい理由:電解質であり、他の電解質と混同する可能性。混同注意:カルシウムは細胞機能に重要だが、パンピングによって測定値が偽高値になる主要な要因ではない。
- 5. ナトリウムは主に細胞外液に存在する電解質であり、パンピングによってその血清濃度が偽高値になることはありません。血液の濃縮により相対的に変動することは考えられますが、直接的な偽高値の原因ではありません。正しくは:パンピングによるナトリウム値への影響はほとんどない。選びやすい理由:主要な電解質であるため、他の電解質と同様に影響を受けると誤解する可能性。混同注意:ナトリウムはカリウムとは異なり、細胞外液の主要な陽イオンであるため、パンピングによる影響を受けにくい。
国試ポイント
採血時の前処理が検査結果に与える影響、特に溶血や筋肉収縮による電解質の変動について理解しているかが問われています。カリウムの偽高値は臨床現場で頻繁に問題となるため、その原因を正確に把握しておく必要があります。
混同注意
細胞内に多く存在する物質(リン、マグネシウム、酵素など)は溶血によって上昇する可能性がありますが、パンピングによる筋肉収縮と溶血の両面から最も顕著に影響を受けるのがカリウムです。
次に同じ論点が出たら
もし採血時のカリウム値が高値だった場合、検体の溶血の有無を肉眼で確認する、あるいは血漿ヘモグロビン値を測定して溶血の程度を評価し、再採血の必要性を判断する。
関連知識
溶血によって偽高値になる他の項目(AST, ALT, LDH, ALP, リン酸など)や、血液濃縮によって偽高値になる項目(タンパク、ヘマトクリット、カルシウムなど)についても合わせて理解しておくと良いでしょう。また、採血順序や駆血帯の圧迫時間、採血管の種類が検査値に与える影響も重要です。